今回は、前回に引き続き中学受験事情についてです。
前回、中学受験は首都圏で5人に1人、関西圏で10人に1人と述べました。
「ゆとり教育」への懸念から中学受験が過熱し、1996年には1兆円を超えた学習塾業界ですが、2002年より縮小傾向にあります。
もちろん、その最大の要因は「少子化」です。
そのため、塾も生き残りをかけて必死になっています。SAPIXが代々木ゼミナールの傘下に入り、早稲田アカデミーと明光義塾が、日能研と河合塾が業務提携し、東進ハイスクールのナガセが英語教室を全国展開する等というニュースは記憶に新しいのではないでしょうか?
そして、この業界動向がもろに降りかかってくるのが顧客である「親の皆さん」です。
そのため、どの機関も生き残りをかけ、生徒確保に必死です。
今回は「中学受験をする」という前提でお話しをしていきたいと思います。
まず、中学受験を決めたら、「塾」「個別指導」「家庭教師」のどの形態で進めていくのかを決めねばなりません。
「中学受験程度なら、親が家で教えればいいでしょ?」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、中学受験は非常にシビアで内容も高度です。書店で私立中学の赤本を見てみて下さい、ビックリしますよ!
では、それぞれの形態についての、私の考えるメリット・デメリットを挙げてみたいと思います。
たいていの塾が独自の合格実績、教育システム、受験情報を持っており、優れたテキストやオリジナルの模試をウリにしている所もあります。大勢で授業を受けるので、子ども間の競争原理も働きやすくなります。
一方、どの塾でも最上位クラスには指導力のある先生を配置していますが、下のクラスにいくほど講師の質は「?」という所も少なくありません。その塾の強みである志望校から下に外れてしまうと、単に授業料を収めて頂く「お客様」扱いされるのが、悲しいですが現実です(もちろん塾側はそんな事いいませんが・・)。
また、子どもの真剣さ・やる気もクラス帯に比例します。勉強する目的がはっきり定まっている生徒の集まるクラスは、良きライバルにも恵まれ、お互い切磋琢磨し、同じ学校に合格すればその後も素晴らしい友達関係が続くこともありますが、勉強にふさわしくない雰囲気のクラスに入ってしまうと、どうしても流されてしまいがち(これはお子さんを攻めないで欲しい所です。完全に講師の裁量ですよ!)。授業の黒板を書き写して勉強した気になるのはまだマシな方で、塾に遊びに来たのか・・と思うパターンが出てきます。
また、生徒一人ひとりに目が行き届かないのは塾の特性上仕方のないこと。あまりモンスターペアレントにならないで下さいね。
先生1人に対し、生徒2~3名が一般的。塾よりは一人ひとりに目が行き届きやすいのが特徴です。集団授業が苦手・・というお子様にもとっつきやすい形態です。
たいていの場合は「6年生の算数」と「中学1年生の理科」がペアになるなど、指導される側が同じカテゴリーでない場合が多くなります。
独自の模試を持っている所もありますが、ない所も多く、大手の公開模試を受けて自分の立ち位置を把握する事が大切になります。
また、塾のようにクラス単位・志望校単位で先生がカテゴライズされていないため先生同士の横のつながりが希薄で、我が子専用の先生チーム、というのが存在しないのがネックです。
現在は、塾に行きながら苦手科目は個別で・・という併用パターンが多く、「家庭教師よりは敷居が低い」「値段が安い」という理由で選ぶご家庭が多くなっています。
完全にマンツーマンなので、お子さんの能力、個性に最大限沿った授業になります。
とはいえ、全教科家庭教師のみ・・にしてしまうと、塾のような競争原理が働かず、どうしてものんびりしてしまいがち(もちろん先生によりますが)。
自分の立ち位置を把握するため、大手の公開模試を受けるのは必須になります。
また、個別指導以上に、先生間の横の連携が難しくなり、「先生によっていうことが違う」など、親御さんが振り回されるケースも出てきます。
マンツーマンゆえ、相性も非常に重要で、成績が上がるも下がるもこの一点にかかっているといっても過言ではありません。大手の派遣センターならば先生の交代が可能な所もありますが、一度教えてもらうと、なかなか交代して欲しいと言い出せない方が多いようです(遠慮するところではありませんよ!)。
また、塾・個別と比べて料金が高い・・というのが、最大のネックでしょうか。
一番多い利用法は、やはり個別指導と同様、塾のフォローとして苦手科目のみお願いする・・という形態です。
さて、塾・個別・家庭教師すべてにいえることは――
「どの先生にあたるか」が全ての鍵を握る、という事です。
指導とは、教えるテクニックだけでなく、いかにやる気を引き出すか、心の支えになってあげられるかなど、全てを包括するものだと私は思っていますが、それは機関によって・・というより、先生によって考え方はそれぞれ。
中学受験業界にもある程度適正価格というものがありますが、それを上回る料金というのはそれなりの内容(先生)であり、価格破壊的に安いというのはそれなりの内容(先生)というのは頭に入れておいて欲しい所。塾の有名講師もこっそり個別指導や家庭教師をしている場合が多々ありますが、その場合はやはりかなり高額になります。
とはいえ、どのご家庭も無尽蔵に教育費につぎ込めるわけではありません。しかし、我が子に最大の事はしてやりたい、というのも親心。そこにつけこまれないよう、様々な見極めが親に求められるのはいつの世も変わりません。
そこで次回は、気になる「塾選び」についてお話ししたいと思います。
3月19日(月)、恵比寿にて算数カフェを実施します。
詳しくはプレスティージュパートナーHP http://www.prestige-partner.com/index.html へ。
安浪 京子 【プレスティージュパートナー代表】
記事テーマ
学力低下、理数離れ、詰め込み教育・・誰もが聞いたことのあるこれらのキーワードは、幼児期における家庭での関わり方によって、影響されずにすむ力をつけることができます。そんなエッセンス ―親子で楽しく思考力・集中力を鍛える方法― について連載していきます。