「インナーチャイルド」という言葉はあまり聞き慣れないかもしれませんが、「小さい頃の体験を記憶している自分の一部」「内なる子ども」という意味です。
発達心理学では「小さい頃、こういうことがあったよね」という単純な記憶だけではなく、出来事とその時の気持ちをセットに記憶しているといわれています。ご自分が覚えている、いないにかかわらず、深層心理に記憶され、無意識に今の行動や判断の基盤になっていて、大体10歳位までに形作られます。
例えば、『小さい頃にお母さんと買い物に行って、洋服を買ってもらった時の嬉しい気持ち』が今、『おしゃれをすることが楽しい』という行動につながっていたり、『おばあちゃんの肩をたたいてあげたら、とても喜んでもらえて嬉しかった』という体験が「誰かの役に立つようなことをしよう」という行動の原動力になっていたりします。
直接的でなくとも何かしらの記憶が今の行動の基準になっています。
逆にその記憶が、今の行動を制限することにつながることもあります。例えば、『小さい時にお手伝いをしようと思って食器に手を出したら、手が滑って食器を落として割ってしまった。その時、母に「危ないから余計なことしないで」と怒られて悲しかった』という体験があったとしたら、もしかしたらその記憶が、無意識に大人になってから家事をすることに対しての苦手意識や何か行動を起こすことにブレーキをかけているかもしません。
大人になると「そんなことで?」と思うかもしれませんが、子どもの頃の記憶は大人が考える以上に心の奥深くに焼き付いているのです。
子どもの頃の体験や記憶を基にして「家族ってこんな感じ」というザックリとしたイメージから「家族はこうでなければいけない」という信念まで、私たちはそれぞれ違う価値感を持ち、それを基準にして様々な判断をしているのです。
この判断の基準の違いは、友人やご主人にも感じたことがあったかもしれません。
普段はあまり意識することはありませんが、結婚、妊娠、出産、子育て期にはこのインナーチャイルドの状態が影響を与えます。
『子どもの頃の記憶は大人になってからでは変えられないのですか?』
いいえ、変えられます。記憶というのは思い出すたびに新しく書き換えられているといわれています。
小さい頃は経験も少なく、できることが限られていたので選択肢がありませんでしたが、大人になったあなたは今までの経験を生かしてその記憶を新しいものへと変えることができます。
ママになったら初めての体験の連続ですから、心配や不安は正常な反応です。
そんな時にママのインナーチャイルドの気持ちが無意識に表れてきます。
「色々あるけど、赤ちゃんが可愛い」(楽天的で明るいインナーチャイルド)
「ちゃんとしないと」(しっかり者のインナーチャイルド)
「子どもって色々手がかかって面倒くさいし、うるさいし」(子ども嫌いのインナーチャイルド)
など様々で一概には言えませんが、子育てに対する反応は、記憶や小さい頃の感情の総称、インナーチャイルドがどのように感じているかに影響を受けています。
『では、どうやって変えるの?』
子どもを育てることは、自分の子どもの頃に持った基準を見直し修正することができる素晴らしい時期です。
「子育てセラピー」とも言えます。
『子どもが生まれる前は「子どもってうるさい」と思っていたけど、親になって子どもの可愛さがわかった』
という方はたくさんいらっしゃいます。
それは妊娠中から始められます。
ご自分が言ってほしかったことを赤ちゃんやお子さんに言ってあげてください。
ご自分がしてほしくなかったことは、しないようにしましょう。
よくわからない時は、先輩ママや周りの方にお聞きになってみてください。
パパ、ママ、おじいちゃん、おばあちゃんも、ご自身のインナーチャイルドを育てる気持ちで、お子さんに愛情を注いでください。
お子さんを育てるようにあなたのインナーチャイルドにも愛情を贈り、ご自分も大切にしましょう!
いかがでしたか? 少し意外なことかもしれませんが、これからインナーチャイルドとの付き合い方などをご紹介していきますので、 子育てを通して、自分育てもできる、あなたらしく輝いていきましょう!
●参考文献
著者:井ノ口馨(2015)『記憶をあやつる』角川選書
著者:リチャード・ボルスダッド 訳者:ユール洋子 (2009)『NLP子育てコーチング 親の信頼がこどもを伸ばす』春秋社
・ブログ http://ameblo.jp/hipuno-navi/
・Facebookページ https://www.facebook.com/mariko.fujiwara.3
藤原 万梨子 【親子コミュニケーションカウンセラー】
記事テーマ
『毎日忙しい、大変だけど、楽しい!』のはずが、本当は子育てが辛いという方は、もしかしたらご自分の内側のインナーチャイルド(小さい頃の自分)があなたに何かを伝えているのかも?「子育ては自分育て」お子さんがあなたのインナーチャイルドの鏡となり、本当のあなたの心の声に気づかせてくれるのです。悩みはあなたがより豊かに輝く為の気づきの入口です。