7月。梅雨が明けると一気に空は青さを増し、雲はむくむくと膨らみます。太陽は眩しく照りつけて、木々の緑が一段と濃く鮮やかになったように感じられますね。
さて、皆さんは「夏の花」と聞くと、どの花を思い浮かべますか? 花育クラスの子どもたちに尋ねると、迷わず声をそろえて「ひまわり!」と答えてくれます。子どもたちはひまわりが大好き。ひまわりは夏の花の代表選手の1つです。けれど周りを見てみると、他にもさまざまな花の姿を見つけることができますね。
日本には昔々、中国から伝わった暦があります。それはとても日本の季節に沿ったもので、「二十四節気(にじゅうしせっき)」と呼ばれています。これをさらに細かく分けて、当時の庶民の暮らしに沿うように作られたのが「七十二候(しちじゅうにこう)」。そこには自然気象、虫、草花、動物などについての短い文が添えられています。今日はその中から、現代の暦と照らし合わせながら、夏に咲く花たちをいくつかご紹介しましょう。きっと皆さんもよくご存じの花たちではないかしら? 短文もちょっとお洒落な感じなので書き添えますね。
●ザクロ
「石榴花裂(ざくろのはなさける)」
実のなるザクロと花が中心のハナザクロがある。アジアでは、果実の中の種がたくさんあることから、子孫繁栄・秋の実りを願うシンボル。
●蓮
「蓮花朝開(はすのはなあさひらく)」
「蜂の巣」=蓮。実の入った部分に穴がたくさん開いていて、それが蜂の巣に似ているから。
花は朝開き、午後3時頃にしぼむ。それを3日間くりかえして、4日目には花びらが散ってしまうそう。
●睡蓮
「睡蓮艶絶(すいれんはなはだつややか)」
朝に花開き、夕方にしぼむ。睡蓮という名は、日本産のヒツジグサにつけられたもの。
池の中で育ち、花は蓮に似ているが、蓮との違いは葉や花が水面に浮かんだままだということ。
●百合
「百合暗馨(ゆりくらやみにかおる)」
夏に咲く大型の花は日本特産。1年に1つずつ花を増やすといわれ、長く育っている株はたくさんの花をつけるそう。百合は世界中に咲くが、なかでも日本は種類も多く、ユリ大国。
●アサガオ
「朝顔咲誇(あさがおさきほこる)」
「朝に咲く美しい花」という意味。英名もモーニング・グローリー。奈良時代に中国から渡ってきた花。
*他にも、ノウゼンカズラ、芙蓉、葛の花などがあります。
先日、フラワースタイリスト 平井かずみさんのワークショップに参加しました。そこで出会った「梅雨時に似合う日本の花」を手に取りながら、「日本の夏に合う花ってなんだろう?」と考えたところから、このコラムのテーマである「日本の夏の花」のことを調べてみることになりました。
それと同時に思い出したのが、フランスの画家ゴッホの『ひまわり』。あの絵に描かれているひまわりは、私たちが普段よく見かけるひまわりよりも、花びらの色がしっかりと濃く色鮮やかだと思いませんか?
ある夏のフランス、私はゴッホのひまわりに出会いました。鉄道の車窓から外を見ていると、突然、目の前に現れた一面のひまわり畑。そこには、ゴッホの描いたものとそっくりなひまわりがびっしりと並んでいて、「あぁ、これが、あの『ひまわり』なのね!」と、まるでなぞなぞが解けた時のような気持ちになった思い出があります。あの絵のひまわりは、この土地にぴったりな「フランスのひまわり」なのだ、と。
これを日本に置き換えて考えてみると、日本には日本の風土・季節に合った花があるということ。旬の食べ物を身体に取り入れるのと同じように、日本の季節に沿った花を愛でること、それはとても自然なことで、私たちの暮らしや心にしっくりとなじむのではないでしょうか?
暑くなってくると少し大変になってくるお子さまと一緒の買い物や散歩、公園での遊びの時間。その途中にちょっと辺りをひと眺めして、日本の夏に合う花を探してみてくださいね。花を探し、愛でるひとときが、皆さんにホッとひと息のリラックスをもたらしますように♪
参考文献
・『ニッポンの季節と暮らしを彩る花の文化史 花の七十二候』 環境デザイン研究所編 誠文堂新光社 2013年
・『三省堂 年中行事事典』 田中宣一・宮田 登 編 三省堂 1999年
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・ロワゾ・ブル 夏休み 花育キッズクラスのお知らせです。
新学期が始まる前に、花に触れてパワーチャージしませんか?
2014年8月28日(木)AM10:00~ 神戸市中央区にある生田文化会館にて。
詳しくはHP内でお知らせいたします。ぜひご参加ください!
HPアドレス → http://haneyasume.petit.cc/
西野 佳衣子 【花育士・フラワースタイリスト】
記事テーマ
花に触れている時の子どもたちは、瞳がキラキラしていて穏やかで優しい笑顔…本当に愛らしいのです。花はみんなを笑顔にしてくれます。家族の笑顔があふれるよう、気軽に花を暮らしの中に取り入れてみましょう!親子で過ごすひとときを花と一緒に楽しむため、日本&海外の花行事、季節の旬な花選び、小さなお子さまとも楽しめるアレンジなどもお伝えしていきます。