前回はAnimal Welfareの総論的な部分を説明しました。
今回、具体的にどうやっていけばいいかをご説明します。
子犬や子猫の時は、一度に沢山の食べ物を食べると、消化しきれず、おなかをこわしてしまいます。
また、長時間の絶食では低血糖を起こしてしまいます。
そのため、少量頻回の食餌が必要です。
ペットショップでは、子犬や子猫を購入してもらいたい一心で、「ご飯は1日2回で十分ですよ」と説明されます。
そう言わなければ、核家族で、共働きの家庭では、ペットは飼ってもらえませんから。
でも、本来ならば、生後半年頃までは、少なくとも1日3回食にしてあげたいものです。
お昼休みに一度帰宅できるのであればそうすればいいし、朝、夕方、就寝前の3回食にするのもいいでしょう。
長時間不在にするのであれば、自動給餌器を使用することもできます。
また、購入当時に「フードの量はこれくらいで」と指示された量をずっと維持して、成長しても増やさない人もいます。
インターネットで購入されたマメシバちゃんは、「フードは6粒で」という指示をずっと守った結果、低血糖で倒れて動物病院にかつぎこまれました。
ペットも生きています。成長するにつれて、1回の量も増えて当然です。
ときには、「沢山あげるとうんちをたくさんするから」という理由でフードの量を減らす飼い主もいます。
生きているのですから、尿や便をするのは当たり前。
特に子犬は月齢プラス1時間しか排尿を我慢できませんし、便の回数も1日数回と多いのが正常です。
ペットも新鮮な水を好みます。
犬は1日2回、猫は1日4回水を交換してあげましょう。
いつでも好きなときに飲めるように十分な量を与えましょう。
他頭飼育の場合は、相性が悪い子がいると、水皿に近づけないこともあるので、
あちこちに水皿を置いてあげましょう。
猫では、いろんな形態の水を好む子がいます。
流れる水を好む子には、ウォーターファウンテンという噴水のように常に水を流し続ける装置があります。
蛇口から直接飲みたい子には、ねだられたら、すぐ応えてあげましょう。
浴槽の水を好む子もいますが、おぼれることがないように注意してあげましょう。
ペットにとって、食餌はとても大切なものです。
独占欲、所有欲の強い子だと、フードの入った食器に手を出すと怒る子もいます。
小さな子どもがいるご家庭では特に、食餌中に子どもが手を出して、攻撃されないよう、
扉を閉めたケージの中や、別室でフードを与えるようにするといいでしょう。
そのほうが、子どもの身を守ることもでき、ペットも不要なストレスを感じないですみます。
子どもがペットフードを口にしてしまったというのもよく耳にします。
少量であれば、健康に害はないでしょうが、取られたペットの気持ちを思うとかわいそうですし、その後、食餌の時間に安心して食べることができなくなってしまいます。
我が家の例で恐縮ですが、犬用のケージの外側に取り付けたペットボトル型の給水ボトルが、
小さな長女にとってとても魅力的だったようで、よく外されておもちゃになっていました。
愛犬もいい顔をしないし、床も濡れるしで、困ったため、ケージの内側に設置しました。
二女はそれでも手を伸ばして、飲み口を指で触って水を出して遊んでいたため、
ケージの奥に設置し直しました。
朝晩の水の交換にはちょっと不便ですが、こういう工夫もできるということでご紹介します。
小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。