子どもとペットのいる暮らしの中で結構遭遇するのが、ペットが本来食べてはいけないものを食べてしまうことです。今回はその中でも食べ物についてご紹介します。
小さな子どもは食事中にぽろぽろと食べ物をこぼします。ペットがそれを拾い食いすることで体調を崩すことがあります。また、子どもが悪気なくペットに自分のおやつをあげてしまうこともあります。
ネギ類(ネギ、ニラ、玉ねぎなど)は犬猫で溶血性貧血を起こします。
キシリトールは犬で低血糖を起こします。
チョコレートに含まれるテオブロミンも中毒を起こします。
また、ブドウは犬で腎不全を起こすことが知られています。
近年、子どもと同様にペットのアレルギー性皮膚炎・外耳炎も増えてきました。特に療法食を与えて、症状を緩和しているペットでは、子どもの食べこぼしを拾い食いすることで、症状が悪化します。
チワワの太郎ちゃんは、お母さんと娘ちゃんが買い物に出た隙に、リビングのローテーブルの上にあった、子ども用のキャンディーを、お腹一杯食べてしまいました。幸い、キシリトールは入っていなかったものの、個包装のキャンディーだったため、小さなチワワの腸管には詰まってしまう可能性があり、動物病院で吐かせる処置(催吐)をすることになりました。
レントゲン検査で確認したところ、太郎ちゃんの胃はキャンディーと思われるものでぱんぱん。お薬を飲ませたり、注射したりすることで、ほどなくして嘔吐。吐物は甘い臭いのする液体で、幸い、包装紙は入っていませんでした。
突然、嘔吐と血便を起こしたトイプードルのクロちゃん。お母さんには思い当たるふしがありませんでしたが、症状が重かったので動物病院に入院して点滴治療をしました。数日後、すっかりよくなって退院することに。お母さんと一緒に迎えに来た小さな女の子が、「チョコレートをあげちゃったんだ」と告白してくれました。摂取量が少なかったため、消化器症状のみですみましたが、大量に摂取すると心臓の働きが悪くなって死んでしまうこともあり、危険です。
フレンチブルドッグの大吉ちゃんは、アレルギー性皮膚炎のために、ステロイド剤の内服と、療法食で痒みを抑えています。でも、小さなお子さんの食べこぼすおかずを食べてしまうためになかなか痒みがコントロールできません。金銭的にもあまりお薬の種類を増やしたくない事情があり、ごまかしながら治療していましたが、お子さんの成長に伴い、食べこぼすことが少なくなって、皮膚の症状が劇的に改善しました。
小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。