エキノコックスは世界中で確認されている寄生虫で、国内では主に北海道に生息しています。人の患者は全国で見られます。 成虫が寄生したキツネや犬が虫卵を排泄し、それをネズミが摂取してネズミの体内で成長し、ネズミを捕食したキツネや犬に再び感染します。人では虫卵を摂取して感染し、肝臓や肺に寄生し、重症の場合は肝不全などの障害を引き起こすことがあります。人から人には感染しません。
北海道では毎年10から20人の患者が報告されています。 本州でも過去に60例以上の報告があり、4分の1は北海道に行ったことのない人です。昨年12月に札幌市の円山動物園でダイアナモンキーの感染が確認されました。
北海道だけの話と思われるかもしれませんが、最近は本州でも確認されています。最近では愛知県で犬の便からエキノコックスの卵が発見されました。
http://www.pref.aichi.jp/0000071035.html
青函トンネル経由のキタキツネやネズミの移動、北海道から搬出される牧草や芝草に虫卵や感染ネズミが紛れ込む可能性、北海道で感染した犬を連れ出す可能性などが考えられています。犬を同伴して北海道を旅行する人は年間12000人を超えているそうです。
子どもで約5年、成人で約10年以上の無症状期を経て、進行期には肝機能障害や腹部の疼痛、違和感を覚えます。
半年以内に重度の肝機能不全となり、黄疸、腹水貯留、浮腫、門脈圧亢進、転移を伴い死亡します。
こうした症状から、寄生虫の癌ともいわれています。
動物はほぼ無症状でまれに下痢や粘血便の排泄があります。
手術で感染した病巣の外科的切除を行います。
汚染地域では、沢の水など虫卵で汚染された生ものは飲まない、食べないことが大事です。
北海道の京極町のふきだし公園はおいしいわき水で有名ですが、虫卵を通さないフィルターを設置することで安心してわき水を飲むことができます。
また、血液検査で感染がわかることから、定期的に血液検査を行って早期に駆虫することも大切です。
感染している可能性が高い、キツネや野良犬、野良猫に素手で触らないことや、手洗いの励行も重要です。
身近な犬の定期的な駆虫も重要で、簡便な検査キットがあることから、
以前は感染が確認された犬に駆虫薬を飲ませていましたが、
最近、フィラリアなどの線虫に加えてエキノコックスなどの条虫類も駆虫できる薬が発売されたことから、
これまでよりも気軽に予防ができるようになりました。
詳しくは動物病院にお問い合わせください。
著者の勤務するノア動物病院のhpが新しくなりました。
http://noah-animal-hospital.jp/
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小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。