一昔前の猫たちは、飼い猫であっても、屋外を自由に闊歩して、
散策をしたり、狩りをしたり、猫の集会をしたりと自由気ままに暮らしていました。
しかし、現代の、特に都会の猫たちは、交通事故や怪我や病気の予防という点から、
完全室内飼育を推奨され、生まれてから一歩も外に出たことのない子がほとんどです。
健康管理の面からはとてもいい飼育方法ですが、精神的にはストレスを感じている猫も多いのではないでしょうか。
飼い主が働いていて、日中、一人でお留守番している猫は、のんびりお昼寝をしています。
そして、飼い主が帰宅した夜、たくわえていたエネルギーを発散すべく、大運動会を行います。
仕事で疲れた飼い主にとっては悩みの種になることも多いです。
猫じゃらしなどのおもちゃやペンライトの光で遊んであげたり、猫用のビデオを見せて、狩りのシュミレーションをさせてあげましょう。
その際大事なポイントとして、猫自身は獲物をしとめるところまで行わないと、逆にフラストレーションがたまってしまうので、
最後にぬいぐるみや新聞を丸めたものを投げてあげて、しとめさせてあげましょう。
また、朝夕2回お皿に入れたフードを与えるのではなく、
棚の上や台の上など数箇所に、小皿に分けたフードを置いて、
野生の猫科動物の生活を模倣してみるのもよいでしょう。
赤ちゃんや子どもが家族に加わると、自由気ままにソファやベッドでくつろいでいた猫は、
その安住の地を奪われることになります。
猫は半分身体がうもれるような籠や箱で休憩するのをとても好みます。
一時期有名になった、猫鍋がその典型です。
さらに、高いところであれば、子どもの手も届かないので、家具の上など高いところに、
猫専用のベッドや籠を置いて、安全地帯を確保してあげましょう。
また、トイレに入っているときに、子どもに邪魔されたり、大声で脅かされたりすると、
トラウマになって、そのトイレをつかってくれなくなることもあります。
ゆっくり落ち着いて用を足すことができる場所にトイレを設置してあげましょう。
猫は額や顎を自分のなわばりにこすりつけて、自分のフェロモンをつけることで、
安心してくつろぐことができます。
その猫のフェイシャルホルモンを製品化したものがあります。
手軽に使えるスプレータイプと、液体蚊取り線香のような据え置きリキッド拡散タイプがあります。
猫の居場所の近くで使ってあげると、ストレスを軽減することができます。
家族に子どもが加わって、不安を感じている猫にも有効です。
詳しくは動物病院にお尋ねください。
小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。