世間では「えがないえほん」 BJノヴァク著、大友剛訳 という本が流行っているそうですが、皆さんご覧になられましたか? 私は昨年、たまたまこの絵本が出版された直後に、翻訳者の大友さんの講演会にいく機会があり、ご本人に読み聞かせをしてもらいました。元々マジックや音楽を交えて、絵本ライブをされるパフォーマーさんなので、大人でも笑っちゃう読み聞かせ方はとってもインパクト大でしたね。でも、普段ご家庭で読むときにはちょっと大人はあまり楽しめないかもしれないです(笑)
さて、本来、絵本というのは絵があります。その絵はお話の挿絵という脇役ではなく、しっかりとその様子やお話の流れがわかる描写がしてあるのが特徴です。
今回は、そんな絵だけでお話が伝わる「字のない絵本」を3冊紹介しますね。
その前に、字のない絵本、どうやって読んだらいいのかわからない・・・という方いらっしゃいますか? そんなに難しく考えなくていいんですよ。その絵から思いつくお話をその日その日にお子さんといっしょに作ったらいいんです。別に壮大なストーリーにする必要はありません。絵に言葉を添えて、それに少しベビーサインも添えてみると楽しいですよ。今まで「字のない絵本」ちょっと敬遠してきたかたも是非手に取ってみてくださいね。
きこえる?きこえるよ
たしろちさと イラスト
グランまま社
【聞こえる】のベビーサインは日本手話、アメリカ手話共通の耳の後ろに片手をあてる動きを使います。ちょうどこの絵本の表紙の男の子とお猿さんのような感じの動きですね。お教室では割と早い段階で赤ちゃんに見せてあげてね!とお伝えするベビーサインの一つなんです。それは、赤ちゃんたちは音にとても敏感。あっちで携帯の音がしたらハッと顔をあげるし、遠くからワンワンって犬の声がしても、あっ、聞こえたよって表情で教えてくれたりしますからね。だから、この絵本1冊でいっぱい【聞こえる】のベビーサインをしながら、ママやパパが絵の中から聞こえてきそうな音を再現してあげてくださいね。
お料理のシーン、おもちゃで遊ぶシーン、お外にお出かけした時のシーン、雨の日、花火、楽器を使って・・・・・いっぱいお話が膨らむ内容が詰まっています。イラストもとても温かみがあって、親子で眺めてゆったりお話をする時間を作ってみてくださいね。
ぞうのボタン
うえののりこ作
富山房
小さなねずみくんのシリーズで有名ななかえよしおさんとうえののりこさんご夫婦のデビュー作。こちらのコラムでも以前ちょっとお話をしましたが、この絵本は日本で出版してくれるところがなくて、もともとは「Elephant Button」としてアメリカで出版されたんですね。お話はとってもシンプルなんですが、動物たちの何とも言えないすっとぼけた表情と、次々ボタンをはずして脱いでいくシーンがとっても可笑しくてかわいらしい絵本です。最後のオチがまたね!いやいや、それはないわ~っていう楽しいお話。
動物さんたちのベビーサインもたくさんできますが、まずは、表紙の【ゾウ】さんからどうでしょうか? アメリカ手話で片手をお鼻のところから、ゾウの鼻のように伸ばします。普段の生活で「ボタン」に興味が出てくる時期にも関連つけて読んでみるのもいいかもしれないですね。えっ?ぼくの(わたしの)ボタンも外したら誰か他の人が出てくるの?って思いながらボタン外してるかも?って思ったら毎日のお着替えも楽しくなっちゃいます。
おはよう
まついのりこ 作・絵
偕成社
まついのりこさんといえば、一番に思いつくのがわが子たちも大好きだった「じゃあじゃあびりびり」なんですが、今回ご紹介するのは、字のない絵本。
絵本の中には「おはよう」と「おやすみ」しか書かれていませんが、赤ちゃんのよくある1日がとてもわかりやすい表情といっしょに描かれている1冊です。本には「お母さんと赤ちゃんでうんと楽しい絵本にしてください」と書かれているとおり、読み手が赤ちゃんの表情を見ながら、えほんに出てくる女の子の表情やしぐさを真似て、自由にお話を作ってコミュニケーションをしてみてください。確かに、あんまり可愛らしい~という女の子のイラストではないかもしれないですけれど(苦笑)、赤ちゃんたち意外と好きみたいですよ。お話がなかなか思いつかない人は、今、〇〇しているね~ってその絵を読み取って状況をお話ししてあげたり、いないいないばあとかあっかんべーを真似るだけでも十分楽しめると思いますよ。あまり気負わず、1ページ、1ページ楽しんでみましょう。
使ってみてほしいベビーサインは最初の【おはよう】と最後の【おやすみ】ですね。【おはよう】は日本手話の片手のこぶしをこめかみから下におろす動きを使ってみましょう。【おやすみ】は合わせた両手を頬にあてるジェスチャーを使えてみてください。
【おはよう】
絵本の読み聞かせに正解も間違いもありません。だから、文字のない絵本は、自由に毎回オリジナルを作って楽しんじゃおう!くらい軽い気持ちで手に取って、親子のコミュニケーションの幅を広めていただけると良いかなと思います。
吉中 みちる 【一般社団法人日本ベビーサイン協会代表理事】
記事テーマ
まだおしゃべりができない時期にベビーサインでコミュニケーションをして育った赤ちゃんたちは、絵本が大好きに育ちます。どうしてなの?絵本とベビーサインはどんな関係があるの?普通の絵本の読み聞かせとどう違うの?など等皆さんの疑問にお答えしながら、ベビーサインと絵本をお子さんのコミュニケーション力アップにつなげる方法をお伝えしていきます。