処理能力の3つ目は「多種多様なケースに対応する能力」です。
いわゆる「処理能力系」といわれる学校は、大きく
○女子学院系
○慶應義塾中等部系
に分かれます。
女子学院系は、偏差値帯によって問題レベルの易~難はあれど、基本路線は処理能力①でお伝えしたような取り組み方でOK。
しかし、慶應義塾中等部(略して慶中)系は、そうはいきません。
慶應義塾中等部の問題は次のようなタイプです。
H23 慶應義塾中等部
(出典:声の教育社)
制限時間は45分で、大問7題、全部で18問の構成です。
一問一問はそれほど難しくはなく、テキスト類で扱っている類のものも多いですが、重箱の隅をつつく感があります。
例えば、問2(3)の通過算は、いわゆる王道タイプではありません。よって、テキストでは扱っていないか、もしくは扱っていても基本事項からかけ離れた解き方が唐突に載っている程度。塾の授業などでも、飛ばすことが多い内容です。
ただ、このような問題の特徴は”決して難しくはない”という事。つまり、「知っているか知っていないか」「見たことがあるかないか」という“知識レベル”での勝負になってきます。この“知識レベル”が結構マニアックなのです。
ロールプレイングゲームでいえば、武道を磨いて主人公の戦力をアップさせるというより、「この敵には爆弾」「この敵には薬品」と、いかに沢山の武器を持って対峙するか、というイメージですね。
では、どのようにして沢山の武器を揃えるか。
まず、大前提となるのは
基礎が完璧に身についていること
です。
これはどの学校にも共通することですが、多種多様なケースを出題してくる学校の場合には、特に「ブレない基礎力」が大切になってきます。
というのも、前述した「武器」というのは、いわゆる「王道から外れたテクニック」。
一部の難関校専門進学塾やご自身が高学歴の講師は、この“テクニック”に走った授業をすることが多々あります。しかし、お子さんに相当な基礎力がない限り、その場限りのテクニックに走ることによって肝心の基礎解法を軽んじてしまい(子どもは“すごーいっ!!”的な解放の目くらましにあっさりとあいます)、最終的には肝心要の算数力が低下してしまいます。実際、そのようなケースを沢山見てきました。
お料理に例えるならば、忙しい時は「カレー用切り野菜セット」を使ってカレーを作っても良いですが、実際にはジャガイモ・人参・玉ねぎの皮を剥き、使用用途に合わせて切る力がなければ、シチューや肉じゃがにも使うという発想はおろか、その他の料理に全く応用が効きませんよね。
逆に、もし算数の基礎力が不十分であれば、武器を揃える必要はありません。
処理能力系とはいえ、全てが王道から外れた問題ではなく、それらはせいぜい全問題の3割程度。処理能力を必要とする学校は、思考問題はそれほど多くないため、基本的に算数の基礎知識で賄えます。
基礎力がきちんとあり、さらに武器を揃えていくには、とにかく
いかに数多くの問題に当たるか
です。
良質の問題や、内容を掘り込んだ問題、その分野を極めるような問題は必要ありません。とにかく縦横無尽にありとあらゆるタイプの問題に挑む事です。
一番手っ取り早いのは、あらゆるタイプの問題を包括した問題集に取り組む事ですが、残念ながら書店でそのような問題集を見たことがありません。あらゆるタイプを包括しようとするならば、「この分野はこれ」「こちらの分野はこちら」と問題集を使い分ける必要が出てきます。慶中のような有名中ならば、塾の慶中対策コースでそれ用に特化したテキストがあるでしょうが、全ての学校がそうとは限りません。個人で問題集を使い分け、抜粋するのは至難の業ですので、この辺りは塾の先生や家庭教師など、プロに聞くのが最も効率的です。
私が個人的におすすめなのは、学研から出ている「応用自在」シリーズです。
算数に関しては「文章題」「計算」「図形」「速さ」の4種類が出ています。これで算数の全てが網羅できるわけではありませんが、頻出であるこれら単元を攻略するには良書です。ただし、解説はあっさりしているので、自学する場合は納得のいく解法を見つけて下さいね。
安浪 京子 【プレスティージュパートナー代表】
記事テーマ
学力低下、理数離れ、詰め込み教育・・誰もが聞いたことのあるこれらのキーワードは、幼児期における家庭での関わり方によって、影響されずにすむ力をつけることができます。そんなエッセンス ―親子で楽しく思考力・集中力を鍛える方法― について連載していきます。