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家庭の常備薬と感染症対策

東日本大震災関連特別寄稿 教えて!ドクター

あわてず、日頃からの備えが大事

災害による停電やガソリン不足など、病気や怪我でも受診できない状況が発生することもあるかと思います。あわてることなく、家庭で対処できるよう日頃から備えておくことが必要です。

A.常備薬について

まずは急病に対する薬が中心となりますが、災害時に対する備えも含め、急病とケガの2点からまとめます。

1.発熱は、首・わき・股を冷やす(体温計は常備)

発熱:解熱薬がなくても、太い動脈がある首・わき・股を冷やすだけ熱は下がります。高熱がつらそうで解熱剤を使うのであれば、アセトアミノフェン系解熱薬がおすすめで、下がり方が緩いのは身体に優しい証拠です。座薬は胃の負担なく確実に投薬でき、飲料水も不要で重宝します。おでこに冷えピタ(R)では解熱しません。気持ち良いようなら使う程度です。

けいれん(ひきつけ):熱性けいれんは子どもの7〜10%が経験します。数分以内にほとんど止まります。舌を噛むことはありませんので、口の中に指や箸を入れたりするとかえって危険です。また吐物がのどにつまらないように顔を横向きに寝かせましょう。

2.総合感冒薬は不要で、鼻水吸い器は重宝。

かぜ薬に含まれる鼻水止めの抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬は乳幼児にひきつけを誘発するとの注意勧告がされています。また咳止め薬とともに、かえって痰が出しにくくなることもあります。
鼻が通ると寝やすく、中耳炎にもなりにくいのですが、鼻をうまくかめないのが子どもです。鼻水吸い器で対応下さい。

3.痛みが“お腹”なら浣腸を(浣腸は不可欠)

子どもは、はげしい腹痛を時々経験しますが、まずは便秘を考えましょう。排便がないなら浣腸です。コロコロ便が出てケロっとなります。万一、血便ならば医療機関を受診して下さい。頭痛や打撲痛は原因の検索が優先されます。軽度ならアセトアミノフェン系解熱薬で鎮痛可能です。

4.脱水症の回避に経口補水液

高熱時の発汗、嘔吐、下痢で脱水症に陥りやすいのが子どもと高齢者です。塩分と少々の糖分を含む経口補水液「オーエスワン(R)」でまずは自宅対応を。吐き気止め、下痢止めは当初不要です。

5.虫さされ用薬(かゆみ止め)

かゆみは辛いので、虫さされ用薬(かゆみ止め)はあると便利。

6.すり傷、切り傷、やけど、まずは流水で

災害時を含めケガは子どもにつきものですが、消毒薬はなくても流水で十分です。傷からの出血がひどい時は、清潔な布で圧迫して下さい。出血部より心臓に近い部分をしばったり、心臓より高い位置にする方法もあります。そのためにも絆創膏、包帯、ガーゼなどは常備しているといいでしょう。

B.感染症対策について

保育所はじめ学校などの集団生活では感染症が問題となります。感染様式には、
(1)空気(強い感染力のはしか、水ぼうそう)
(2)飛沫(水しぶき;インフルエンザ、かぜ)
(3)接触(かぜ)
(4)経口(感染性胃腸炎;ロタやノロウイルス、病原性大腸菌)
(5)動物を介する(蚊による日本脳炎)もの
があります。 避難所は密閉と混雑な状況上に、清潔環境の維持が困難のため感染症が広がりやすいです。今回の大震災でも、インフルエンザ、感染性胃腸炎、肺炎の流行が問題となっています。感染症の対策は手洗いやうがいとともに予防であり、日頃から予防接種で予防できる病気に事前対処することが求められます。

服部益治先生

兵庫医科大学小児科教授、医学博士。日本小児科学会専門医、日本腎臓学会専門医。兵庫県小児保健協会副会長、兵庫県小児科医会理事ほか。専門は、小児科全般、小児保健、傷害予防、腎臓病、夜尿症など。次世代を託す子ども達に夢大きく心豊かに育ってもらうため大学内外で活動中。

服部益治

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