こんにちは、高橋友佳子です。
一年間、スマホでも撮れる、家族写真を豊かにするための簡単な写真の撮り方を色々ご紹介してきましたが、全24回になるレッスンもこれがラスト。
初回では、写真に必要なたったひとつのものは「光」であると書きました。
最後になる今回は、「家族写真に一番たいせつなもの」について伝えさせてください。
写真の印象は光で左右されるので、光を意識することで上達できるのは事実です。美しい光を求めて、場所を選び、絶好のタイミングを待つことができれば、その努力のかいある美しい写真が撮れます。
それは写真のための撮影、「写真ファースト」ともいえる態度。でも、家族写真で一番大切なのは「写真」そのものではなく、「家族」。
目指すのは、「家族ファースト」な写真です。
家族写真の一番の価値は、十年後、二十年後にも思い出を甦らせ、家族を笑顔にしてくれること。「写真としての見た目の美しさ」はあまり重要ではありません。
むしろ、「きれいな写真」としては取り除きたくなるものほど、家族写真にとってはその家族らしさを写してくれる大切な存在。
ただの散らかった部屋の写真も、家族にとっては、当時使っていたおもちゃや遊びを思い出すことができる、貴重な資料です。
誰が見ても見映えのよい写真は七五三などの節目や年賀状用で充分。
3歳以下ならその写真すら、「かしこまったポーズ」を無理にさせる必要もないと思います。あまり作り込まず、テキトーなくらいでちょうどいいのです。
写真で伝えたい出来事そのものを楽しむこと、思い出深い時間を過ごすことを大切にしてください。
「理想的な姿」からはみ出た部分こそが、貴重なその子らしさ。誰が見ても傑作!な一枚を撮るより、大きくなったうちの子に「これは傑作!」と笑ってもらえる親子関係を作ること。
これが、家族写真で目指すゴールです。
健全な親子関係であったとしても、思春期になれば親子であれど距離は広がり、自然な姿を写真に残せる機会は減っていきます。
でも小さかった頃に、子どもの気持ちに寄り添い、本当に楽しいと思える瞬間を分かち合った親子であれば、写真を通して、その思いをよみがえらせ、手は離れても絆を結びつけることができます。
わたしは親として特に良い見本ではなく、幼い頃もけして穏やかな子育てではありませんでしたが、子どもたちは写真を見て話をするのが本当に大好きです。
たとえば、娘のお気に入りのこの写真。ストールに埋もれた顔がかわいくて、手持ちのコンデジでパパッと撮った一枚(当時はまだスマホは一般的ではありませんでした…)。危ないのですぐに手を出させたから、これっきり。構図も場所もこだわっていません。
でも、子どもはそんなの気にしていません。何をしているのか、どんなことがそこで起きたのか、どんな想いがそこから感じられるのか……。
それを思い出させることさえできれば、撮影は短ければ短いほうがいい。手をかける必要はなありません。
インスタグラムなど、画像をシェアするSNSでは、誰が見てもかわいいと思える子どもの写真があふれています。でも、きちんとした写真に残すには、「大人の意図する動き」を子どもにさせる必要があり、それは必ずしも子どもの希望ではなく、そこに「楽しい思い出」はありません。
親が子に対して、「こうでなきゃダメ」と指示する瞬間を写真のために増やしてしまうとしたら、とても残念だと思います。
家族写真に必要なのは、大人が意図したかわいい姿ではなく、意図しなかった子どもの行動にママやパパが「かわいいと感じた瞬間」。どんなに写真が上手くても、これは家族にしか撮れません。
家族こそが、「最高のカメラマン!」なのです。
(上の写真は、もらったおさがりを袋ごと置いていたら……「ようふくやさん」になってた!の図。まさに意図しなかった瞬間の記録です)
ぜひ、親子だから見えるミクロな出来事、照れ隠しのふざけたキメ顔、頭を抱えるイタズラなど、今しか撮れない姿を残してください。
(上の写真:初めて自分でスカートをはけた!と走って報告に来たの図。服のシミがチャームポイント)
幼い日の思い出は、これから長い関係が続いていく親子にとって、最高の財産。写真が不器用な親の代わりに、「あなたは愛されていた」というメッセージを伝え続けてくれるはずです。
写真が子育ての日々をもっと豊かにしてくれることを願っています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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高橋 ユカコ 【フォトグラファー】
記事テーマ
写真は記憶を彩る魔法のツール。どんなに大変な子育て時代もかわいい写真にすれば、眩しい思い出に変わります。一見難しそうなカメラの使い方ですが、写真の法則はとってもシンプル!スマホでも一眼でも変わりません。プロの現場や子育ての実体験に基づく、シンプルなセオリーから月齢に合わせた簡単なコツまで、とっておきの写真の撮り方をお届けします。