私たちは、どうしても固定観念として、保育園は保育、幼稚園は教育と思い込んでいます。そして、2015年4月から「子ども子育て新制度」が始まり、今お伝えした固定観念に、こども園は保育も教育も行うという文言も加わり、保護者が不安に感じるのは無理はないことと言えます。
さて、こんな時は【発想の転換】をしましょう。「教育」というと、イメージが狭まりますが、「学び」と捉えるとイメージが広がるのではないでしょうか。
保育園であれ、幼稚園であれ、こども園であれ、子どもは日々学んでいます。
そして、子どもならではの特徴である「遊び」の中から学んでいます。
具体的には
これらの力を身に付けるポイントとしては【子どもが楽しめること】が必要です。
つまり、楽しくなければ学びじゃない。子どもにとっては楽しい遊びじゃなければ学びじゃないともいえます。
そして未就学児(乳幼児期)特有の発達段階を踏まえることがとても重要です。この発達段階を踏まえたうえで、幼稚園教諭や保育士は、1年間の集団生活を見通し、働きかけを行います。
【子どもの発達段階をわかった人材が子どもに関わること】が大事なのです。つまるところ、子どもに教えようとするその領域で、指導者にあたる人材が過去にどんなキャリアや大会での成績があろうが、子どもの発達段階を知らない人材が、子どもの学びに関わっても効果はありません。若干、話はそれますが、そてゆえ私は子どもの発達を知らないものが行う早期教育は効果がないと考えています。
「子どもに関わったことがある」程度ではいけないのです。きちんと専門職として、子どもの発達段階を学んだものの関わりや働きかけが必要なのです。
長女が2歳児クラスにいた時のことです。担任保育士が「2歳時だからそろそろはさみの送りきりをしよう」と思ってといい、子どもひとりひとりに、はさみと、リボンのような大きさに切った折り紙、お皿を渡しました(写真上)。子どもたちは、集中して、だいたい1センチくらいに切ったそうです。その日のお迎え時、「お土産」と言われ、ビニル袋の中に、子どもの切った折り紙が入っていました(写真下)。
発達段階に応じた遊びだったので、その後も長女はよく家で、「なんか切るものちょうだい」と言っては、黙々と集中して、はさみで切っていました。
おそらく、保育園に通わず私が家でひとりで育てていれば、そういう発想を持たなかったと思います。それゆえ、このような働きかけはできなかったと言えます。
よく「保育園の子は発達が早い」といわれますが、その理由は大きく2つあります。
昨今、幼稚園では、先生が働きかけて、教材等を用いて、ひらがな・カタカナを教えることが多いと聞きます。一方、保育園は、卒園までに、自分の名前が読めて、書ける程度を目指すことが多いと聞きます。
そうすると、あまりにも両者のギャップが大きいため、幼稚園の保護者は安心し、保育園の保護者は不安に感じることと思います。しかし、安心してください。
【正常発達であれば自然と文字に関心がでてくる】ものです。
絵本を読んでもらっていて、「あっ、ママの『ま』だ」など、ストーリーを「聞く」だけから、絵本の中にある「文字に関心を持つ」ようになります。
それゆえ、「あいうえおの『あ』を書きましょう」などと教える必要はないと考えます。
逆に言うと、大人がリードして教えると「そうじゃないでしょ。この字はこういう書き順で書くのよ」など、叱ることにもつながり、子どもは楽しく学べないでしょう。
ちなみにうちの長女は1歳児クラスのおわりから、先生が自分の絵や作品に、自分の名前を毎回書いてくれることから、いつの間にか、とんでもない(笑)書き順で、自分の下の名前を書けるようになりました。しかし、1歳児クラスの発達段階では、文字という認識ではなく、形という認識です。
しかし、その後の成長に伴い、絵本の読み聞かせをする中で、この文字は、自分の名前の文字だとわかったり、知ろうとしたりしました。まさに長女は発達段階に応じた学びをしていたのです。
大事なことは、以下の2点です。
①発達段階に応じて、適切なタイミングで大人は働きかけること
②子どもが楽しい・やりたいという時が「学び時」であり「伸び時」であること
早期教育に力を入れている幼稚園の年長さんは、すでに九九が言える子もいます。一見、「すごい」と思いますが、きちんと九九を理解しているのでしょうか?
私は、そうではないと考えます。歌を覚える感覚で「ににんが、し。にさんが、ろく」と言っているだけだと思います。
つまり、数の概念や数の操作としては理解するには至っていないと考えます。
大人からすると、九九が言えるという結果から、九九を理解していると思いがちですが、そうではないでしょう。きちんと九九の概念を理解していないと、割り算で割る数・割られる数などでつまづく可能性もあるといえます。
基本的に小学校で学ぶことは、小学校で学べばいいと私は考えています。餅は餅屋です。小学校の教員は、その発達段階の子どもが理解できるような教え方を学んでいるのですから。
早期教育も然りです。「早めに取り組んでおくと、小学校入ってからが楽ですよ」など、保護者の不安を駆り立てて、顧客獲得を狙う業者は、果たして真の意味で、子どもの発達を理解しているのでしょうか? 私はとてもそうとは思えません。
行政の「保育園は保育、幼稚園は教育、こども園は保育も教育も行う」という文言に騙されない親の賢さも必要です。本当に子どもの発達段階を踏まえた専門職であれば、施設関係なく「教育も保育」もしています。
ただ、パート①で述べたとおり、施設によっては、指導者がリードする形での学びをよしとするか、子どもを主体とする学びをサポートすることをよしとするか等アプローチの方法が異なることはあるでしょう。
私たち保護者も、「果たしてそうなのか?」と一歩立ち止まって考えることが大事だと私は考えます。
では、今回の記事の6つのポイントを以下にまとめます。
子育てに、これだ!という正解はありません。臨床心理士である私も保護者として、日々迷います。しかし、迷った時こそ、一歩立ち止まって、自分自身や夫婦で感じ考えることが、大事だと考えます。
不安な時こそ、「本当にそうなのかな?」「本当に〇〇を習わせたほうがいいのかな?」等、色々な角度から検討して、現時点でのベストでなくていいので、ベターな答えがだせたらよいのではないでしょうか。
ひらきだ ゆき 【臨床心理士 精神保健福祉士】
記事テーマ
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