前回のテーマは、もっと気軽にお部屋の中で生花を楽しんで頂けたらなと選びましたが、ふと、普段は花を飾らないのに、急に「気軽に飾ってみましょう!」なんて言われても、逆に難しいのではないかしら?と思いました。
それならば、日本や海外の行事ごとを、暮らしに花を取り入れるきっかけにして、「おうち花育」を楽しんでみませんか?
2月といえば節分、そして立春。
節分には「鬼は外~!福は内~!」と炒った大豆を撒きますよね。今年はそれにプラスして、柊(ひいらぎ)を飾ってみませんか? 古来より「臭くて痛いもの」が苦手な鬼(邪気)を追いはらうため、柊の枝に焼いた鰯(いわし)の頭を刺して戸口に置く「やいかがし」(「焼き嗅がし」の意味)というものがありますが、柊だけでもグッと雰囲気が出ますよ。たとえば煎り豆を入れる升に柊の小枝をあしらったり、お子さまの描いた鬼のお面と一緒にディスプレイしてもステキ。「どうして柊を飾るの?」とお子さまに尋ねられたら、「実はね、これも鬼の苦手なものなのよ」とお話ししてあげてくださいね。
その翌日の立春。
暦の上では「春」になったことのささやかなお祝いを花とともに…ご自宅やおじいさま・おばあさまのおうちに庭木があるようなら、レンギョウ、梅、アセビなどをひと枝。他にも水仙、フリージア、ストック、スイートピー、ヒヤシンスなど、色がふんわり優しくて、瑞々しい香りの春の花をお部屋にどうぞ。「外はまだ寒いけれど、今日から暦の上では春なのよ」と、さりげない言葉がけも一緒に。こういう何気ない会話を子どもたちはとてもよく覚えていて、ちょっぴり得意げにお友だちに話している姿を見るのも、なんとも微笑ましいものですよね。
日本の行事は季節と密にかかわっているので、ほんのひと枝の木々や花から、行事と自然のものたちが深くかかわり合っていることを知ってもらう、よいきっかけになるのではないかしら?と思うのです。
2010年頃から、2月14日St.Valentine's Day(セントバレンタインデー)に「男性から女性へ花を贈りましょう!」というアクションが、花の小売店を中心にして始まっているのをご存知ですか? 日本では、女性から男性にチョコレートやプレゼントを贈るのが一般的になっていますが、世界の他の国では男性が花をプレゼントするのがポピュラー。以前、家族で住んでいたイギリスで、「お母さんとおばあちゃんに」と、真っ赤なバラのブーケを2つ作ってもらっている若い男の子をみかけたことがあります。ブーケを小脇に抱えてお店を後にする彼の姿を見て、「なんてお洒落なの!」と感心した思い出があります。
私の花育キッズクラスでも、2月はフラワーバレンタインがテーマ。男の子も女の子も「パパやママに『大好きだよ!』の気持ちをプレゼントしようね」 と声をかけると、それはそれは大切にアレンジしてくれます。お迎えにいらしたおうちの方がアレンジを受け取って喜んでくださる様子を見て、子どもたちはとっても幸せそうな表情をみせてくれます。花が「大好き!」の気持ちを伝えてくれるのです。恋人同士が愛を誓い合うのもロマンチックですけれど、いつも傍にい る家族に、普段はなかなか言葉で伝えるチャンスのない「大好きだよ。大切に思っているよ」の気持ちを、花の力を借りて、花に託して贈ってみてくださいね。 ブーケやアレンジメントでなくても、花1本だってステキな気持ちの贈りものです♪
(↑こちらは花育キッズクラスの生徒さんのアレンジです)
行事ごとやイベントをきっかけに花を飾ったり贈ったり…が楽しめるようになったら、今度は日々の暮らしの中の何でもないところに隠れている(!)「きっかけ」を探してみてください。そして、「他にもこんなのがありますよ」というのが見つかった方は、ぜひ私にも教えてくださいね。
● フラワーバレンタイン公式HP。
由来や全国でのイベント情報、男性にも嬉しい花贈りnaviもあります。
こちらからどうぞ → http://www.flower-valentine.com/
● 参考文献
・『三省堂 年中行事事典』 田中 宣一・宮田 登(編) 三省堂 1999
・『花の七十二候』 環境デザイン研究所 編集 誠文堂新光社 2013
西野 佳衣子 【花育士・フラワースタイリスト】
記事テーマ
花に触れている時の子どもたちは、瞳がキラキラしていて穏やかで優しい笑顔…本当に愛らしいのです。花はみんなを笑顔にしてくれます。家族の笑顔があふれるよう、気軽に花を暮らしの中に取り入れてみましょう!親子で過ごすひとときを花と一緒に楽しむため、日本&海外の花行事、季節の旬な花選び、小さなお子さまとも楽しめるアレンジなどもお伝えしていきます。