前回、「扶養枠」には「103万円」と「130万円」の壁が2種類あり、
★「103万円の壁」は所得税の計算がどうなるか
★「130万円の壁」は社会保険がどうなるか
に影響する、とお伝えしました。
では、この「103万円」や「130万円」って、いつからいつまでの分をカウントするんでしょうか?
正解は、「103万円」も「130万円」も、原則として「その年の1月1日~12月末日」までの分でカウントします。
ただし、途中でお仕事を辞めて、パパの扶養に入るつもり、という方は注意が必要です。
収入のカウントの仕方が、「103万円」と「130万円」の壁で、それぞれ異なるからです。
「103万円」の方は、仕事を続けていても辞めていても、他の仕事に転職していたとしても、その年の「1月1日~12月末日」の収入を累計してカウントしますが、
「130万円」の方は、お仕事を辞めたら、累計したカウントがリセットされます。
例えば、ある年の11月に退職したママが、前の勤務先での収入が、その年の1月から数えると200万円だった、とします。
そうすると、既に退職の時点で「103万円の壁」は越えてしまっているので、この年については、ママはパパの所得税法上の扶養家族にはなれません。パパもママも、それぞれに所得税の負担が必要です。
ですがこの場合、「130万円の壁」、すなわち社会保険については、それまでの収入「200万円」をリセットして考えることができます。
「これまでどうだったか」ではなく、「これからどうするのか」で考えればよいのです。
他の仕事に転職するなどの予定がなく、ママが退職後、その年のうちに収入が130万円以上になる見込みがなければ、その年の退職時点までの収入が「200万円」だったとしても、「130万円の壁」は越えていない、ということになります。すなわち、ママは退職時点から、パパの会社の健康保険・厚生年金保険の扶養に入ることができるでしょう。
これ、実は勘違いされてる方が多いポイントなんです。
がっつり働いていたママが、「子どもの出産を機に、短い時間で働ける仕事に転職した」または「専業主婦になることにした」なんていう時に、ママ自身で国民健康保険や国民年金に加入することになると、その負担は結構重いもの。扶養に入りたい、退職されたママはぜひ覚えておいて下さいね。
退職したママで、もう1点気をつけなくてはならないのが、いわゆる「失業保険」。
もし退職後に、雇用保険の「失業保険」を受けるのであれば、失業保険の日額が3,612円以上だと、その間はパパの会社の健康保険・厚生年金の扶養には入れません。(失業保険の支給が始まるまでの『待期期間』『給付制限期間』は、扶養に入れます)
この場合は、失業保険を受けている間、自身で国民健康保険料・国民年金保険料を納めなくてはなりませんが、お住まいの自治体によっては、「収入の減少」や、前職の退職理由(たとえば会社都合でリストラ、等)により、保険料の減免が受けられたりするところもあります。そのあたりは、お住いの自治体に個別に問合せてみて下さい。
以上、「扶養枠」についてお伝えしてきましたが、実は近い将来(平成28年10月)、「130万円の壁」は崩壊予定です。
正確にいうと、「130万円の壁」は「106万円の壁」に変更になります。
週20時間以上働き、月8万8千円以上(年間106万円以上)収入のある、1年以上雇用見込の方は、たとえパートであっても、みんな自前でその会社の健康保険・厚生年金保険に入らなくてはならなくなります。
これに伴い、パパの健康保険・厚生年金保険の扶養の認定基準も、ママの収入が「130万円未満」⇒「106万円未満」に変更になります。
当面は、社員数が500名以下の中小企業は対象外ですが、それも平成31年9月には撤廃予定です。
この法改正後は、扶養枠におさめるためには、週20時間以上労働はNGなので、週19時間程度の労働に抑える必要があります。
ただ、19時間って、結構短いです。この労働時間では雇用保険の加入条件も満たさないため、退職後に「失業保険」を受け取ることもできません。(雇用保険の加入条件は『週20時間以上』働く方です)
これを機に、扶養枠を気にせず、仕事で思いっきり自分のチカラを試してみる、のもいいかもしれませんね。
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神谷 綾 【社会保険労務士】
記事テーマ
「社会保険」や「年金」っていうと、なんとなく難しいことのよう…。でも実は、就職や退職、妊娠出産、病気やケガなんていう、様々なライフイベントごとに、私たちをいろいろ助けてくれるんです。もらえるお金。やっておくべき手続。知ってると、ちょっとトクするマメ知識。そんな「社会保険制度」について、ママの目線からわかりやすくお伝えします。