受験算数に必要な能力――今回は「処理能力」です。
処理能力は、計算力に通じる所があります。つまり、「いかに短時間に正確な答えを導き出すか」という点ですね。
速く正しく解答できるに越した事がないのは当然と思われるかもしれませんが、処理能力とひと口にいっても、問題タイプによって身につけ方は異なります。
そこで、処理能力を「一般的な処理能力」「短時間に膨大な問題をさばく能力」「多種多様なケースに対応する能力」の3つにわけてお話したいと思います。
まずは一般的な処理能力についてです。
難関校の一部や中堅校、公開模試でいえば大問の1番(計算や一行問題)、2番(小問群)ですね。例えばこんな感じです。
H23 学習院中等科入試問題
(出典:声の教育社)
学習院は制限時間50分で大問が6題。非常にスタンダードなタイプです。
問題をよく見ると、大問1番の計算はとにかく速く正確に取り組むとして、大問2番というのはどれも参考書や塾のテキストに載っている基本問題。ひねりもなく、絶対に落としてはいけない問題です。
入試は、正答率の低い問題が解けるか否かではなく、いかに正答率の高い問題を落とさないかが重要です。この大問2番でミスをするのは致命的で、かつ人より時間がかかるのも避けたい所。つまり、こういうタイプの問題を人並みのスピードで正しく解くのが「一般的な処理能力」です。
このような一般的な処理能力を身につけるには、
1.基本をきちんと理解する
2.基本が理解できたら「数値替え」「類題」を多数解く。応用問題は必要なし。
3.混合問題で練習する
という手順が必要になります。
処理能力云々の前に、これは勉強をする上で必ず必要ですね。
基本がきちんと理解できているか否かを見極めるのは簡単です。
【きちんと式(図でもOK)が書けているか】
【自分の言葉で解き方を説明できるか】
この2点がクリアされていれば大丈夫。
短時間に膨大な数をさばくタイプのテストや入試では、実際はきちんと式を書いている時間がない場合もあります。しかし、最初は【きちんと式を書く】練習は必須です。計算に例えると、初めて筆算を習う時には
一の位を計算する → 繰り上がりの数字を小さく書く → 十の位を計算する
という手順に沿って解く必要がありますが、慣れてきたら頭から暗算で解いてOK。
算数に関しては、他分野もこのプロセスと同じです。
【自分の言葉で解き方を説明する】というのは、慣れるまでは結構ハードルの高い作業です。
よくあるのが、「テキストに載っているままを話している」「大切な所で端折る」ケース。このような場合は「どうしてそう考えたの?」のひと言で全てを見透かせます。
もしお子様が「だってそう書いてあったから」「そういうものだから」と答えたら、残念ながらあまり理解できていない証拠です。
基本が理解できたら、頭と体に浸透させ、スピードアップを図るために数値替えと多数こなします。
ここで一般的に陥りがちなのが、1~2問しか解かないこと。
先ほどの学習院の大問2番(1)は仕事算ですが、この問題はほぼ公式そのまま。実際は違う角度から聞いてくる事がほとんどなので、(算数の実力のある子は別として)それらの様々なパターンを一通りこなすのが近道です。仕事算だけでも、せめて5パターンは解いておきたいですね。
また、応用問題・発展問題は基本的に必要ありません。時々応用問題を1問程度はさむのも良いですが、基本レベルの問題メインで取り組みましょう。
続いては入試対策的な話になりますが、他分野の同レベルの問題とごちゃごちゃにして解く練習が必要になってきます。
仕事算ばかり解いていたら、仕事算が解けるようになって当たり前。
学習院の大問2番を見ても(1)仕事算(2)比(3)商売と、他分野が当然交じってきます。
このような時に、さっと仕事算と「判断」し、解き方を「思いつくか」が処理能力です。
「えーっと、見たことはあるんだけど、どうやるんだったっけ?うーん、まぁ忘れたから線分図書いてみようかな?あてはめにしてみようかな?」・・こうなったらアウト。そうならないためにも「処理能力」は必要です。
そして・・処理能力は、磨けば必ずアップします!! 頑張って下さい。
安浪 京子 【プレスティージュパートナー代表】
記事テーマ
学力低下、理数離れ、詰め込み教育・・誰もが聞いたことのあるこれらのキーワードは、幼児期における家庭での関わり方によって、影響されずにすむ力をつけることができます。そんなエッセンス ―親子で楽しく思考力・集中力を鍛える方法― について連載していきます。