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PISA その①読解リテラシー/2012年5月

今後必要とされる「学力」とは

今までは日本の「中学受験」という狭い話をしてきました。

中学入試で問われる『学力』とは、「どのくらいの量の学力があるか」と“量的”な側面ではかることが多いのですが、実際に社会に出てみるとそれらはほとんど役に立たないと思われる方も多いと思います。

算数なんて「つるかめ算ができなくても生きていける」と、よく槍玉に上がる最たる教科ですね(笑)。

 

では、どのような『学力』が問われるのか。

 

今後、グローバル化が進んだ社会で生き抜いていくためには「正しい答えを出せれば良い」という学力観ではなく、「どのような知識を構成し、どのようなことを考えるか」という“質的”な側面が問われるようになってきます。

実際、社会に出てみると正解が必ずしも通用しないことは多々あります。

 

そこで、今回から数回に渡って世界的な観点で学力についてお話ししたいと思います。

国際的な学力評価「PISA」

さて、国によって教育制度は様々。そこで、経済協力開発機構(OECD)は国際的な生徒の学習到達度調査(Programme for International Student Assessment:頭文字をとってPISAと呼ばれる)を2000年より3年毎に実施しています。

対象は15歳児で、2009年には65か国・地域の約47万人の生徒が参加しました。日本からは全国の高校185校、約6000人が参加しています。

 

この調査では「生きるために必要な知識や技能」を実生活の様々な場面でどのように活用できるかを調査するもので、日本の入試問題とは全く傾向が異なります。

 

具体的には、「読解リテラシー」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野に関し、概念の理解度、思考プロセスの習熟度、様々な状況に臨機応変に対処する能力を評価します。

評価軸がこの3分野というだけで「国語、算数、理科、社会」のカテゴライズと全く違うということがわかりますよね。

どんな内容なのか見ていきましょう。

読解リテラシーとは

「読解力」と聞くと、まずイメージするのが「文章を正しく読み、筆者(作者)の言いたいことを理解する力」ですよね。

では、PISAでは何といっているのでしょうか。PISAでは読解力を

 

「自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発達させ、効果的に社会に参加するために、書かれたテキストを理解し、利用し、熟考する能力」

 

と定義づけています。ここまで大義名分のある問題って、一体そんな内容なのか興味が出てきますよね。

そこで、全11問の中から1題を取り上げてみたいと思います。是非皆さんもチャレンジしてみて下さい!

落書きに関する問題

「落書き」

 

学校の壁の落書きに頭に来ています。壁から落書きを消して塗り直すのは、今度が4度目だからです。創造力という点では見上げたものだけれど、社会に余分な損失を負担させないで、自分を表現する方法を探すべきです。

禁じられている場所に落書きするという、若い人たちの評価を落とすようなことを、なぜするのでしょう。プロの芸術家は、通りに絵をつるしたりなんかしないで、正式な場所に展示して、金銭的援助を求め、名声を獲得するのではないでしょうか。

私の考えでは、建物やフェンス、公園のベンチは、それ自体がすでに芸術作品です。落書きでそうした建築物を台なしにするというのは、ほんとに悲しいことです。それだけではなくて、落書きという手段は、オゾン層を破壊します。そうした「芸術作品」は、そのたびに消されてしまうのに、この犯罪的な芸術家たちはなぜ落書きをして困らせるのか、本当に私は理解できません。

                                              ヘルガ

 

十人十色。人の好みなんてさまざまです。世の中はコミュニケーションと広告であふれています。企業のロゴ、お店の看板、通りに面した大きくて目ざわりなポスター。こういうのは許されるでしょうか。そう、大抵は許されます。では、落書きは許されますか。許せるという人もいれば、許せないという人もいます。

落書きのための代金はだれが払うのでしょう。だれが最後に広告の代金を払うのでしょう。その通り、消費者です。

看板を立てた人は、あなたに許可を求めましたか。求めていません。それでも、落書きをする人は許可を求めなければいけませんか。これは単に、コミュニケーションの問題ではないでしょうか。あなた自身の名前も、非行少年グループの名前も、通りで見かける大きな制作物も、一種のコミュニケーションではないかしら。

数年前に店でみかけた、しま模様やチェックの柄の洋服はどうでしょう。それにスキーウェアも。そうした洋服の模様や色は、花模様が描かれたコンクリートの壁をそっくりそのまま真似たものです。そうした模様や色は受け入れられ、高く評価されているのに、それと同じスタイルの落書きが不愉快とみなされているなんて、笑ってしまいます。

芸術多難の時代です。

                                              ソフィア

 

2通の手紙は、落書きについての手紙で、インターネットから送られてきたものです。落書きとは、壁など所かまわずに書かれる違法な絵や文章です。この手紙を読んで、問1~4に答えて下さい。

 

 

落書きに関する問1

この二つの手紙のそれぞれに共通する目的は、次のうちどれですか。

A 落書きとは何かを説明する。

B 落書きについて意見を述べる。

C 落書きの人気を説明する。

D 落書きを取り除くのにどれほどお金がかかるかを人びとに語る。

 

落書きに関する問2

ソフィアが広告を引き合いに出している理由は何ですか。

 

落書きに関する問3

あなたは、この2通の手紙のどちらに賛成しますか。片方あるいは両方の手紙の内容にふれながら、自分なりの言葉を使ってあなたの答えを説明してください。

 

落書きに関する問4

手紙に何が書かれているか、内容について考えてみましょう。

手紙がどのような書き方で書かれているか、スタイルについて考えてみましょう。

どちらの手紙に賛成するかは別として、あなたの意見では、どちらの手紙がよい手紙だと思いますか。片方あるいは両方の手紙の書き方にふれながら、あなたの答えを説明してください。

最後に

さて、みなさんいかがでしたでしょうか?

 

日本における「読解リテラシー」の順位は

 

2000年 8位 → 2003年 14位 → 2006年 15位 → 2009年 8位

 

となっています。ちなみに、「数学的リテラシー」は

 

2000年 1位 → 2003年 6位 → 2006年 10位 → 2009年 9位

 

「科学的リテラシー」は

 

2000年 2位 → 2003年 2位 → 2006年 6位 → 2009年 5位

 

で、数学的リテラシーの順位が大幅に落ち込んだ時は、新聞を賑わせました。

今回の記事を最後まで読んで下さった親御様、是非今夜の食卓でこの「落書き」の問題を家族で解いて(話し合って)みて下さいね。

Mama's profile/プロフィール

安浪 京子

安浪 京子 【プレスティージュパートナー代表】

記事テーマ

子供の学力がどんどんUPする、魔法の基礎学力法

学力低下、理数離れ、詰め込み教育・・誰もが聞いたことのあるこれらのキーワードは、幼児期における家庭での関わり方によって、影響されずにすむ力をつけることができます。そんなエッセンス ―親子で楽しく思考力・集中力を鍛える方法― について連載していきます。

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