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まだ言葉というツールを使うことができない赤ちゃん。でも、しっかりと自分の意思を持って、相手に、心のうちを伝えようとしています。

あーあ、うーう、という喃語は、言葉を出すための練習期間。そして、それにうまく応えてあげていると、まるで会話のような時間を持てるのです。

あるママは、絵本を読み聞かせしたら「まるで壁にむかって話しているみたい・・・」と言いました。

赤ちゃんはうなずきながら聞いたり、会話をしながら本を楽しむことはできません。でも、しっかりと耳で目で、そして優しいママやパパ、兄姉や祖父母のぬくもりを感じながらそのひとときを楽しんでいます。

時には泣き、ぐずり、絵本を読む時間にはならないこともあるでしょう。でも、少しずつ少しずつ、時間を増やしていきましょう。

赤ちゃんとのとっておきの時間が、だんだんと流れるようになります。

絵本を読むきっかけは、いつでも、何歳からでもかまいません。

すべては、「そのお子さんに関わっている大人」が決めることなのです。

思い立ったら吉日！　絵本を通しての会話を、今日からぜひ楽しんでください。

０歳児からの絵本を選ぶ時のポイントは、鮮やかな色づかい、そして、言葉が少なくて単純な構成のものです。

世界的に知られているものでは、オランダの作家・ディック・ブルーナの絵本です。

「ちいさなうさこちゃん」

出版社：福音館書店　作・絵：ディック・ブルーナ　訳：いしいももこ　本体価格：７００円

代表作のミッフィーの絵本は、黒の輪郭に赤・黄・青・緑といったハッキリした色で構成されていて、「単純さの傑作」とも言われ、世界中で愛されています。

カラフルな色合いが赤ちゃんの目を引き、興味をそそるのです。

日本でいうと、「もこもこもこ」です。

「もこもこもこ」 出版社：文研出版　作：谷川俊太郎　絵：元永定正　本体価格　1300円

大人の私たちが読むと、一見何のことやらと感じるかもしれません。

しかし、単純な言葉に、大きく描かれた色味の美しい不思議な物体は、子どもの心をどんどんとつかんでゆきます。

私が読み語りをするうえで、こちらの絵本は生後半年の赤ちゃんから泣きやみ、必ずと言っていいほど釘付けになります。

そして、意思表示ができるころになると、必ず「もういっかいよんで」とリクエストをくれるようになります。

ほかの幼児にもいえますが、年齢に関係なく、読み聞かせの最初の頃はあまり長くない絵本から選んでください。

集中力は徐々についていくものですので、焦らなくても大丈夫！

ママ自身も絵本に入りこみ、心通うひとときを、ゆったりと楽しんでみてください。

もう10年も前のことになります。

すでに別の放送局に移っていた私ですが、長野局時代の先輩に会いに長野に行った時、ちょうど元永先生に会うことが出来ました。

すでにこの時８２歳の先生、その年を感じさせないしっかりした口調でとても素敵な先生でした。

先生の「もこ　もこ　もこ」を購入してサインをして頂いたとき、先生はすぐに一番外側の表紙を取って

「表紙はすぐに取るんだよ。しまっちゃだめだよ、将来こどもが生まれたら、読んでね」

と言ってくれました。

サインは本に直に書かれており、先生のお言葉通り、カバーは使わず色々なところで読み聞かせに持っていっています。

もう端が切れたり、それを修復したりの繰り返しですが、私の思い出の一冊です。

３年前に、元永先生がお亡くなりになったと聞き、とても悲しい気持ちになりました。

しかし、先生の残した作品は、今も多くのこどもたちを惹きつけ、絵本の入り口からぐいっと中に引き込んでくれています。

お子さんがまだまだ赤ちゃんでも、いえ、赤ちゃんの頃から、この絵本をぜひ読んでみてください。

さいしょのさいしょの絵本の一歩に、ぴったりの作品です。