暖かくなってアウトドアを楽しむこともできるようになってきました。今回から久しぶりに、ズーノーシスシリーズを再開します。
初回はアウトドアで感染することがあるレプトスピラ感染症についてです。細菌による感染症で、人や犬を含むほぼすべての哺乳動物に感染します。レプトスピラはネズミなど保菌動物の腎臓に常在し、その尿の中に細菌が排泄されます。犬はネズミを食べたり、その尿で汚染された川や湖の水、食品を口にしたり、皮膚の傷を介して感染します。感染した犬の尿の中にも細菌が排泄されます。人はネズミを食べませんが、汚染された水や食品を通じて感染します。
日本でも古くから「秋疫」や「ワイル病」という名で風土病として知られていましたが、現在はワクチンの普及、農業の機械化、環境改善などにより減少しています。現在では水泳やカヌーなどの水遊び、海外旅行での感染が多いです。
潜伏期間は3から14日間です。突然の発熱(39℃以上)、悪寒、戦慄から始まり、結膜充血や筋肉痛が加わります。重症では強い頭痛と三大主徴(黄疸、出血、蛋白尿)が現れ、腎障害により死亡率が20から40%になります。犬は発熱、元気消失、食欲不振からはじまり、血色素尿、粘膜充血、貧血、黄疸、肝不全を起こして死亡することも多いです。
抗生剤の投与と対症療法を行います。
レプトスピラには250以上の血清型があります。現在、日本では人間用に、4血清型の全菌体ワクチンがあります。犬用には以前から2血清型のワクチンがありましたが、今春4血清型のワクチンが出て、注目を集めています。
以前、ワクチンで予防できるズーノーシスとして狂犬病をご紹介しましたが、今回ご紹介したレプトスピラ症のほうが、むしろ感染の可能性は高いので、動物病院で相談して、しっかり予防しましょう。
著者の勤務するノア動物病院のhpが新しくなりました。
小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。