新しく家族の一員としてペットを迎えるのはいったいいつがいいのでしょうか? 最適な時期というのは特にありませんが、それぞれの時期において、メリットやデメリットがあります。
子どもと同じで犬や猫も小さいときほど手がかかります。離乳していない子犬や子猫を育てるとなると、昼も夜も2~3時間毎の授乳と排泄の世話(お尻を刺激して排泄を促すこと)が必要になります。離乳後に飼い始める場合がほとんどですが、小さいときほど頻回に食事を与えたり、トイレを片付けたりする必要があります。個体差はありますが、一般的に犬では3歳、猫では生後半年を過ぎると落ち着きが出て、小さいときほど手がかからなくなります。
ペットを飼う場合は、家族計画にペットも組み込むことをお勧めします。
独身時代から飼っているペットを結婚後も飼い続ける場合は、ペットを新居や結婚相手に慣らす必要があります。ペットが高齢の場合は、少し時間がかかるかもしれません。でも、相手は分別のある大人。ペットが慣れるのはそれほど大変ではないでしょう。新生活への不安な気持ちもペットが癒してくれるでしょう。
結婚後、子どもが生まれる前にペットを迎える場合も、しつけやお世話に割く時間は取りやすいでしょう。初めての子どもとして、夫婦で深い愛情を注ぐことができるでしょう。
妊娠中にペットを迎える人はあまりいないと思いますが、ペットを飼い始めてまもなく妊娠してしまうことはあるかもしれません。つわりでトイレの片付けが大変になったり、体調が悪くて十分に遊んであげられなかったり、散歩に行ってあげられなくなるかもしれません。その場合は家族や散歩友だちなどに協力を仰ぎましょう。また、妊婦のトキソプラズマ抗体が陰性であれば、猫の飼育に関しては注意が必要です。こちらに関しては後日詳しく述べます。
赤ちゃん誕生後のトラブルについては以前の記事を参考にしてください。
●赤ちゃんの登場によってペットに生じた問題
乳幼児期(未就園)は一番手のかかる時期です。この時期にペットを飼い始めて世話をしたり、しつけをするのはとても大変です。赤ちゃんであれば、ペットフードを間違えて食べてしまったり、排泄物を素手で触ったりというアクシデントが起こることもあります。また、幼児は悪気なく手荒な扱いをすることもあるので、注意が必要です。子どもが落として骨折をした小型犬や、投げ飛ばされて亡くなった子犬や子猫など、痛ましい事故もありました。ウサギやハムスター、モルモットなどのエキゾチックペットでは、ケージの隙間から子どもが指を入れると、餌と勘違いして咬むこともあります。子どもがいる家庭にペットを迎える場合は、子どもがある程度分別がついてからがいいでしょう。
幼稚園児くらいだと、親と一緒にお世話をすることもできます。いつもはお世話される側、愛情を注がれる側の子どもにとって、自分がお世話し、愛情を注ぐことができるペットの存在は格別のものです。自然とお手伝いをする心や動物を愛する気持ちが芽生えるでしょう。
小学生になると、子ども自身がペットを欲しがることもあるでしょう。たいていは本人が責任をもって世話をするという約束のもとに飼い始めるでしょうが、最終的な責任や監督は親が行う必要があります。この時期のペットの存在は格別で、ペットは子どもにとって兄弟のような存在になるでしょう。
中学生以降で飼い始める場合は、ペットが寿命を迎える前に、大学入学や就職で子どもが親元を離れる可能性があります。その場合、親元で飼い続けるケースがほとんどでしょうが、その可能性を考えておく必要があります。
獣医療が進んだ現代では、犬猫では10年以上生きる子がほとんどで、犬では15歳、猫では20歳を超えて長生きする子もいます。ウサギは6~8歳、モルモットでは3~5歳、ハムスターでは2~3歳が平均寿命でしょう。小鳥は結構長寿で10年以上生きる子も多いです。
動物の寿命は人間より短いので、核家族化が進んだ現代では、ペットの死が子どもが経験する初めての身近な死である場合も多く、グリーフケアが大事になります。人として生きている以上避けて通ることはできない死を、身近なペットを通して経験することで、人生に深みが増して、より思いやりのある人間になることができるでしょう。
小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。