- 水谷仁先生
- 三重大学医学部付属病院 皮膚科教授
赤ちゃんのデリケートなお肌は少しの刺激にも敏感。
そこで、いつもふれるママのお肌や身につける衣類のやわらかさには
常に気を遣っていたいものです。では、いつもやわらかく保つには?
乾燥肌の予防策のポイント、衣類や寝具のケアなどについて皮膚のスペシャリストである三重大学の水谷仁教授に教えていただきました。
─ 冬になると乾燥肌になってしまうのはどうしてですか?
水谷 仁先生(以下、水谷先生)
「冬は夏に比べると温度も湿度も低く、人間も冬は夏よりも皮脂が減少し汗をかかなくなるので、皮膚の水分量を保ちにくくなるのです。冬の暖房器具による湿度の低下もまた、肌を乾燥させてしまう原因のひとつです」
─普通は皮膚の水分量は、どのように保たれているのですか?
水谷先生
「皮膚は、大きく3つの層『表皮』『真皮』『皮下組織』から成り立っていて、表皮層が肌として外から見える部分です。表皮の1番外側の角層は、タンパク質と脂質でできており、皮膚を外界から守るバリアを形成する、肌の健康に関わる重要な層です。さらに、その上を毛穴から分泌される皮脂がカバーし、肌をさまざまな刺激から守る役割を担っています。角層と皮脂とで、二重に防水し、肌の水分を保っているのです」
─ 赤ちゃんも肌の仕組みは同じですよね?
水谷先生
「構造は同じですが、赤ちゃんの肌の場合、大人より皮膚が薄く皮膚の細胞も小さく、角層も薄いので皮膚からの水分が失われやすいといわれています。
しかも赤ちゃんの肌は角層内水分量が多いのですが、3か月頃をピークに1歳までに大人のレベルに減少していき、皮脂も、生後1週後より減り始め、6ヶ月頃まで減少が続くとされており、冬は充分な保湿が必要です」
乾燥肌を予防するためには、肌だけでなく衣類にも気配りを。
大切なのはやわらかさ!
─ 乾燥肌にならないためにどうすればいいですか?
水谷先生
「入浴時における洗浄剤の過度の使用やこすり過ぎを避け、保湿クリームなどで適度な油分を与えてあげることが重要です。さらに、肌に直接当たる衣類のケアも乾燥肌予防につながります。カサカサ肌にザラザラの繊維が当たると、すれて刺激を与え、角層が傷ついてしまうことも心配です。角層が傷つくとと、かゆみや炎症を引き起こし、しっしんや皮膚炎の引き金にもなりかねません。肌にとって大切なのは、衣類の素材が天然か合成かよりも、やわらかさなのです。そのために最も効果的なものの1つが柔軟剤。柔軟剤を使うと、繊維の表面がなめらかになり、また、ふんわりとした肌ざわりに仕上がり繊維と肌との摩擦を減らすことにつながります。カサつきがちな冬は、衣類をやさしい肌ざわりのものにしてあげることも重要です」
─ 柔軟剤って赤ちゃんに使って大丈夫なんですか?
水谷先生
「子どもの肌に悪いと思われる人も多くいらっしゃいますが、子どもの肌にとって衣類からの刺激を減らしてあげることはとても大切です。特に子どもの顔に直接当たる枕カバーなどの寝具には、やわらかな素材をえらぶとともに、柔軟剤を使ってやわらかく仕上げてあげてください」
子どもだけでなく、
もちろんママの冬の乾燥肌対策にもおすすめです
─ 現代では、赤ちゃんのママになる年齢は10代から40代以上、とかなり幅広いと思いますが、女性の肌の水分量は年齢と関係あるのですか?
水谷先生
「関係があるといわれています。成人女性は男性に比べると、皮脂が少なく、水分量は年齢と共に下がってくるのです。特に40代を過ぎると、水分量も皮脂量も急に下降します。クリームなどの保湿ケアが重要ですが、保湿効果の高い入浴剤や、肌にふれる衣類のケアにも気を配ると、より効果的です。乾燥肌傾向の成人を対象にした花王さんとの研究では、柔軟剤を使用したやわらかい肌着を毎日交換し、4週間着続けた方たちと、洗いざらしの肌着を4週間着続けた方たちの肌の水分量を比較すると、柔軟剤でやわらかく仕上げた肌着を着続けた方が、肌の水分が失われにくいことがわかっています。スキンケアとともにやわらかな衣類で角質層を守り、健康的な肌を保ちましょう」
※アトピー性皮膚炎やアレルギーの方は、主治医に相談の上、柔軟剤をご使用ください。