『おりがみ』って素晴らしいと思いませんか?!遊びであり、芸術であり、文化であるのですから。
そう気付かせてくれたのは、3年間のアメリカでの体験でした。
当時小学2年の息子と5年の娘を連れての渡米、「おりがみを持っていくといいよ!」とのアドバイスを素直に受け、引っ越し荷物のダンボールや手荷物にも、わんさかとおりがみを積めました。
そして、それはたちまち、役に立つことになりました。
まだ引っ越し荷物も到着せず、小学校へも転入待ちで、遊び道具も友人もない状態の時、これが結構、退屈しのぎになったのです。
折り紙なら、一人遊びでもいいし、年齢、性別関係なく兄妹でも遊べます。
場所も選びませんし、自分のレベルに合ったものを黙々と作り上げます。ビデオゲームと違って長時間やらせてしまっても罪悪感もありません。指先を使うので器用さも養われるし、脳への刺激も期待出来ます。
こうして私は引っ越しの片付けに集中出来、手荷物でも持ってきてよかった~と、
軽量、安価、お手軽な遊び道具『おりがみ』に感謝をしながら始まったアメリカ生活でした。
現地の小学校への転入準備が整い、いよいよ初登校の前日、不安と期待でちょっぴり緊張気味の子供たちと折り紙をしていた時、あるアイデアが浮かびました!この作った折り紙に、自分の名前を書いてクラスメート全員に配ってはどうかと!名前も早く覚えてもらえそうだし、日本の物に触れてもらえるし、話しかけてもらえるきっかけにもなるのでは・・・と!
そんな期待をこめて。娘は『奴さん』、息子は『手裏剣』をそれぞれ作り、自分の名前をまだ書き慣れないローマ字で記し、クラスの人数分用意して、持っていきました。
どきどきの転校初日の帰宅後、「みんな『サンキュー』と言ったよ。」とか「おりがみ、広げてしまった子がいてもう一回作ってあげた」とか「一緒に遊んだ」とか「作り方、教えてあげた!」とか・・・
二人とも嬉しそうに得意気に話すのを見て、名刺さながらのおりがみ作戦がうまくいったんだと確信しました。きっと言葉など通じなくても、ゆっくりいっしょに折るだけで、いっしょに遊んだ!友達になれた!という気持ちになれたのでしょう。
こうして、おりがみは、コミュニケーションのツールとしても、一役買ってくれました。
我が子が通っていた小学校は日本人も1クラスに2、3名いたので、おりがみは、お馴染でした。
毎年美術の先生が開催される、『Art night』と呼ばれるアートに親しむ会では、おりがみのブースも設けられ、日本人が任されます。
毎回大変好評で、たくさんの方がおりがみを体験してくれます。そして、鶴や複雑な折り方の作品にちょっぴり苦戦しながら、日本人の器用さを称えてくれたりします。
日本人が中心になってやるイベントにはいつもおりがみが付き物で、いいかげん、みんな飽きないのかなと心配してしまいますが、毎回要請があるほどの人気です。
私たち日本人にとっておりがみは、一部の人だけが習得した特別な技術ではありません。お母さんやおばあちゃん、幼稚園の先生やお兄ちゃん、お姉ちゃんに、教えてもらいながら、出会った遊びの一つです。
日本ではちょっぴり地味に思われがちな遊びですが、アメリカでは千代紙の美しさに魅せられ、日本人の器用さを尊敬され、いろんな作品を生み出すアートと認められ、日本文化として受け入れられているのです。
日本人は千羽鶴に特別の思い入れがあります。
病気や怪我のお見舞いに止まらず、甲子園の応援にも作ったりします。広島平和公園にも全国から送られてきた千羽鶴があります。日本人は千羽鶴に祈りを込め、それをメッセージとして贈るのです。
アメリカでも、そんな千羽鶴に出会いました。例えば、9.11のテロの爪あとが展示されたメモリアルビジターセンターにも日本から送られた千羽鶴が展示してありました。平和への祈りが千羽鶴に宿っています。
また、東日本大震災の時には、募金をして下さった方に折鶴を渡すために、たくさんの鶴をつくりました。遠く母国の震災に心を痛めながら、日本人の友人と励まし合い、無事を祈り支援金への感謝を込め、鶴を折りました。
それは気持ちを伝えるということに止まらず、作り手のいてもたってもいられない不安な気持ちを静めてくれるという意味でも、おりがみは大きな役割をもってくれました。
子供の頃から何気なくやってきたおりがみ。こんなにも和の魅力があふれていたなんて・・・。遊びであり、学びであり、芸術であり、文化であり、コミュニケーションであり、励ましであり、祈りであり、癒しである。日本人誰しもが文化発信出来る優れ物『おりがみ』。
その魅力は私が挙げただけでは終わらない。それはきっと発信する人たちの思いの数だけあることでしょう。
鈴木 麻奈美 【日本舞踊藤間流名取・NOSSインストラクター】
記事テーマ
グローバル時代において、和の精神、和の文化を持つことは、これから世界で活躍されるであろうお子さまたちの心のよりどころとなるでしょう。3年半のアメリカ暮らしで気付いた和の魅力、日々の暮らしの中にある和の素敵をお伝えしていきます。あなたの気付きとなりますように。お子さまたちの和のスマイルを育む毎日につながりますように。