子育ての真っ最中は、せいいっぱい子どもに向き合い、ママとして、妻として、嫁として・・・日々、やることはてんこ盛り。仕事から離れて育児をしていると、家庭や子どものことを優先してやっていると、いつの間にか「私」は後回し。気付くと「このままでいいのかな・・・」と思うこともあるのではないでしょうか。
一見、働いている時の自分とはすっかり遠ざかってしまった気になりますが、子育てをしている(仕事を離れて産休、育休)に入っている時間は、実は「キャリア」の幅を広げる上でもチャンスがたくさんあるのです。
妊娠して、よく周りの先輩や友人に言われる言葉があります。「子どもが産まれたら時間がないよ・・・!」。 出産の経験がないと、なかなか実感値を持てませんが、 確かに、自分の身に自由がきくのは、産前ならではです。 この時期をどのように過ごすかは、今後仕事に復帰する上でもポイントになってきます。
ぜひ出産をする前に、キャリア計画を立て直してみてください。女性は「出産」というライフイベントを迎えると、働く上でも転換期を迎えます。今後、子どもを持った後、どの様に働きたいか? 働き方を変える方も、変わらないペースで働きたい方も。その準備が必要です。自分のビジョンを叶えるために、必要なサポートや学習があれば、この時期に当たっておきます。
子どもが産まれると、自分より優先して考える対象ができるため、キャリアについては後回しになりがちです。キャリアから見た時に、産休・育休期間にどの様な価値を持たせるか 自分なりのビジョンを持つことで、同じ子育てに費やす時間の意味合いも変わってきます。
あなたの立てたビジョンは、意識や行動を少しずつ変えていきます。少しずつでも、行動したことの積み重ねが、あなたに新たな価値を生み出します。その中でも、特に時間を多く使う勉強や体験は、産前に行っておくとスムーズです。
働いていると、一般的に多くの時間は職場で過ごします。職場や取引先、お客様など、仕事にまつわる方と接することが自然と多くなってきます。一方、子どもを通じた縁は、地域をはじめとして、今までのコミュニティでは出会わなかった方との新しい出会いを生み出します。
産前産後や育児期間に、ぜひ地域のイベントや子育てスペースをのぞいてみてください。自治体や産院のパパママ学級、同時期に産院で出産した仲間、児童館や育児イベントなど・・・。趣味の集まりから、ワーキングマザーのイベントまで。今では女性が子連れで参加できるコミュニティも増えてきました。仕事以外のつながりで出会った仲間とは、育児の困りごとを相談しあったり、自分だけでは気付かなかったちょっとしたコツを共有することもあります。
何より、家では子どもと2人になりがちな日常に、変化をもたらしてくれます。こうして働くときには出会いなかった、新たな仲間は、同じ年代の子どもを持っている親同士、共通の課題を一緒に乗り越えていく仲間にもなります。
私自身、出産をしてみた当初、日々の暮らしや街の造りは不自由なことにあふれていました。
子どもを連れて外出をすると、感じる街の不便さ。 横断歩道や歩道のちょっとした段差、すぐに変わってしまう信号、地下鉄の見上げる様な果てしない階段、バスの乗りづらさ・・・。出産前には気づかなかったことばかりです。子どもを持って、実際に不自由な体験をすると、今までに感じることのできなかった、不便さや暮らしにくさを感じることができます。
これが、お年寄りや、体の不自由な方だったら・・・、どれだけ不便さを感じているのでしょうか。
一方で、不自由な身になってみて初めて気づく、心遣いもあります。買い物をして、かごをレジから運んで頂いたり、簡単なものは袋に入れて渡してくれる、気遣いの感じられる売り場には好感を持ちますし、あと4~5年は行けないと半ば諦めていた映画では、子連れの親を対象に、音を抑え、館内証明が明るめに設定された時間帯を設けているところもありました。
子どもを持ったことで、今までに見ていた価値観が変わり、心遣いがある、安心してサービスを利用できる所を選択する様になりました。これらのことを仕事に置き換えてみると、実は出産や育児をして気づいた生活者目線を、今度はサービスの提供者として社会に還元できるチャンスもあるのではないでしょうか・・・!
昨年は「育休3年」という言葉に、長すぎて仕事の感覚が鈍くなる、仕事から遠ざかり過ぎてキャリアが逃げていく、という話題もありました。出産・育児を経験すると、採用のハードルが上がることも確かです。仕事のスピード感や、ブランクの間の業界の変化など、勘が鈍ることもあるでしょう。しかし、これは工夫と努力で乗り越えられないものではありません。
休んでいたから、仕事の戦力としては劣ってしまうという考えは、一面的な見方だと敢えて言いたいと思います。仕事に邁進していた時には見えなかった、新たな価値を忘れていませんか?おそらく、それを価値として周りに伝えられるのは、誰でもない自分です。自分で気付いていないものは、相手にもなかなか伝わりません。
仕事復帰に当たって、子育て期間中に得たこと、学習したことや気づきなど、新たに得たことや深堀りできたことを、仕事でどの様に還元していくか、思考してみてください。そして、是非実践していってほしいのです。
そのような女性が増えていくことで、周囲の見方も少しずつ変化して、女性の働き方にも新たなステージが出てくるのだと思います。
佐藤 若紗 【キャリアカウンセラー】
記事テーマ
子育て世代のママが出産を機に考える事が多い、「育児と仕事の両立」について、出産しても働きたいママが今後のキャリアを築いていくヒントをお届けします。 在宅勤務や時短などの多様な働き方から、使ってみたい便利サービス、ママ視点を活かした働き方など、知っておきたい仕事のあれこれから、保活やママ友づくりなど産後のリアルな体験までお伝えしていきます。