NOSS(ノス)とは、Nihon(にほん)・Odori(おどり)・Sports(スポーツ)・Science(サイエンス) もう覚えていただけましたでしょうか?
日本舞踊を基盤にした科学的にも検証された運動です。
Odoriおどりの部分については昨年12月の記事『日本舞踊』、Sportsスポーツの部分については10月の『和のフィットネス』にて書かせていただいておりますので、今回はNOSSの最後の頭文字S、Scienceに着目してのお話です。
NOSSは日本舞踊西川流の西川右近家元が考案され、それを中京大学スポーツ科学部の湯浅景元教授が、科学的に検証されました。
日本舞踊はこれまで身体に良いとされながらも、科学的なデータがほとんどありません。
そこで教授は、何について研究され、どんな検証結果が出たのでしょう。
家元自ら、運動量を測る装置をつけてNOSSを踊り、実験に挑まれました。
さあ、見ていきましょう!
①消費エネルギーについて
NOSSを実際に踊りながら、はきだす酸素の量を測りました。
実際の数値を記してもピンとこないので勝手に省略させていただきますが、ここで検証されたことは、一般のウォーキングの1.3倍のエネルギーが使われたということになるそうです。
その時の脈拍は79。
実はこれだけのカロリーを消費するには、脈拍はもっと上がっていてもおかしくないそうです。
つまりどういうことかというと、心臓に負担をかけないでエネルギーが使えたということです。
②筋肉の働きについて
筋肉を衰えさせないための運動とは、全力の50%以上の力を出す必要があるそうです。
そこで、筋肉に電極を装着し、あらかじめ自分の最大限の力を測定。その後、NOSSを踊っている時の筋力を測定し、最大筋力とを比較されました。
その結果、脊柱起立筋(背中)では平均して80%、また、内側広筋(太ももの内側)においては100%以上の力を出していることが確認されました。
つまり、太ももの内側の筋肉は最大筋力よりも強い筋力を発揮していることが確認されており、NOSSの動きは、もはや、老化を抑えることに止まらず、筋肉を強化出来る動きであることがわかったとのことです。
③関節の動き
特殊な装置で関節の動きをチェック。
アキレス腱、股関節、大腿部、手首、足首・・・
さまざまな箇所でストレッチされていることを確認。
これらの検証結果からは、NOSSは運動に大切な三大要素である有酸素運動・筋肉運動・ストレッチ運動がしっかり組み込まれていて、心臓や血管への負担が少なくエネルギーを消費出来る運動だということが明らかになりました。
NOSSは体に働きかけるだけではありません。
指先を使ったり、動きを思い出したり、不慣れなことをすることで脳への刺激も期待できます。
また精神面においても、踊りが持つ優雅さ癒しや楽しさは、心の健康にも大いに働きかけます。
金沢医科大学 高齢医学科の森本茂人教授は、『通所介護高齢者の心身の健康に対する日本踊りスポーツサイエンス(NOSS)プログラムの効果の検証』について論文を発表され、日本未病システム学会学術総会研究奨励賞を受けていらっしゃいます。
うつや意欲低下の改善に効果が発揮されるということを解明され、NOSSは医学的見地からも解釈を得られています。
私は湯浅教授のように科学的検証することも森本教授のように医学的に論文を発表することも叶いませんが、長年、なんとなく日本舞踊をやってきた中で、今の自分自身が検証されているような気がします。NOSSを知り、なるほど!と合点がいくことや意味づけられたことが、自分の中でたくさんあるのです。
小学生の頃、不整脈で激しい運動を禁じられた時も、日本舞踊を通して、実はほどよい運動を続けていたことになります。しかも、ちゃんと、心臓や血管に負担をかけることなく!です。
その後自然に治り、これといった病気や骨折や大きな怪我もしたことがないことや、肩こりとも無縁なこと、体幹の強さは何かしら踊りが関係していたのでは・・・と思えます。なぜなら、NOSSの踊りの中に入っている転倒防止やバランス感覚を養うポーズ、肩こり、首こりの解消になる動きは、日本舞踊を基盤にして出来ているのですから。
ただ好きでやってきた日本舞踊が、心身ともによいことだったと、NOSSを通して科学的に検証されたなんて、本当に嬉しいかぎりです。
そして、その良さを心身共に実感出来ている自分が、身をもって伝えることが出来ることに、喜びを感じています。
私の持つ検証結果は、今はまだ、レッスン後にいただいたアンケートのみですが、何十年か先、NOSSを続けてこられた人たちから、『高齢になっても自分の足で歩ける』とか『身のこなしが楽だわ』とか『いっしょに踊る仲間がいて楽しい』とか『孫とやるの』とか、『若々しく見られるの』とか『肩こり、腰痛なしよ』とか、そんなご自身の心と体と実感が、私のかけがえのない検証結果になればと思っています。
お知らせ
NOSSを考案された日本舞踊西川流家元・西川右近さんから西川千雅さんに継承されます。
三世から四世への継承記念公演の詳細は西川流HPhttp://nishikawa-ryu.com/まで
鈴木麻奈美イベント案内
和のスマイル6回講座~NOSSと百人一首舞い~
詳細とお申し込み 9月10日締め切り
和のスマイル6回講座 http://www.reservestock.jp/events/44596
参考文献
『7分のおどりで筋力強化』 西川右近・西川千雅著 湯浅景元監修
鈴木 麻奈美 【日本舞踊藤間流名取・NOSSインストラクター】
記事テーマ
グローバル時代において、和の精神、和の文化を持つことは、これから世界で活躍されるであろうお子さまたちの心のよりどころとなるでしょう。3年半のアメリカ暮らしで気付いた和の魅力、日々の暮らしの中にある和の素敵をお伝えしていきます。あなたの気付きとなりますように。お子さまたちの和のスマイルを育む毎日につながりますように。