- 巷野悟郎先生
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NPO法人「21・子育て応援の会」理事長、小児科医、(社)母子保健推進会議会長、日本保育園保険協議会顧問、(社)日本ベビーシッター協会名誉会長
子どもを理解しよう
赤ちゃんが産まれたばかりのお母さんからの相談に、どう育てたら良い子に育つのか、いわゆる「しつけ」「育児」を知りたいとの願いが多いものです。それは「子どもというもの」を知らない母親にとっては当然のことですが、そのようなことは、まだ先のことなのです。
0・1・2歳は未熟な時、親が危険から守ってあげて
0・1・2歳は、まだ、未熟で基本的な発達の時です。まずは危険から子どもを守ること、子どもを抱っこし、語りかけ、安心感の中で子どもが、のびのびと行動を広げることに手を貸してあげましょう。
3歳からは自我の目覚め。お友だちとも遊ばせて
3歳になると基本的な発達が揃って、自我が目覚めます。自分と他の人、友達との関係も分かり、
昨日・今日・明日の中で生活し、教えれば危険から身を守ることもできるようになります。人間としての目覚めの時で、時間と空間を大人と共有できるようになります。
赤ちゃんにとって、理想的な環境は胎児期にある
子どもを理解するためには、発育の出発点であった胎児期の環境を思い出してみてください。私達は誰でも母の胎内で生命として、羊水内で成長し、やがては母体外で呼吸を始めて乳を飲み、はいはい・ひとり立ちから二足歩行で行動範囲を広げ、言葉を覚えておむつも取れて自立します。
その間の胎児の時代はすべてが母体依存であり、産まれてからの3年間は、からだも心もすべてが未熟であり、自分という存在がないままに、おとな達のケアのもとで生きるための基本が成熟します。
外界に産まれる。胎児期の環境を補ってあげて
羊水に包まれた胎児の特徴とは、
1.栄養(食物)はすべて母親から補給されていました。
2.環境の温度は母体からの温度で調整されていました。
3.羊水のなかで事故から守られていました。
4.子宮内は無菌でした。
5.羊水の中だから肌は乾燥から守られていました。
6.お母さんの声は聞こえていました。
このような理想的な環境から生まれた新生児は、自力で呼吸を始めますが、食べること、冷暖房、肌の手入れも、自分で何もすることができないし、いつ事故にあうかわかりません。ことに感染症は心配です。それらはいつも泣くことで、お母さんを呼ぶだけです。
どう育てるか?より、まずは見守りとケア
身近なお母さんは育てる(育児)というより、細かいところにまで目をひからせて、手をかけてあげましょう。空腹そうなら乳を飲ませ、寒そうなら衣服を着せ、暑そうなら脱がせ、おむつがぬれたらとりかえてあげます。その結果、乳児は本来持っている発達の順序をふんで、0・1・2歳の間に殆ど完成し、自立して3歳を迎えます。
初めて空気にさらされる新生児にはスキンケアが必要
280日間羊水の中で育った胎児は、あるとき突然空気中に生まれ出て、それからは皮膚が乾燥し、その程度がひどくなっていきます。そこでできるだけ早い時期から、肌に水分をとどめる保湿剤の入ったローション、クリーム、オイルなどでのスキンケアをしましょう。生まれて早い時から肌を守ることです。一日一回はお湯でしぼったガーゼかタオルで、肌を清拭したあと、全身をスキンケアしましょう。
熱い季節は汗や日光が肌を傷めるし、秋は地方によっては空気の乾燥がよくありません。四季を通じてのスキンケアで肌を守りましょう。
新生児は自律神経が未熟、暖かい衣服で調節
子宮内の胎児は、36~37℃の暖かい環境で十分な栄養でしたが、生まれた途端にすべてが自立です。人間はいつも体温が一定でなければならない恒温動物ですから、環境温度に拘わらず体温を36℃に保ち、昼夜のリズムにからだの生理を合わせていかなければなりません。それにはからだの働きを調節する自律神経の働きが登場します。
夜の眠り、食、暖かさに合わせるのが副交感神経で、昼の活動や寒さに合わせるのが交感神経です。その両神経を合わせて自律神経といって、衣服の調節がこれにかかわっていきます。
生後6ヵ月を過ぎると、大人より少し薄着を
その要領は、1~2カ月頃までは子宮内の温度から生まれたばかりなので、暖かく着せて、飲ませて十分な睡眠。副交感神経の出番です。それを過ぎたら成人と同じ程度の着せ方で、6ヵ月を過ぎたらおとなより一枚少なめとします。ややもすると子どもはおとなより暖かくくるみやすいものですが反対です。0・1・2歳のうちに薄着の習慣を身につけることが3歳を過ぎてからの健康の基礎となります。
大人が子どもと一緒に楽しんであげましょう
いかがでしたか?胎児のころを思い出すと、ケアの仕方も自然と分かってくるのではないでしょうか。子どもの発達を見守り、子どもができたことを共に楽しんであげましょう。子ども達の将来のために、親たちが楽しい思い出を残してあげるような生活をしてほしいと願っています。