今回は、アニマルセラピーのうち、子どもを対象とした活動を行っている具体的な施設をご紹介します。
有名な施設なので、各種メディアでごらんになった方もいるかもしれません。
千葉県木更津市にある、社会福祉法人のゆり会が2003年4月に設立した、第一種社会福祉事業、知的障害児療育通園施設です。
発達に問題をもった歳から6歳までの就学前の子どもたちに対し、言語聴覚士、作業療法士、音楽療法士などの専門家や、障害児専門の保育士による個々の発達に沿った療育を行うとともに、広大な土地の中で、小動物とのふれあい活動(AAA)や乗馬セラピー(AAT)も行っています。
2005年度からは、児童デイサービス「のぞみ発達支援室きさらづ」も開設し、学園に在籍していない子ども、また、就学児で発達に問題を持っている子どもに対しても、中学生までを対象として専門の療育を提供できるようになりました。
責任学習
動物の行動生理学に従った正しい扱い方(ブラッシングの強さや方向、犬や馬へのリードのつけ方や引き方)、飼育管理(ポニーやヤギの厩舎の掃除や、給餌など)、動物によって異なる扱いを知ることによって、動物たちとの安定した関係を築くとともに、その責任の重要性を学びます。 面倒をみられる立場から、能動的立場に立つ事により、社会的責任を学び自己行動に対する意識を高めます。子どもたちの自立への導入となります。
行動学習
厩舎での歩き方、犬や馬の正しいリードの引き方、給餌、動物によって異なる近づき方などを通して、動物を脅かさない、安定した行動を学びます。多動的な子どもが、その場の状況に応じた行動の方法を学び、パニックなどの抑制につながります。
対人関係学習/ソーシャルスキル学習
正しい触り方、強さや方向性、毛の生える方向への意識、動物によって異なる距離感や力加減、抱き方を通して他者とのルールある関わり方を学びます。相手への意識や立場を知り、正しい対外界行動を学び、対人行動への般化を促します。相手の気持ちや、他者認知の獲得を目指します。
感覚への働きかけ
毛の生える方向の認知、動物をなでるという運動行為のコントロール、安全な抱き方の学習、ほおずりや手のひらからの給餌などの触覚刺激を通して、動物と子どもの共通した生理的「快」を学習させます。なでる、抱くなどの行動により感覚統合的刺激を受けるとともに自己認知能力を高め、ボディーイメージや運動企画の獲得につながります。
引用:のぞみ牧場学園(http://www.bokujougakuen.jp/nozomi-b02-01.html)
実際に飼育されている動物たちをご紹介します。
家畜:ポニー、ヤギ、ヒツジ、ミニブタ、ウコッケイ、チャボ、
犬:ラブラドールレトリバー、ブリタニースパニエル、
猫
小動物:モルモット、ミドリガメ、熱帯魚
熊本県にある総合病院です。
うつや神経症、小児や成人の心身症、老人の身体障害、高齢者の意識レベルの低下、手術後の疼痛、急性期の患者さんの悩み、ターミナル期の患者さんの苦しみなどの解消の一環として、アニマルセラピーを取り入れています。
アニマルセラピーの導入のきっかけとして、心身症の子どもを対象とした登山療法に犬を参加させたそうです。
心身症の子どもは人間対人間の精神的繋がりが希薄なため、動物を介在することで人間関係が生まれます。
登山療法では、苦難を乗り越えて達成感を味わうことで、心身症の治療につながるのですが、肉体的疲労からくじけそうになることも多々あります。しかし、自分と変わらないか自分より小さな犬が頑張って登山をしている姿を間近に見ると、自分も頑張ろうという意欲がわいてきます。また犬を話題にして、参加している大人や子どもとの会話も弾みます。
高野病院では、その後、敷地内に「人と動物のふれあいハウス」を建てて、動物がそこにいて、患者さんにそこに出向いてもらって、触れ合えるようにしています。
小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。