現代の日本では、5世帯に1世帯が犬を、10世帯に1世帯が猫を飼育しています。また、4世帯に1世帯は犬または猫を飼育しており、5世帯に2世帯は鳥類、観賞魚、小動物(うさぎやハムスターなど)を含む、なんらかのペットを飼育しています。
実際に動物病院にペットを連れてくる方々には様々な年代の方がいらっしゃいますが、恋人同士や若いご夫婦も多く見受けられます。獣医療が進んだ近年、犬猫の寿命は10歳を超え、飼っているうちに結婚、赤ちゃんの誕生、子どもの独立など家族構成が変化することも十分考えられます。今回はその中でも赤ちゃんの誕生について述べます。
出典 一般社団法人 日本ペットフード協会 平成23年 全国犬猫飼育実態調査
特に犬において当てはまりますが、今まで愛情を注がれてきたペットにとって、赤ちゃんが家族に加わるのは大きな変化です。
約2ヵ月で自立する犬猫と異なり、人間の赤ちゃんはとても手がかかるもの。家族の注目は自然と赤ちゃんに向いてしまいます。
遊んでもらえる機会が減ったり、散歩の時間や頻度も減るかもしれません。赤ちゃんの安全のため、行動範囲を狭められるかもしれません。
赤ちゃんがすくすく成長して動けるようになると、ケージに侵入されたり、フードを横取りされたり、しっぽを引っ張られるかもしれません。
そうした様々なストレスにより、食欲が落ちる、吐く、下痢をする、やせるなどの身体的な変化が起こることがあります。また、要求吠えが増えたり、自分の毛を抜いてしまうといった、問題行動を起こすこともあります。
赤ちゃんが生まれたら、入院中から赤ちゃんのにおいがついたタオルなどを家に持ち帰って慣らしましょう。
退院してきたら、挨拶をします。「はじめまして、○○ちゃんだよ。ママのお腹にいたのはこの子です。これから、家族の一員としてよろしくね。」「○○ちゃん、こちらは犬のコロです。大事な家族の一員だよ。」といったふうに。この日は、数日入院していたお母さんが退院してきてペットも大喜び。お母さんが疲れない程度にスキンシップをとりましょう。
赤ちゃんもペットも予期せぬ行動をとるもの。大人が見ていないところでペットと赤ちゃんだけにするのはもちろんご法度です。
そして、ペットと赤ちゃんをやみくもに離すのではなく、ペットにおやつや餌を与えるときは赤ちゃんを抱っこして与えましょう。赤ちゃんが外に出られるようになったら、散歩にも一緒に行きましょう。ペットにとってうれしいこと(食事、散歩など)を、可能なかぎり赤ちゃんの存在のもとで行うことによって、ペットにとって赤ちゃんの存在がいいものになります。もちろん赤ちゃんが寝ているときに抱っこしたり、なでたり、遊んだりしてあげるのも、大事です。お父さんお母さんは大変ですが、ここが頑張りどころです。ペットにとっての赤ちゃんがいい印象になれば、いずれとてもいいきょうだいになってくれるでしょう。
小田 寿美子 【獣医師】
記事テーマ
犬猫をはじめ、うさぎやハムスター、小鳥など、家族の一員として、また子どもの情操教育のために、ペットは日本の家庭にも欠かせない存在になってきています。ペットのいる暮らしに関するさまざまな疑問、メリットやデメリットについて、専門的な立場から連載していきます。ペットの問題行動カウンセラーとしても活躍する、筆者ならではの多彩な視点から述べます。