花育クラスで大切にしていることの1つに「花に触れる(ふれる)」ということがあります。
花は眺めて愛でるこ ともできますし、香りを嗅いで楽しむこともできます。なかでも花に触れてみることは、子どもたちにとって心躍るもの。触れると感じられる花びらの温度や湿 り具合、手ざわりや固さなどが小さな指先を通ると、気づきと発見と感動となって、あっという間に身体のすみずみまで沁みわたっていく…。それはほんの小さ な経験に過ぎないけれど、そこからつながっている世界はどんなに広がっていくことでしょう。花に触れて感じたことが、子どもたちの記憶の引き出しに入り、 誰かにそのことを話したり、次に花に触れた時には前の記憶と比べたりする…想像しただけで、私までワクワクしてしまいます!
ではどんな花に触れてみましょうか? 色の美しい花? それとも香りのよいもの?
例えば見た目も面白い、こんなゆかいな花たちはいかがですか? 花育クラスで子どもたちに人気の花をご紹介しましょう。
●お口をパクパク。。金魚草
ぷっくりとした小ぶりな花房がたくさん!その1つ1つをよく見てみると…あれ?なんだか金魚に似ていませんか?花びらをそっと指先でつまんで、金魚の口に見立ててパクパクと動かしてやると…まるで金魚の口がパクパクしているみたいで楽しいですよ。
●変身名人ポピー
ポピーの呼び名は、他にも芥子(けし)、コクリコ、虞美人草など色々ありますね。く ねくねとうねるような細い茎には、細かな短い毛がいっぱい生えています。茎の先には、これまたなんとも不思議なキウイの赤ちゃん(?)みたいなつぼみ。そ れがポンとはじけて花が咲くのです。つぼみからなかなか出てこない花びらがあれば、そっとお手伝い。包んでいる皮をゆっくり優しく開いてあげると、うすく ひらひらした花が顔をのぞかせますよ。
(咲く前)
(咲いた様子)
ところで、実際にクラスをする中で気付いたのは、「どうやって優しく触るの?」という子どもたちもいるということです。私たちの身近にあるのは、家の庭、ベランダのプランターや植木鉢、それから散歩途中の花壇や公園などで育っている花々。そんな花たちにお子さまが興味を持って触れようと手をのばした 時、すかさず、「触っちゃダメよ」と声をかけてしまうことってありませんか?花に向かってぐーんと伸ばした手を見ると、「もしかして、力いっぱい触って ぐちゃぐちゃにしてしまうのではないかしら?」と心配になりますよね。そういう気持ち、とてもよく分かります!なぜって、私自身、幼いころの息子たちに言ってしまったことが多々あるからなのです。でも本当は、心配な気持ちで先回りして、子どもたちの花への興味をストップしてしまわずに、私たち大人が ちょっとしたヒントを与えてあげればよいのだということ。「花びらはね、鳥や虫の羽をなでるみたいに、そっと優しくなでてあげようね」「葉っぱや茎を触る 時は、トゲトゲがないか確かめてから、ゆっくり手を動かしてみようね。トゲトゲは大事な花を守るためなのよ」「めしべとおしべは花にとって大切なところな んだよ」と、花のどこをどんな風に触ればいいのかを伝えると、子どもたちはとても丁寧に、そして優しく花に触れることができるようになるのです。そうなれば、きっともっと花のことに興味を持つでしょうし、好きになっていくのではないかしら?と思います。
さぁ、これで花に触れる準備はOKですね!
西野 佳衣子 【花育士・フラワースタイリスト】
記事テーマ
花に触れている時の子どもたちは、瞳がキラキラしていて穏やかで優しい笑顔…本当に愛らしいのです。花はみんなを笑顔にしてくれます。家族の笑顔があふれるよう、気軽に花を暮らしの中に取り入れてみましょう!親子で過ごすひとときを花と一緒に楽しむため、日本&海外の花行事、季節の旬な花選び、小さなお子さまとも楽しめるアレンジなどもお伝えしていきます。