皆さん、絵本っていつからあるんだろう?という疑問を持ったことはありますか? 子育てしていると、何となくいつも自分のまわりにあるので、あまりに当たり前のもののようですが、このコラムを書くにあたってちょっと調べてみました。
西洋では17世紀半ばくらいまでさかのぼるんですって! なんと日本では、それよりもっと昔の平安時代の「絵巻物」が始まりともいえるらしいのですが、これは貴族向けで一般小市民向けではないので、室町から江戸時代の庶民文化の代表だった「御伽草子」や「奈良絵本」が始まりだろうという意見もあるそうです。
でも、17世紀後半とか室町、江戸時代なんて言われてもあまりにも昔過ぎてイメージがわかないですね。おまけに、古い絵本は大人の視点で書かれた、「躾」のためのものが多かったようですので、いま私たちの身近にある絵本とちょっと違いますね。
絵本の世界の先駆けと言われているのが「ちびくろサンボ」と「ピーター・ラビットのおはなし」です。これなら「あ~知ってるわ!」と思う方も多いでしょう。このような、子どもの視点で書かれた絵本が登場するのは20世紀になってからです。
そう考えると、絵本の歴史は思ったよりも短いものなのかも知れませんね。
この2冊にはある共通点があります。皆さんご存知ですか?
それは、どちらも、特定の子どもにあてた愛情のこもった絵入りのお手紙がもとになっていることです。「ちびくろサンボ」を描いたヘレン・バナーマンは、国に残した小さな娘にインドから絵入りの手紙を書きました。「ピーター・ラビットのおはなし」の著者であるビアトリクス・ポターの場合は、ある病弱の子どもに送った手紙の「4匹のラビット」についてのお話が元になりました。この2冊は今でも広く読み継がれていますが、それは、誰かに向けた確かな愛情が根底にあったからだと思います。
子どもに分かりやすい言葉で、愛情をこめてお話しする。優れた絵本のそんな姿勢は、ベビーサインと全く同じです。だから絵本とベビーサインは特に相性がいいんだと私は思います。
いそがしい毎日の中で、赤ちゃんをちょこんとお膝に乗せて読み聞かせができる時間は、親子共に至福の時間です。子どもたちが大きくなってしまうと本当あのころが懐かしく、またきゅんと寂しくもあります。
ですから、お子さんが小さな時から是非一日にたった一冊でもいいので、お家で読み聞かせの時間を作ってあげてくださいね。
こちらのコラムでは、まだおしゃべりできない赤ちゃんとベビーサインを使って絵本を楽しむ方法と、おすすめの絵本を毎回紹介しています。
今回は、「夏」をテーマに選んでみました。
1冊目
へんなおばけ
白泉社
作:大森裕子
夏だ~お化けだ~という事で、大人気の「へんなえほんシリーズ」の第3弾です。白いシーツをかぶっているのは誰だかわかるかな? 動物さんたちが布をかぶっているページのところで、「お化けさんみたいだね~」と両手を前にしてゆらゆらさせるベビーサイン(日本手話の「お化け」)を見せましょう。やがてまねっこしてくれるようになりますよ。絵本を読み聞かせる前後に白い布やタオルなどをかぶって「お化けだぞ~」と言って遊んでみるのも楽しいです。シーツの向こうに隠れている動物さんたちはシルエットだけではなかなかわからないのも楽しいです。怖いお化けは出てこないので、怖がりさんでも大丈夫な、笑顔になれる絵本です。
2冊目
がたんごとんざぶんざぶん
福音館書店
著・イラスト:安西水丸
赤ちゃんたちが大好きな電車が「がたんごとん」と海辺の街を走って行くと、「のせてくださ~い」と夏のアイテムが手をあげます。アイスクリーム、麦わら帽子、スイカ・・・・ベビーサインを添えてたくさん見せることもできますが、まずは「がたんごとん」のところで両手の肘を曲げて車輪のように動かす【電車】のベビーサインを見せましょう。「のせてくださ~い」のところでは、一緒に手を挙げてみるところから始めると、簡単にベビーサインを楽しむことができますよ。「がたんごとん」のお話を知っているお子さんたちは、あれ?いつもとちょっとお話がちがうな?に気付くと、とっても真剣にお話を聞いてくれますよ。是非2冊とも読んであげてくださいね。
吉中 みちる 【一般社団法人日本ベビーサイン協会代表理事】
記事テーマ
まだおしゃべりができない時期にベビーサインでコミュニケーションをして育った赤ちゃんたちは、絵本が大好きに育ちます。どうしてなの?絵本とベビーサインはどんな関係があるの?普通の絵本の読み聞かせとどう違うの?など等皆さんの疑問にお答えしながら、ベビーサインと絵本をお子さんのコミュニケーション力アップにつなげる方法をお伝えしていきます。