9月。暦の上で秋を迎えると雲の形が変わり、空もいつもより澄んで高くなったような気がします。そんな頃、花屋さんには秋の花や実がたくさん並び始めます。吾亦紅(われもこう)、コスモス、紅葵(べにあおい)などなど。花屋さんに並ぶ秋の花の中には「秋の七草」もあるのですが、みなさんは7つすべてご存知でしょうか?
女郎花(おみなえし)、萩(はぎ)、桔梗(ききょう)、葛(くず)、藤袴(ふじばかま)、尾花(おばな/すすきのこと)、それに撫子(なでしこ)。これが「秋の七草」です。「春の七草」とは違い、秋のほうはどれも眺めて楽しむ花の咲くものばかり。「あ、知ってる!」というものから、「へぇ、そうなのね」というものまでいろいろありますね。この「秋の七草」が花の精になって出てくる絵本があるのでご紹介しましょう。
『はないくさ』
小林 保治文 平山英三絵 福音館書店
こどものとも(236号) 1975年11月号
(絵本の表紙画像は福音館書店HPよりお借りいたしました)
江戸の頃、白い菊の花が欲しくて野原へ出かけた子どもたち。白い菊ばかりを集めることに腹を立てた女郎花(おみなえし)と秋の花の精たちがあらわれて、菊の花をぜんぶ散らしてしまおうとするのですが、そこへ白菊の翁(白菊の精のおじいさん)があらわれ、秋の花の精たちにこう話しかけました。
まちのこの もとめる はなは きくのはな
あらそい やめよ おみなえし
くるしみあれ ひとを くるしめるものたち
よろこびあれ ひとのしあわせを よろこぶものたち
挿し絵の花の精たちは手にそれぞれ花を持ち、キッと厳しい顔つき。決して可愛らしい絵本ではないのですが、いつしかお気に入りになりました。とりわけ花の精たちの持つ1輪の花と着物に描かれている花の柄を見るのが好きで、読み聞かせてもらう以外にも、自分で絵本をひっぱりだしてきて、「おみなえしって怖い花だなぁ」「お花もこんな風にケンカするのだなぁ」とドキドキと想像しながら楽しんだものです。そして、大きくなって初めて女郎花の花を見た時は「これが、あの(=怖い女の人)女郎花なんだ!」と印象的だったのを覚えています。
暦の上では秋ですが、まだまだ陽射しの厳しい日もある9月。おうちに花を飾る気分にならない方もいらっしゃるでしょう。そんな時はどうぞお子さまとご一緒に「秋の七草探し」を楽しんでみてください。この『はないくさ』に限らず、図鑑や絵本、庭や公園、それにお花屋さんで、きっと見つかるはずですよ。
○絵本『はないくさ』は、現在、廃刊となっております。ぜひ公共の図書館、または古書店でお尋ねくださいませ。
○主宰する花のクラス ロワゾ・ブルでは秋から冬にかけて、いくつかのレッスン・イベントを計画しています。ぜひHPをチェックしてください!
ロワゾ・ブルHP → http://haneyasume.petit.cc/
西野 佳衣子 【花育士・フラワースタイリスト】
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花に触れている時の子どもたちは、瞳がキラキラしていて穏やかで優しい笑顔…本当に愛らしいのです。花はみんなを笑顔にしてくれます。家族の笑顔があふれるよう、気軽に花を暮らしの中に取り入れてみましょう!親子で過ごすひとときを花と一緒に楽しむため、日本&海外の花行事、季節の旬な花選び、小さなお子さまとも楽しめるアレンジなどもお伝えしていきます。