平日の朝、会社の出勤時間に合わせて出社する。決まった時間には一斉に働き始め、勤務時間いっぱい職場で(または出先で)同僚やお客さまと顔を合わせながら働く。これは会社勤めをしているとごく当たり前の日常です。かくいう私も2年前に今の会社に出会うまでは、それが当たり前だと思っていました。
世の中に在宅ワークやテレワークという言葉が聞かれ始めたのはいつ頃からでしょう。ブロードバンド環境が整って10年近くがたち、スピードも増したIT環境のもと、働く場所を問わない働き方は加速しました。震災時の通勤困難対策や事業継続という面で在宅という働き方を企業も検討をし始めたことも記憶に新しい出来事です。また、家の外でもコワーキングスペースのように無線LANを使える場所が増え、コワーキングスペースやノマドワーカーなんて言葉も注目をあびました。
職場から離れて、また仕事をする場所を問わずに働くことができる、子育て世代の私たちにとっても魅力的に映る在宅ワークという働き方。言葉を聞いたことがあっても、一体どんな仕事があって、どの様に働き始めることができるのか、実際のところはあまり知られていません。
在宅ワークというと、初めに聞かれるのが 「それって内職のこと?」「どんな仕事?」 ということ。今回まずお伝えしたいのが、在宅ワークは 「内職とは別物」 ということです。この2つ、一見同じにようですが、手加工などの作業を自宅で行い、出来高の数に応じて報酬を受け取る 「内職」 に対して、 「在宅ワーク」 はパソコンなどのIT機器を活用して行う、在宅での仕事のことをいいます。
それでは、IT機器を使って一体どのような仕事をしているのでしょうか。在宅で働く方のアンケートをもとに主な仕事を見てみましょう。
◆(表1)
現在行っている在宅ワークの仕事は何ですか(MA、n=150)
(出典:厚生労働省「在宅就業者総合支援事業」在宅ワーカー150名を対象としたアンケート結果2012年実施)
最も人数の多かった「文章記事作成」には、広告メールの作成やWEBサイトのコラムを書く外注ライターの仕事などがあります。例えば、集合サイトに掲載されるお店のPR記事や広告メール作成などです。自身の専門の分野で書く方から分野を問わず幅広く書く方まで求められる経験レベルも様々です。
「データ入力」は仕事のイメージがしやすいですが、定型で決まった文章をパソコンで打つもので、仕事の難易度はけっして高くありません。その分仕事を得るための競争もはげしくなります。また、難易度が高くない一方で、生活者としての目線そのものを活かせる仕事として 「調査・マーケティング」 があります。 WEB上で行うものも増え、ポイントを対価としているものから本格的な調査レポートまで幅があります。日々のありのままの感じ方や意見が活かせるのは在宅ワーク初心者にとっては魅力でもあります。
アンケートで仕事をしている人の比率があまり高くない 「システム開発」 や 「デザイン」 の仕事は、調査以降クラウドソーシングの浸透も後押しして、現在は仕事量が増えていることが予想されます。以前、同業の会社で働いていたなど経験と実績が必要になってくる分野です。
その他にも通信教育の採点や経理事務の代行、編集制作、物の販売など、在宅ワークの仕事は多岐にわたります。ここでは主な仕事から 「在宅ワーク」にどの様な仕事があるのかをイメージしていただきましたが、在宅の仕事は分野が限られたものではありません。これからの市場の変化で新たな仕事が出てくる可能性は充分にあります。
在宅ワークの仕事について見てみましたが、それでは働き始められるにはどうしたらよいのかでしょうか。ここで大切なのは、あなた自身が在宅ワークで何を実現したいのかということです。仕事を探し始める前に、キャリアやスキルの棚卸しから始めることをおすすめします。これは就職や転職活動で行う自己分析と同じです。自分が何をできるか、また何をしたいのか整理をすることで、発注相手への自己PRもスムーズにでき、やみくもに応募する手間も省くことができます
在宅ワークという働き方が、会社で雇用されている時と最も異なるのは一人ひとりが個人事業主ということです。役割が与えらえるのを待つだけでは仕事はやってきません。在宅ワークでは自ら仕事を得るための活動(=営業)をする必要があります。
仕事を獲得するためにはいくつかの方法があります。在宅ワークで働く方は、以前の職場のつながりや、人からの紹介で仕事を始めるという方も多いといいます。今までの経験を活かしていくこともでき、スムーズに始めることができます。また、積極的に動くことで仕事のきっかけや、横のつながりができることもあります。セミナーなどの集まりに参加するなど、積極的につながりを作ることも大切です。思わぬ場面で仕事につながることもあります。
一方、自分自身で仕事を獲得するのはハードルが高くて・・・という方には、企業からの発注を媒介してくれる仲介サービスを利用する方法があります。仲介事業者は、企業からの仕事を代わりに獲得することで、受注した業務をそれぞれの在宅ワーカーへ発注します。仕事の募集をかける段階では、業務が切り出してあり、初めて在宅ワークを行う際には取組み易い仕事が多いのも特徴です。在宅ワーク初心者でも、こうした仲介事業者に登録することで、仕事に応募して経験を積んでいくことができます。
また、最近ではクラウドソーシングといって、WEBサイト上に自らの経験やスキルを登録して応募をすることで、発注側の企業から直接仕事を受けたりコンペに応募する方法もあります。WEBサイトの構築やデザイン、システム開発など、経験と実績を必要とする仕事も多くなります。こうした特定のスキルが求められる案件で仕事を得るには、今までの実績や他の人にはない付加価値が必要となってきます。
仲介サービスを探す時には、優良な事業者を選ぶことも大切です。簡単にはじめられて高収入!なんて仕事はなかなか存在しないものです。仕事をする前に数十万など多額の登録料や研修費などを求め、実際にはあまり仕事が無いといった事業者には要注意です。求人情報を探す時にも、掲載されている情報が信頼できるものかどうか、情報の発信元を確かめるくせをつけておくとよいと思います。
発注先を得て、仕事が軌道に乗るまでは時間がかかることもあるかと思いますが、仕事を通じて信頼を積み重ねていくことが大切です。在宅ワークでも仕事をする上で心がけたいマナーなど、基本は変わりません。
ただ、一つ覚えておきたいのは、「在宅ワークは仕事の管理も体調管理も自分自身!」 ということです。納期や仕事の質など、あなたの仕事への信頼が次の仕事へつながります。また、顔が見えない分丁寧にコミュニケーションをとることも心がけたいものです。
在宅ワークで仕事を安定的に得ていくことは、始めはそう簡単ではないですが、魅力もたくさんあります。
「時間や場所にとらわれないで柔軟に働きたい!」
「子育てや介護もあるので家族のそばで働きたい!」
こうした働き方を選んで実現したいと、在宅ワークで働いている先輩ワーカーも多くいます。
次回は、自分らしい働き方を実現して、家族と仕事を両立して在宅で働いている方のお話をご紹介したいと思います。
佐藤 若紗 【キャリアカウンセラー】
記事テーマ
子育て世代のママが出産を機に考える事が多い、「育児と仕事の両立」について、出産しても働きたいママが今後のキャリアを築いていくヒントをお届けします。 在宅勤務や時短などの多様な働き方から、使ってみたい便利サービス、ママ視点を活かした働き方など、知っておきたい仕事のあれこれから、保活やママ友づくりなど産後のリアルな体験までお伝えしていきます。