8月に入り、夏真っ盛りですね。 陽射しは強く、気温もぐんぐん上がり・・・こんな時は短時間の外出でも、しっかり水分補給をして、熱中症にならないように気を付けましょう。
サッカーに水泳、野球にソフトボール・・・外には子どもたちの夢中になるものはたくさんありますが、ふと家の中でクールダウンする時間には、絵本や児童書がそばにあってほしいものです。
感想文を書くことを最終目的とするのではなく、本を読んでみよう、と手を伸ばすことを目標に始めるのもいいと思います。
小学校中学年から高学年は、絵本から、文の長い児童書へと変わる年頃です。
ぐっと文字数が多くなることから、読書を敬遠しがちになりますが、一歩踏み込めばどんな世界にだって飛んで行ける魔法が隠されています。
無理せずあせらず、をモットーに、長い夏休みゆったり読み進めてください。
ただいま!マラング村-タンザニアの男の子のお話-
ハンナ・ショット作
佐々木田鶴子訳
齊藤木綿子イラスト
2013年
徳間書店
1512円
舞台は、アフリカのタンザニアという国です。そこに、ツソという男の子がいました。
ツソには両親がおらず、お兄ちゃんのダウディとふたり、おばさんの家に住まわせてもらっています。
おばさんのいうことをたくさん聞き、仕事をして、でも・・・食べ物は少ししかもらえません。
どんなにお腹がすいても、少ししか食べることができないのです。
あるとき、ふたりは夜中にこっそり家を抜け出しました。もっともっと大きな町へ向かったのです。
歩道もあかりもない道を、まっくらな中ふたりはあるいていきます・・・しかしその後、ふたりにとって予想もしないことが起こってしまったのです。
新しい町で、たくましく生きる道を探すツソ。
そして、ツソを助けてくれた多くのひとびとと、その後の様子を描いた「実話」を元にした作品です。
わたしたちが生きている地球には、さまざまな環境のもと、一生懸命に毎日を生きている子どもたちが大勢います。
ツソをとおして、様々なことがらを思い、感じるでしょう。
生きていくって、どんなに大変でどんなに尊いか・・・しっかりと見つめたいお話です。
ちきゅうがウンチだらけにならないわけ
松岡たつひで作
2013年
福音館書店
1512円
動物たちが色々と描かれた表紙には、何やらポロポロと見えています・・
そう、ウンチ!
犬は、外で散歩をしているとき、ウンチをします。そして、そのウンチは飼い主が拾ってくれます。
でも、空を飛んでいる鳥のウンチは・・・誰が片付けるのでしょう?
他の動物たちは・・・どうしているのでしょう??
もしかして、ウンチ、したままなのかしら!?
じゃあ、ちょっと勉強してみよう!
いちばん大きな動物のウンチは・・・
逆に、小さな生き物のウンチは・・・ 驚くことばかりです!
飛んだり跳ねたり、ゆっくり歩いたり速く走ったり。
色々な生き物が地球には住んでいるけれど、ウンチの大きさも形も、そしてウンチのしかたも違うのです。
ふだんはあまり気にしない「ウンチ」の存在。でも、一番大事なウンチの「役割」・・・
かわいい視線からしっかり学べる、考える絵本です。
ビックリするお話がウ~ンとつまっている、多くを学べる作品です☆
ふたり
福田隆浩著
2013年
講談社
1404円
6年生の准は、おとなしくてどちらかというとあまり目立たない男の子です。
そして、転校生の小野さんは、なぜか女子たちに意地悪をされていました・・・。
あるとき、准はひょんなことから小野さんと二人きりになり、お互いのある共通点に気が付きました。
「好きな作家が同じ」
偶然の共通点から生まれた友情・・・同じ趣味を持つ仲間として、この日から二人だけの放課後が始まりました。
この本を書かれた作家の福田先生は、実際に特別支援学級の教師でもいらっしゃいます。
子どもたちの気持ち、態度、表情に渡るまで、事細かに描写しています。
男の子特有の友達関係、そして同様に存在する女の子特有の友達関係。また、それぞれの家族の関係など。
教師や親に見せない顔や、いじめの様子など・・・現役教師だからこそ、表現できることもあるのかもしれません。
男女の友情はどう進んでいくのか。
揺れ動く心情を見事に描いた、長めの児童文学作品です。
読み切るには多少時間がかかると思いますが、次第にぐいぐいと物語に引き込まれ、きっと読み終わる頃には爽快な気分となっていることでしょう。
二人の推理めいた展開や挑戦に、思い存分ハラハラドキドキしてください☆
マッチ箱日記
ポール・フライシュマン文
バグラム・イバトゥーリン絵
島式子 島玲子訳
2013年
BL出版
1728円
マッチ箱って知っているますか?
小さな箱の中に、火をつけるマッチがたくさん詰まっています。
それが、マッチ箱です。
でもね・・・ひいおじいちゃんのマッチ箱には、「宝物」がつまっていたのです・・・
ある日、私はひいおじいちゃんの家である箱を見つけました。
古い古い箱だったけど、中を開くと・・・マッチ箱がたくさん!
ひいおじいちゃんは、それを「日記」だといいました。
日記・・・?
日記は、ノートに書くものです。
箱が日記だなんて、ひいおじいちゃんおもしろいなあ・・・なんて思ったわたし。
でも、実は、ひいおじいちゃんは昔、文字を書いたり読んだりすることができなかったのです。
だからその時あったことを、思い出の物を、小さな「マッチ箱」のに入れていたのです!
この種は、なに?
これは、なに?
ひいおじいちゃんは、ひとつひとつ思い出を話し始めました。
小さなころに住んでいた国の事や、ひいおじいちゃんのお父さんのお話。
どんどん広がるひいおじいちゃんの見た景色、人、ぬくもり。
マッチ箱をとおして、ひ孫と振り返ったひいおじいちゃんの人生。
言葉よりも、多くの事を感じ取ることができる、ひいおじいちゃんの大切な日記です。
今の自分の宝物、そして今まで歩いてきた道にあった宝物。
読んだ後、大切なものをそっと手に取りたくなる、あたたかいおはなしです☆
茂木 亜希子 【絵本ナビゲーター・保育士・司会】
記事テーマ
何気なく手に取った絵本が、子どもの心をつかみ、大人の私たちの心をも揺さぶることがあります。読み語られる一冊一冊を通して、子どもが体験する世界は広がり、その体験をもとに想像力も豊かに育ってゆきます。昔から読み継がれてきた絵本、ユニークで不思議な絵本、心に響くあたたかい絵本、今読みたい旬の絵本など、愛される絵本を様々ご紹介していきます。