前回は、ペットが本来食べてはいけない食べ物を食べることによって起こるトラブルについてご紹介しました。今回は、子どものおもちゃなどの異物がトラブルを起こす例をご紹介します。
小さな子どもはトイレットペーパーの芯を通るものであれば、飲み込むことができると知られています。子どもよりさらに体格の小さいペットたち。思いもよらないものを口にして、飲み込むことがあります。
そして、消化器症状(嘔吐や下痢)を起こしたり、ごくわずかな量で体調を崩したりします。もし腸閉塞を起こすような大きさであれば、前回ご紹介したように吐かせたり、全身麻酔をかけて内視鏡で取り出して、未然に防ぎます。すでに腸閉塞を起こしていたり、内視鏡で取り出せなければ、開腹手術による摘出を必要とすることになります。
ミニチュアダックスフントの太陽ちゃんはとっても食いしん坊。ある日、独特のにおいにつられたのか、お子さんのお絵かき用のクレヨンを食べてしまいました。その数時間後、太陽ちゃんの顔はむくんでぱんぱんになり、夜間救急動物病院を受診しました。なんと、太陽ちゃんはアレルギー反応を起こしていたのです。
アレルギー反応を抑える注射で翌日には太陽ちゃんの顔は元通りに。お母さんはお子さんが小さい間は口にしても害のないクレヨンを使わせていましたが、お子さんが成長してなんでも口にする時期を過ぎたため、100均のアジア製のクレヨンを使わせていました。それが災いして、今回のトラブルが起こってしまいました。
クレヨンのどの成分に反応したかはわかりませんし、幸い大事にはいたりませんでしたが、子どもが成長しても、ペットには油断禁物ですね。
ミニチュアシュナウザーの海ちゃんは、1か月も続く原因不明の嘔吐に悩まされていました。食欲はあったため、かかりつけの病院では吐き気止めを処方されていましたが、相変わらず続く嘔吐にだんだん衰弱してきた海ちゃん。みかねたお母さんはセカンドオピニオンをあおぐことにしました。
新しい病院でエコー検査をしたところ、小腸の粘膜が炎症を起こしていることがわかりました。完全に詰まっているわけではなかったため、即手術にはふみきらず、点滴による水分補給を行って、腸の動きをよくしてあげたところ、数日後、ミニカーの部品と思われるものが、うんちに出てきました。
おもちゃの部品が腸管を流れる食べ物の流れを遅くしていたために起きていた嘔吐と診断されました。
お姉さんの携帯ストラップでいつも遊んでいたシーズーの花ちゃん。ある日、ストラップが取れて飲み込んでしまいました。飲み込んでからあまり時間は経っていませんでしたが、吐かせると食道に詰まってしまいそうな大きさだったため、全身麻酔をかけて内視鏡(胃カメラ)で取り出すことになりました。
内視鏡で花ちゃんの胃の中をのぞくと、いましたいました、お化けのキャラクター。内視鏡鉗子でなんとか回収でき、その日に退院することができました。
急に何度も嘔吐し、ぐったりしてきたバーニーズマウンテンドッグのサンタちゃん。動物病院でレントゲンを撮ったところ、腸閉塞を起こしていることがわかりました。点滴で水分を補給して、翌日開腹手術を行ったところ、詰まっていたのはボール。実は1ヵ月前に飲み込んでいたものでしたが、しばらくなんともなかったため、飼い主の男の子も大丈夫だと思って様子をみているうちに忘れてしまっていました。
おそらく、しばらくは胃の中にあったため、特に症状が出なかったのでしょうが、ふとした拍子に小腸に移動して詰まってしまったと考えられました。麻酔から覚めたら、いつもの元気なサンタちゃんに戻って、数日後、元気に退院していきました。
小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。