前々回、前回と、「ママの仕事と扶養枠」についてお伝えしてきました。
・「130万円の壁」を越えずに、扶養枠内で働くママは、パパが会社員の場合、パパの被扶養者となるため、ママ自身では健康保険料・年金保険料は負担せずに済む
・平成28年には、この「壁」の金額が「130万円」⇒「106万円」に変更になる
というのは、前回までにお話した通りです。
再来年の、この「壁」の金額変更に伴って、「106万円の壁に縛られず、もっともっとお仕事をしたい!」「パパに何があるかわからないこのご時世、私もしっかりがっつり働きたい!」というママも多くなるはず。今回は、そんな時ママ自身の社会保険はどうなるのか、どうすればいいのか、お話ししたいと思います。
※なお、今回のお話については、「雇用保険」「健康保険」「厚生年金保険」の3つをまとめて、広い意味で「社会保険」と呼ぶことにします。
これまでお伝えした「106万円」とか「130万円」という基準は、あくまで「ママ自身」を軸に考えてきました。一方、お勤め先でママ自身が社会保険に加入するかどうかは、「ママのお勤め先での雇用契約時間」を軸に考えます。
お勤め先で雇用保険、健康保険、厚生年金保険に加入する基準は、現在は以下の通りです。(注:健康保険と厚生年金保険は、加入基準が同じです)
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★雇用保険:週20時間以上の雇用契約
★健康保険/厚生年金保険:正社員の3/4以上の雇用契約(例:正社員が1日8時間、週5日間、週の合計40時間働いている会社の場合は、ママの雇用契約が『週30時間』以上であれば、そのお勤め先で健康保険/厚生年金保険に加入できる)
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いくつかのケースを考えてみましょう。とあるスーパー(社会保険完備)のレジ係で働く、パートのママたちの比較です。
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Aさん:時給1,000円、1日5時間、週3日間、週の雇用契約時間15時間
Bさん:時給1,000円、1日6時間、週4日間、週の雇用契約時間24時間
Cさん:時給1,000円、1日5時間、週5日間、週の雇用契約時間25時間
Dさん:時給1,000円、1日6時間、週5日間、週の雇用契約時間30時間
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このとき、
Aさんは、雇用保険、健康保険/厚生年金保険とも基準を満たさないので、このスーパーでは社会保険に加入しません。
Bさん・Cさん、雇用保険の基準は満たすので加入します。健康保険/厚生年金保険の基準は満たさないので加入しません。
Dさんは、雇用保険、健康保険/厚生年金保険とも基準を満たすため、このスーパーで社会保険に加入します。
この例で、「1年間=52週」として考え、収支を見ていきましょう。
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Aさん:時給1,000(円)×15(時間)×52(週)=78万円
Bさん:時給1,000(円)×24(時間)×52(週)=124.8万円
Cさん:時給1,000(円)×25(時間)×52(週)=130万円
Dさん:時給1,000(円)×30(時間)×52(週)=156万円
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このとき、
Aさんは、年収78万円は、「103万円の壁」を越えていないので、パパの扶養に入れます。
Bさんは、年収124.8万円は、「103万円の壁」は超えていますが、「130万円の壁」は越えていないので、パパの税法上の扶養ではなくなりますが、健康保険/厚生年金保険は、パパの扶養に入れます。また雇用保険料は年間で約6,000円。差引きの手取りは、約124万円です。
Cさんは、年収130万円は、「103万円の壁」「130万円の壁」とも越えていますので、パパの扶養に入れません。またこのスーパーでの健康保険/厚生年金保険の加入基準も満たしませんので、ママ自身で国民健康保険/国民年金に加入が必要です。雇用保険料は年間で約6,500円、国民健康保険料は年間で約7万円、国民年金保険料は年間で18万円。差引きの手取りは、約104万円です。
Dさんは、年収156万円は、「103万円の壁」「130万円の壁」とも越えていますので、パパの扶養に入れません。社会保険はこのスーパーで加入します。雇用保険料は年間で約7,800円、健康保険料は年間で約8万円、厚生年金保険料は年間で14万円。差引きの手取りは、約133万円です。
注)この試算結果は、平成26年7月現在の「千葉県・協会けんぽ」「国民年金保険」「厚生年金保険」の料率によります。また国民健康保険料は、世帯収入・お住まいの自治体などにより異なりますのでご了承下さい。
比較した結果、Aさん:78万円 Bさん:124万円 Cさん:104万円 Dさん:133万円 となりました。
BさんとCさんは、週の雇用契約時間が1時間しか違わないのに、年間の手取り額でみると随分違いますね。これは「130万円の壁」の差なのです。Cさんは、「ママ自身」の収入の軸ではパパの扶養に入れず、また「ママのお勤め先の雇用契約時間」の基準も満たせないため、社会保険加入、という点を考えると、いわば、ちょうど「制度のすきま」に落ちてしまった形となるわけです。
ただし、再来年「106万円の壁」が始動すると、Bさんもこのスーパーで社会保険に加入が必要になります。この場合、健康保険料が年間約6万円、厚生年金保険料が年間約10万円かかり、Bさんの手取り額は一気に約108万円になります。
ちなみにCさんもスーパーで社会保険に加入することになり、Cさんの手取り額は約112万円となります。
「損益分岐点」は、今回お話しした「社会保険料」の観点とは別に、パパの扶養控除や、ママの所得税も絡むので、非常に難しいところです。一般的には160万円くらいでしょうか。
ただし、何度も言うように、再来年には「106万円の壁」が始動します。そうなれば損益分岐点はもう少し下がるはず。ぜひあなた自身にとっての「ベスト」を模索してみて下さい。
具体的な金額の試算でわからないことがあれば、税理士、社会保険労務士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家にお尋ねになってみて下さいね。
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神谷 綾 【社会保険労務士】
記事テーマ
「社会保険」や「年金」っていうと、なんとなく難しいことのよう…。でも実は、就職や退職、妊娠出産、病気やケガなんていう、様々なライフイベントごとに、私たちをいろいろ助けてくれるんです。もらえるお金。やっておくべき手続。知ってると、ちょっとトクするマメ知識。そんな「社会保険制度」について、ママの目線からわかりやすくお伝えします。