「子どもはほめて育てよう」と世間ではよく言いますが、意外と難しいのではないでしょうか?いいところを見つけてそれを伝えたいと親なら誰しもが思います。しかし、ついつい危ないことやだめなことがあると、注意したり、叱ったりしてしまいます。
私自身、カウンセラーとして多くの保護者から、「ほめるってどういうことですか?」「ほめるって難しいんですけど」という相談を受けます。多くの方がほめる≠おだてるということはご存知だと思います。
しかし改めて、ほめるとはどういうことかと考えると難しいものでしょう。
私は、上記の疑問を投げかけてくれた保護者の方にこのようにお伝えしています。
「ほめるとは、認めたり、安心させたりする言葉かけであり、心のエネルギーがわく言葉と理解するとどうでしょうか? 例えば、ご自身におきかえると、過去にどんな言葉をかけらえたときに、うんと心にエネルギーがわきましたか?」
このようにお伝えすると、みなさん最近の出来事やご自身が子ども時代のことを思い出し、すでに持っているほめ言葉のレパートリーに気づかれたり、「認めたり、安心させる言葉と理解すれば、そういう声かけはできそう」と身近に感じられたりします。
ほめると考えると難しいですが、ほめ言葉=認める・安心する言葉であり、それは、心のエネルギーがわく言葉と理解すると、ご自身の中にどのような引き出しがあるか気づきやすいのではないでしょうか?
【ほめ言葉=認める・安心する言葉=心のエネルギーがわく言葉】と理解していただいたところで、ご自身のほめ言葉の引き出しはどれくらいありますか? つまりどれくらいのほめ言葉のボキャブラリーをお持ちですか?
「えらいね」「頑張ってるね」「強いね」「いい子だね」「お利口さんだね」などいくつかはでてきますが、10個20個それ以上でてきますか?
逆に人をけなす言葉はどうですか? 「むかつく」「きらい」「うざい」「うるさい」「面倒な人」「えらそう」「きもい」「だめだね」「できない人」「うっとうしい」など色々たくさんでてきますよね。
実は、【人は他者を批判するボキャブラリーはたくさんあるのに、他者をほめるボキャブラリーは意外と少ない】のです。ゆえに【自覚的に増やすことが必要】です。
自覚的に、ほめ言葉のボキャブラリーを増やすには、まずは、振り返りからやってみましょう。ご自身のことを振り返ってどんな言葉をかけられた時にうんと心のエネルギーがわきますか? わきましたか?
例えば、私はパパに「いつもありがとう」「いつもおいしいごはんありがとね」「ママがいないと我が家はまわらないね」という言葉をかけてもらったときに、うんと心のエネルギーがわきました。
と同時に、自分の心にエネルギーがわいた言葉は、きっと子どもをはじめ家族やほかの人の心のエネルギーを補給する言葉だと理解しました。
当たり前のことですが、【自分の心のエネルギーを補給した言葉は、人の心のエネルギーを補給する言葉でもある】のです。
このように自分の心のエネルギーが補給された体験を振り返ると、少しボキャブラリーが増えてきそうですね? 実は、心のエネルギーがわく言葉はプロの卵でも難しいのです。私が非常勤講師をしている帝京平成大学助産別科の助産師の卵である学生に、毎年「親と子を元気にする101の言葉」というポスターを、5人程度のグループで作成する授業をしています。
学生からも「先生、ほめるってどういうこと?」と質問が出たり、5人グループだと、一人20個程度考えなければいけないため、「友だちと同じ言葉だった」「(15個程度は考えたが)もう限界」なんていう言葉がでてきたりします。しかし、なんとか頑張り完成します。5グループの言葉を合算すると、505個の親と子を元気にする言葉ができます! すると、たくさんの心のエネルギーがわく言葉を学べます。
ボキャブラリーが少ないなら【学べばいい】のです。
ママ友や身近な人がすてきな心のエネルギーがわく言葉を発していたら、そこから学びましょう。そして、ご自身の引き出しをより豊かなものにしていただきたいと思います。大学生が作った101の言葉のポスター写真をのせます。その中で、いいなと思う言葉があれば、【そこから学び、ご自身の引き出しの中に取り入れて】ください。
これは恩師である早稲田大学人間科学学術院の教授・菅野純先生が指導されたゼミ生が作成したポスターです。タイトルは「子供に捧げる101のほめ言葉」です。早稲田大学生200人にどのような言葉でほめられて育ったかをアンケートし、その結果をもとに101個の言葉があります。「大好き」「大丈夫」「うちの子でよかった」などの言葉があります。詳しくは、<子どものこころを育てる「ひとこと」探し 菅野 純 著 ほんの森出版>の93ページから99ページにのっています。
私はこのポスターに感銘をうけました。そこで、自分が大学で講義をするときに、こういうポスターを学生と一緒に作ろうと決めました。
これは帝京平成大学助産別科の学生の「親と子を元気にする101の言葉」のポスターです。助産師学生が実習先で出会うママやパパや赤ちゃんを元気にする言葉という趣旨で作成しました。「笑顔がママにそっくりですね」「パパ優しいですね」「お空から会いにきたよ」などの言葉があります。
こちらも帝京平成大学助産別科の違うグループのポスターです。言葉のシャワーをイメージして作成したようです。「やる気が十分に伝わってきます」「お父さんのマッサージとても上手ですね」「赤ちゃんはママの子で幸せですね」などの言葉があります。
こちらも帝京平成大学助産別科の学生が作成したポスターです。101の言葉の風船を家族が持っているイメージで仕上げています。「完璧な母親なんていません」「うまれてきてくれてありがとう」「パパがママは毎日何から何までやってくれると言ってましたヨ」などの言葉があります。
今回のポイントは4つです。
①ほめるとは難しいことである
⇒【ほめ言葉=認める・安心する言葉=心のエネルギーがわく言葉】と理解する
②人は他者を批判するボキャブラリーはたくさんあるのに、他者をほめるボキャブラリーは意外と少ない
⇒自覚的に増やすことが必要
③<自覚的に増やす方法その1>自分が心のエネルギーがわいた言葉を振り返る
⇒自分の心のエネルギーを補給した言葉は、人の心のエネルギーを補給する言葉でもある
④<自覚的に増やす方法その2>学び、自分の中にとりいれる
ひらきだ ゆき 【臨床心理士 精神保健福祉士】
記事テーマ
初めてのお産・子育てって不安ですよね?でも大丈夫。ママが主体的であれば、赤ちゃんも力を合わせママとお産を頑張ってくれます。初めての母子での共同作業のスタートが主体的であれば、その後の育児もとまどうことはあっても、そのママらしい力が発揮でき、赤ちゃんも自己発揮できます。そのお手伝いを、カウンセラーの視点から楽しく具体的にさせて頂きます!