長い中学受験期間を支えてくれる大きな原動力が「志望校」。
一番理想的なのは
「将来○○になりたいから、その進路に強い○○学校に行きたい」
というもの。
「将来医者になりたいから」
「東大に行きたいから」
あたりが良くある理由でしょうか。とはいえ、小学生のうちに将来に対する正確なビジョンを描くというのも至難の業ですよね。
「○○学校の雰囲気が好きだから」
「○○学校の××部に入りたいから」
というのも次いで強い動機になります。
中学受験を決めたら”小学4年生辺りから色々な学校の説明会・文化祭に親子で回って下さい”といつもお願いしているのは、複数の学校を見ていくうちに”肌に合う・合わない”が出てくるから。
かつて、偏差値で選んだA中学をずっと志望していたのに突然やめると言い出した教え子がいました。理由を聞くと
「初めて行ってみたけれど、正門を見た瞬間違うと思った」
と。そして、文化祭で理科の実験が楽しかったという別の学校に志望校を変更しました。
小学校受験は「親の受験」と言われるように、お子さまよりは親御さんが志望校を選択するのが一般的ですが、中学受験はお子さまも多感な時期。親の希望・押し付けより、本人の士気の方が重要になってきます。
一番避けて欲しいパターンは、偏差値表の数字で志望校を決めるパターン。
・とにかく1ポイントでも高い偏差値の学校へ
・大体偏差値が55位の学校へ
という相談も良く受けますが、実は偏差値に頼り過ぎるのは非常に危険。
そもそも偏差値は、全体の中で自分がどの位置にいるのかを把握するためのものです。偏差値は「平均点=偏差値50」となるよう設定されており、一般的に下は25、上は75まであります。
たとえば、同じクラスで2回のテストを受けたとして
(A)平均点80点のテストで自分の答案が80点
(B)平均点50点のテストで自分の答案が70点
という結果が出た場合、テストの点数だけ見れば(A)の方が上ですが、実際の偏差値では(B)の方が上になります。つまり、(A)ではクラス内順位はちょうど真ん中ですが、(B)ではクラスの上位にいるという事が把握できます。
ちょっと話がそれますが、テストの点で一喜一憂したり、お子さまを叱るのはやめて下さいね!日々の漢字や計算テストは点数で判断しても良いですが、公開テストや大きな模試で見るべきは偏差値と正答率、間違えた個所です。
偏差値は、受験に必要不可欠なもの。でも、偏差値自体もその発信元によってかなり差があります。例えば
「首都圏模試センター」
76 筑波大駒場
74 開成
72 麻布
71 慶應普通部 武蔵
70 早稲田実業
69 駒場東邦 早稲田
(出典:首都圏模試センター2012年度用)
「四谷大塚」
73 筑波大駒場 灘
72 開成
67 麻布 駒場東邦
65 慶應普通部 早稲田 早稲田実業 早大学院
63 武蔵 海城
(出典・四谷大塚2012年度用)
「SAPIX」
72 筑波大駒場
68 灘
67 開成
62 麻布
61 慶應普通部
60 駒場東邦
57 早稲田
56 武蔵 早稲田実業 早稲田高等
(出典:SAPIX2012年度用)
「日能研」
72 筑波大駒場 開成
71 灘
67 麻布
65 慶応普通部 駒場東邦
64 早稲田 早稲田実業
63 武蔵 早稲田高等
(出典:日能研2012年度用)
と、数値の設定から学校の順位まで、発信元によってこれだけの違いがあります。
というのも、ここには各塾の学校に対する力の入れ方や塾自体のブランドイメージ、塾生の多いエリアのイメージなど様々な「大人の事情」が反映されているためなのです。
偏差値は、学校の難易度を比べるためにはたしかに便利です。
しかし、偏差値では絶対現れないものがあります。それは
「問題の傾向」。
ひとことで「難しい」と言っても、それは「思考力が試される」からなのか、「処理速度が問われる」からなのか、「様々なひっかけが潜んでいる」からなのか非常に多様です。何を難しいと思うかは、お子さまによっても違います。
例えば、筑波大学附属大駒場(通称:筑駒)と慶應普通部の「難しさ」は、全く種類が違います。筑駒対策ばかりをしてきて、偏差値が下だからという理由で慶應普通部を受験しても、合格するとは限りません。
志望校を決めるにあたって、この辺りを知っておくと誤った選択を避ける事ができるのではないでしょうか。
安浪 京子 【プレスティージュパートナー代表】
記事テーマ
学力低下、理数離れ、詰め込み教育・・誰もが聞いたことのあるこれらのキーワードは、幼児期における家庭での関わり方によって、影響されずにすむ力をつけることができます。そんなエッセンス ―親子で楽しく思考力・集中力を鍛える方法― について連載していきます。