今年在宅ワークを始めて15年になるという株式会社キャリア・マムの山藤さん。それまでは通勤電車に揺られる理系会社員。在宅ワークを始めたきっかけは、子どもの送り迎えや、突然のけがや病気に左右されずに、自分の仕事を最後まで見届けたいという思いからでした。実は彼女、4人の子どもを育てているワーママでもあります。
「在宅ワークを始めてよかった事は、なんといっても子どもの傍にいてあげられること。 “ただいま” に対して “おかえり” を直接伝えられる。病気の時にもすぐにお迎えに行って、病院へ連れていってあげられる。どんなお友だちとどんな遊びをしているのか、どんな態度で宿題をしているのか(笑)もわかる。」
母として、必要な時に子どもの傍にいる。普通に会社勤めをしていると、したくてもできないことだったりします。山藤さんが実現しているのは、社会人としてお金もかせぐ。母も自分もどちらも諦めない働き方なのです。
「当初はテープ起こしや入力の単発の仕事からスタートしました。“自分にもできそう”ではなく“自分がやりたい”仕事を選ぶようにしていました。独学でWEB制作を学び、WEB制作部門マネージャーになりました。できる、できないは、やってみて初めてわかります。最初から “できない” と諦めずに、やりたい仕事をしてみることが大切。10年勉強しながら走り続けましたが、今はWEB制作を離れ、会社のイベントやモニターなどのマネージャーをしています。」
単発の仕事から始めながらも、なんと独学でWEB制作を学んだというパワフルな山藤さん。今や在宅ながら他の在宅ワーカーのマネジメントまでを行うまでになりました。順風満帆に見える在宅ワーカーとしてのキャリアも、現在に至るまでにいくつもの山を乗り越えてきました。
「とにかく最初はキツかったです。時間に関係なく、納品物ができるまで終わることができない。ある程度納品の目途がつかないと気持ちが落ち着かず、家事もおろそかになってしまい・・・」自宅で一人で働くと、時間をある程度自由に使える一方で、そこには自分自身で時間もタスクも管理する責任も伴う。ここには在宅ワークならではの課題も見えてきます。自分自身がどの程度の仕事量を引き受けられるかがわかってくると、タスクマネジメントも楽になってくるといいます。
また、在宅で仕事を続けていくコツは、「一人で仕事を進めていく中、モチベーションをどう保つかと、家族の理解が重要。」と山藤さん。家で働くということは、同じ場所に日常の生活も絡んでくる。家族と身近にいることができる安心感の一方で、どのように切り分けてメリハリをつけるかがポイントとなってきます。
「我が家は夫の両親と完全同居ですが、同居する際、義父母には“仕事をしている間は一切家事はしない”と伝えました。仕事場が家というスペースなだけだということを理解してほしいと。初めの頃はよく理解できていなかったらしく、部屋に入ってきて話しかけてくることもありましたが、ネット会議していたり、お客様と電話していたりしている姿を見て理解したようです。我が家では夫が一番難しかったかもしれません(苦笑) お正月に原稿とPCを持って夫の実家に帰省した時は、旦那と喧嘩になりました」
今はとても協力的!という旦那さま。理解してもらうコツは・・・
「夫が帰宅したらパソコンはしない。顔をみて “おかえりなさい” と言う。要は夫を大切にしている、という事を態度で示すのです。」 始めは苦い顔をしていても、家で仕事をする姿を間近に見て、仕事の成果に報酬がつくようになると、通勤などで家を空けるなどの影響もないなど、在宅ワークのよい点も理解して協力的になってくれたとのこと。
「子どもは小さい時からこの姿を見ているせいか、一番協力的です。電話がかかってくるとテレビの音量を下げたり、お友達を部屋の外に出したり、言わなくても動いてくれます。ただ、ネット会議だけは興味津々で寄ってきますが(笑)」
在宅ワークを15年経験してきた今、趣味の編みものにも時間を使っているという山藤さん。こちらも思わず食べたくなってしまうようなポップなお寿司の編みぐるみまで、見る方も楽しくなってくる素敵な作品を作られています。最近はなんと、講師としてお声がかかるまでに・・・!
キャリアについて考える。それは仕事だけにとどまりません。今回お話を伺った山藤さんも、編み物の趣味は20年ほどブランクを置いて温めていたそうです。フルタイムの会社員としての10年、在宅での15年、そして今後の10年・・・とキャリアを見つめた時、「今は小さい子どもも、かならず成長していく。その時に自分自身に残るものは何か?10年後に何か残るものを積み重ねていきたい・・・!」 との想いで編み物を再開されたとのこと。
自己実現やキャリアは何も仕事に限った話ではありません。趣味や家族、地域での活動etc・・・仕事にまつわるすべてがあなたのキャリアとなります。
仕事も家族も、そして趣味の世界も・・・全てを両立することは、けっして簡単ではありません。自己実現の裏には、多くのチャレンジと、チャレンジすることで築いてきた絶妙なタイムマネジメント、周囲の方たちへの配慮がありました。女性は多くの役割を抱えているといいますが、その多くの役割のバランスを取って、「家族も仕事も、自分の趣味も・・・」と実現することも不可能ではない! これが在宅ワークの1番の醍醐味なのかもしれません。「パソコンがあれば、いつまでも仕事ができてしまう環境ゆえに、自分自身で終了時間をちゃんと決めてパソコンを閉じる事が両立のコツです。在宅ワークとひとくちに言っても、職種はさまざまです。ポイントは “好き” かどうか。在宅は失敗しても一人、誰も慰めてくれません。めちゃくちゃ凹んで、もうやめたい!って思うことも多々あります。そんな時でも、 “好き”が残ればまた頑張ろうって思えるし、 “好き”だからこそやりがいも生まれてくる。これは、在宅に限ったことではないですけど。在宅ワークは、働き方の1つですから、向いているか向いていないかは、やってみて決めればいいと思います。がんばってください!」
佐藤 若紗 【キャリアカウンセラー】
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子育て世代のママが出産を機に考える事が多い、「育児と仕事の両立」について、出産しても働きたいママが今後のキャリアを築いていくヒントをお届けします。 在宅勤務や時短などの多様な働き方から、使ってみたい便利サービス、ママ視点を活かした働き方など、知っておきたい仕事のあれこれから、保活やママ友づくりなど産後のリアルな体験までお伝えしていきます。