今年も春がやってきました。爽やかな春風にのって漂ってくる花の香りに誘われて、忙しく動き回っている虫や鳥たちと同じように、春は私たちも心躍る季節。中でも特に楽しみなのは桜の花便り。桜の開花予報が発表されて、桜前線が南北に細長い日本列島を横切り始めると、ワクワクする気持ちがさらに高まります。天気予報を眺めながらお花見の計画を立てるのは本当に楽しいものですが、小さなお子さまと一緒にのんびり、ゆっくりお花見するのは無理かな…と思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。そんな方にお勧めなのは「花を愛でるお花見」。今年は少し穏やかな気持ちでお花見を楽しんでみませんか?
日本の国花の1つである桜が、初めて日本の書物に登場したのは『古事記』だそう。コノハナサクヤヒメという女神さまが、富士山から桜の種を蒔いたのだそうです。その女神さまの名前の「サクヤ」から「さくら」となったのだと言われています。日本人がもっとも愛してやまない花と言われている桜を私が強く意識したのは、海外で家族と暮らし始めた頃のこと。暮らしていたウィーンには日本から贈られた1000本の桜が植えられている場所があり、花咲く頃になると家族みんなで出かけたり、日本にルーツを持つ友人たちと桜の木の下でピクニックをしたものです。もちろんウィーンでは開花予報のお知らせはありませんから、ちょうど見頃の桜に出会えることもあれば早過ぎることもありました。けれど、膨らみかけたつぼみを眺めながら花が満開になった時の姿を思い浮かべ、集った人たちと桜の木を見上げながら過ごす時、1年が無事に巡ってくれたことへの感謝で気持ちがとても穏やかになっているのを感じたものです。(写真はウィーンで見た桜の木)
このコラムを読んで下さる頃、皆さんの周りの桜はどんな様子になっているのでしょう? 七分咲き? 満開? 散りはじめ? それともつぼみがぷっくりと膨らみ始めた頃でしょうか?
今年のお花見は花に心を注いでみませんか? 美味しい食べ物やお喋りはお花見の楽しさをさらに増してくれるものなのですが、お花見弁当を作らなくても、レジャーシートを広げてゆっくりと腰を下ろさなくても、花と向き合うことこそがお花見。咲いている花を見て、ただ純粋に花を心で感じましょう。お子さまとお散歩しながら花を眺めるだけでもお花見。桜の近くでうーんと深呼吸をして、花びらの形や花の色・香りを楽しめたら、なお素敵ですね。花の終わりの頃には、散った花びらを集めて花吹雪ごっこを楽しむのも楽しそう。その日の桜の姿はその日だけ。一期一会の桜とのひとときが、皆さんの心に穏やかな春を運んで来てくれますように。
● 参考文献 ●
・『三省堂 年中行事 事典』 田中 宣一 (編集), 宮田 登 (編集) 三省堂 1999年8月
・『ニッポンの季節と暮らしを彩る花の文化史 花の七十二候』 環境デザイン研究所編 誠文堂新光社 2013年
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西野 佳衣子 【花育士・フラワースタイリスト】
記事テーマ
花に触れている時の子どもたちは、瞳がキラキラしていて穏やかで優しい笑顔…本当に愛らしいのです。花はみんなを笑顔にしてくれます。家族の笑顔があふれるよう、気軽に花を暮らしの中に取り入れてみましょう!親子で過ごすひとときを花と一緒に楽しむため、日本&海外の花行事、季節の旬な花選び、小さなお子さまとも楽しめるアレンジなどもお伝えしていきます。