- 田村照子先生
- 医学博士。文化学園大学教授。大学院 生活環境学研究科 科長。文化・衣類環境学研究所 所長。著書に『衣環境の科学』(建帛社)、共著に『アジアの風土と服飾文化』(放送大学教育振興会)、『着ごこちの追究』(放送大学教育振興会)などがある。四人の孫のおばあちゃん。
生まれたての新生児から子どもまで、
子どもが身につける衣類選びはお母さんにとって気になるところ。
そこで、文化学園大学服装学部の田村照子教授に、
いい衣類の選び方やお手入れ方法などについてうかがってみました。
子どもの衣類を選ぶポイント
「着心地」「肌ざわり」「カタチ」
─ 子どもに着せたい衣類について教えてください。
田村照子先生(以下田村先生)
大きく分けて三つの条件を満たす衣類をおすすめします。一つ目は着心地がいいこと、二つ目は肌ざわりがいいこと、三つ目は安心、安全なカタチであることです。
着心地とは言葉の通り、身につけていて心地よい状態ということ。衣服が接触する皮膚は絶えず新陳代謝を繰り返しています。特に子どもは大人以上に新陳代謝が活発なので汗っかき。肌に直接ふれる肌着には、吸水性や吸湿性に優れ、汗や垢を吸収しやすい素材を選び、いつも清潔に保つことが大切。加えて子どもの活発な動きに合わせて伸び縮みすること、通気性がよく保温効果が高いことも最低条件です。以上のことを考えると子どもの肌着素材としては綿が最適だといえますね。
二つ目に挙げている肌ざわりは着心地にも関係します。文字通りふれた時の心地よさ。これは触って気持ちいいという心理的な感覚だけでなく、やわらかい素材にふれると、かたいものにふれている時よりも副交感神経(リラックスしている状態で活動)が交感神経(活動している、緊張している状態で活動)よりも優位になるということが証明されているんですよ。つまり、やわらかいものにふれると、生理的にも安らぐといってもいいかもしれませんね。
三つ目のカタチは、衣類全般に関係します。特に厚着をするこれからの季節には注意してほしいことです。
先にお話したように、子どもは新陳代謝が活発で、汗腺(汗を出す腺)の数が多いので大人より衣服の中が湿りやすくなっています。また冬でも活発に動き回る子どもは汗をかきやすく、かいた汗をそのままにしておくと、体が冷えて風邪を引きやすくなってしまいます。吸水性のいい肌着を着せるとともに、かいた汗はこまめに拭き取ってあげましょう。また簡単に脱着できるカタチの上着やマフラー、手袋や靴下を身に着けさせ、これらの調節によって、汗をかきすぎないように注意しましょう。
子どもも大人も、胸や胴体などの体幹部分は十分な体温調節ができないので、ここは冷やさないように温かく保ってあげる必要があります。冬場の外出には、体幹を守るベストを着けさせて、その上に風を通しにくいジャケットを羽織らせてあげるとよいでしょう。
秋から冬に向かう時期は、寒さの刺激によって体の基礎代謝力がアップする季節なんです。むやみに厚着をさせないで、少し薄着程度で、保温と放熱をうまくコントロールしてあげてください。
子どもは敏感
周囲の大人が気をつけたいポイント
─ 赤ちゃんや子どもとふれ合う時に、大人達が気を配るポイントってありますか?
田村先生
私には孫が四人いますが、孫達は「ばあばのだっこは気持ちいい!」といってくれます。孫達と接する時に私が気をつけているのは、綿やカシミヤなど、肌ざわりのいい衣類を着用すること、ボタンや派手な装飾のないデザインを選んでいること、アクセサリーはつけないこと、アクセサリーをつける時は丸いものとかすべすべしているものとか、子どもが握っても安全で、遊び心をくすぐるものであることなどです。孫はよくお肌をスリスリこすりつけてきますよ。子どもはお母さんにだっこされるのが大好きです。お母さんにはご自身の衣類にも気を配っていただきたいものですね。街中できれいに着飾ったお母さんが赤ちゃんを連れている姿を見かけることがありますが、せめてアクセサリーなどは移動先で身に着けたらいいのにな、と思うことがありますよ。
今すぐ始めたい冬の衣類のお手入れ
─ 冬の季節、衣類について注意することはありますか?
田村先生
もうすっかり寒くなりましたから、各家庭の衣替えは終わっているかと思いますが、案外知られていないのが厚手のコートやセーター、パンツなどを着用する前のケアです。実は夏の間保存していた衣類ではダニが増殖していることが報告されています。もちろん寒くなってくればダニ自体は死んでいますから直接的な害はありませんが、アレルギーの原因(アレルゲン)にもなリますから赤ちゃんにとってもよいわけはありません。気になる方は着用前に洗たくすると効果的です。洗たくする時には、表向で洗たくした後、裏返してゆすぐと有効です。厚手のコートの場合は掃除機を当てて吸引するのも手ですよ。
また、お風呂あがりに使うタオルにも気を配ってあげたいものです。タオルは洗たくを繰り返すうちに繊維同士がくっついて、ごわごわと硬く毛羽立ってしまいます。柔軟剤を使うなどしてやわらかく仕上げたタオルで、薄くてやわらかく摩擦に弱い赤ちゃんの肌を優しく包んであげましょう。