先日、外出先で食事をしていた時のことです。隣の席には一組の親子連れの姿。男の子は野球のユニフォームを着ており、会話の節々から察するに試合の帰りに立ち寄られたのだろうと思われました。しかし男の子はなぜか浮かない顔・・・そう感じたその時でした。
「もう・・・何してたの⁉」
「あの時、あんなミスをしなければ勝てたかもしれないのに!」
そんな言葉が耳に入ってきました。
「だって・・・」
母親と思われるその方は、男の子の言葉を遮るかのように「だってじゃないでしょ!」と
男の子はただ黙って下をうつむいているだけでした・・・
数多くの習い事でも空手の試合でもかまいません。そのような場面に直面したことはありますか? 結果が振るわなかった我が子に怒ってしまったことはありませんか? 前回もお話しさせて頂いた通り、大会注意事項には『負けた選手に対して過剰な怒号や体罰をしないこと』と明記しておりますが、もしかしたら私たちが目にしないだけで、家に着くまでの車中や、ご家庭の中で先程の親子のようなやりとりがなされているのかもしれません。
一生懸命に稽古や練習したことが結果として表れないということ。それが我が子であればなおのこと、親からすれば納得し難く、時には不満に思うこともあるでしょう。お恥ずかしい話、以前は私もその親の一人であったと思います。我が子に対する期待が大きければ大きい程、目の前の結果を認めたくない、目を背けてしまいたいという思いが、我が子に対して「怒る」という方法でしか表せられなかったのかもしれません。
「あんなにたくさん稽古したのに」
「いつもと同じ動きができていれば」
「あの時あんなミスさえしなければ」
少なからずとも、それに似た言葉を我が子に投げかけていたのかもしれません。しかしその思いを含めたすべてが今の我が子の実力であると受け止めるまでにはあまり時間は必要ありませんでした。それはある日、息子の試合のセコンドに付いた時です。試合の途中、私と息子は何度も目が合いました。試合が終了してすぐに私は息子を問いただしました。
「どうしてママと何度も目が合うの?あなたは一体誰と戦っていたの⁉」
「だって・・・ぼく、ママに言われた通りちゃんとできているかなって思ったから・・・」
怒るのは「自分のため」
自分の理想を相手に求め、思い通りにしようとする時。
叱るのは「相手のため」
相手が自分で考え、答えを導きだしてくれることをのぞむ時。
一方的に怒ってしまっていては子どもは理解できず逆効果です。それは親と子の立場が対等ではないからです。子どもからすれば威圧的に感じ、自分自身を否定されてしまったと誤解が生じるでしょう。親の顔色をうかがいながら困惑するだけでしょう。負けたという結果について怒るというのではなく、それを何かのせいにしている姿勢や、なぜ負けてしまったのかを考えず、ミスを反省しない姿勢が見られた時に「叱る」ということ。子どもが成長するためには「怒る」ではなく「叱る」ということが大事なのです。
そして重要なことは、叱りっぱなしで終わらせないということ。「そうだな。指摘されたところに気をつけて次から頑張ろう」と、子ども自身が思えるように導くことです。怒っているのではなく、叱ってくれているということに本人が気づいてくれることなのです。多くの優勝からよりも一つの敗戦からの学びが多いと言われているのは、これらの積み重ねでもあるのです。
私たちは感情の生き物です。時には感情をコントロールできず怒ってしまうこともあるでしょう。しかしそのつど、今のは感情のコントロールができず怒ってしまったということに自分自身で気づくことができるだけでも良いのです。一呼吸おいて冷静に叱れるようになれば、感情に飲み込まれず親の心にも余裕が生まれます。区別ができるようになれば、子どもや親のためにもなるのです。
ミスが起こるということは、何かにチャレンジした結果です。我が子の結果は親にとっての評価ではありません。子ども自身が勇気をだしてチャレンジしたという結果を褒めてあげて下さい。子どもの心は自身一人で支えるのはまだ少し困難です。叱るよりもまずは負けて落ち込んでいたり、泣いている子どもの心のケアを最優先してあげてほしいと思います。
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西山 静香 【国際空手道連盟極真会館香川県本部 桑島道場 指導員】
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平成24年度から中学校で武道が必修化されました。日本古来から伝わる武道には、ただ強くなるだけではなく「礼に始まり礼に終わる」という言葉がある様に、武士道精神は子供教育にも通ずるところが数多くあります。4歳~小学6年生の少年部空手指導員をしている現在、必修化された武道が教育とどの様に関わっているのかを知って頂ける機会になればと思っています。