今年9月から、日本でもいよいよポリオの予防接種が生ワクチンから不活化ワクチンに切り替わりましたね! 報道などによると、不活化ワクチンへ切り替える方針が打ち出されてから導入までに、10年近くかかったとか・・・。無料で生ワクチンを受けるか、それとも高額の費用を払って自費で安全な不活化ワクチンを受けるか、ただでさえ不安やわからないことだらけの育児の中、これまでは選択を迫られてきたわけですが、ようやくママたちから悩みが一つ減ることになり嬉しい限りです。
我が家は渡米の予定がすでにあったため、ポリオはすべて日本で不活化ワクチンを自費で接種してきましたが、実際にアメリカに来てみて、その他のワクチンも含め、アメリカの予防接種が進んでいる(というより、残念ながら日本がかなり遅れている)ことを実感・・・。
現在の主治医の先生によると、アメリカのポリオの予防接種は、何十年も前から不活化ワクチンが使用されており、すでに野生株による発症はなくなり、予防できる病気の中でも一番根絶に近いものとされているそうです。他にも、接種スケジュールから考え方にいたるまで、驚きの違いがたくさん! 今回は、予防接種先進国アメリカの予防接種事情をまとめます。
子どもが一歳を過ぎてから渡米したわが家。多くの予防接種はすでに日本ですませており、一つ二つの追加接種のつもりでかかりつけの小児科を受診したところ、今年度中に合計6本(!)の予防接種をしておきましょう、ということになりました。
日本とアメリカでは、定期接種となる予防接種の種類が大幅に違います。
わが家のかかりつけ小児科作成の資料よりまとめると以下の通り。
「日本ベイクリニック」(カリフォルニア州サンマテオ)
【日本:定期接種】
三種混合(ジフテリア・百日せき・破傷風)、ポリオ、MR(麻疹・風疹)、二種混合(ジフテリア・破傷風)、BCG、日本脳炎
【日本:任意接種】
ヒブ、肺炎球菌、ロタウィルス、おたふくかぜ、水ぼうそう、B型肝炎、子宮頸がんワクチン、インフルエンザ
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【アメリカ:定期接種】
三種混合、ポリオ、MMR(麻疹・おたふくかぜ・風疹)、ヒブ、水ぼうそう、B型肝炎、ロタウィルス、肺炎球菌、A型肝炎、子宮頸がんワクチン、髄膜炎菌
【アメリカ:任意接種】
インフルエンザ
つまり、日本で任意接種とされている予防接種のほとんどが、アメリカでは定期接種となっているのです。さらに、これらワクチンのうち、肺炎球菌についてアメリカでは、現在日本で使われているものより多くの種類の肺炎球菌感染症に対応した新しいワクチンが使用されているなど、内容も違うものがあります。
そのほかの大きな違いは、
・アメリカでは生後6週間から予防接種がスタートできる
・集団接種はない
・いろいろな組み合わせのコンビネーションワクチンがある(打つ回数を減らすことが可能)
など。
防げる病気は防いであげたい、そう思うのが親心。予防接種はある意味で大人から子どもへのプレゼントと言えるかもしれません。そう考えると、定期接種でほとんどの予防接種を打つことができるのはとてもありがたく感じました。
乳幼児期、日本よりかなり多くの予防接種があるアメリカ。当然、接種スケジュールは過密になります。それを軽減するため、アメリカではコンビネーションワクチンを取り入れるとともに、一度に3本、4本と予防接種を打つ「同時接種」があたりまえで、一般的な医療行為となっています。
副作用も一本ずつ打つ場合と変わらないし、なにより泣く回数が少なくて済むし、効率的でしょ!という、いかにもアメリカらしい(?)考え方です。確かに、連続して何本も注射されて泣くわが子の姿を見るのはとても辛いものですが、それさえ終われば次は数ヵ月後、病院で他の患者から風邪などをもらう心配も減るし、なによりその分の時間を他の様々な経験に使ってあげることができるので、子どもにとってもメリットは多いと感じます。
日本では「同時接種」について慎重な意見もありますが、日本小児科学会から、複数のワクチンを同時に接種しても、有効性への干渉や副反応の頻度上昇は認められず、ワクチンの「同時接種」は日本の子供たちをワクチンで予防できる病気から守るために必要な医療行為だ、とする発表もでています。私は、日本にいた時から、主治医の先生の説明のもと、同時接種を行っています。
【参考】日本小児科学会「日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方」(2011年4月28日)
http://www.jpeds.or.jp/saisin/saisin_1101182.pdf#search='
これだけ予防接種に違いがあると、アメリカに長期滞在することになった場合、スケジュールをどうしようか悩んでしまいますね!
<アメリカで出産→そのまま子育て、の場合>
コンビネーションワクチン(よく使われるのが「三種混合+ヒブ+ポリオ」や「三種混合+ポリオ+B型肝炎」の5種混合)を使ったりして効率よく予防接種を受けることが可能。一歳前の乳児は大腿に、一歳以上の子どもには腕に注射されます。
<日本で出産→子育て中に渡米、の場合>
この場合、もっとも悩んでしまいます。わが家もこのパターンでした。でも、日本で受けられてアメリカで受けられない予防接種はないと考えていいと思います。日本を出国する前に、母子手帳の英訳を準備し、それまでの予防接種の履歴を英訳しておきましょう。そして、渡米後、生活が落ち着いたらかかりつけの小児科で今後の予防接種のスケジュールを相談するとよいと思います。そこでこれまでの予防接種の履歴を提出すれば、必要なワクチンと接種スケジュールを提案してくれるはずです。なお、保険の種類によって、有料のものもあるので確認してください。
ちなみに、アメリカでデイケアや学校に通う場合、アメリカ規定の予防接種が済んでいないと受け入れてもらえない場合があります。ただし、すべて済んでいなくても「現在接種中」という医師からの証明があれば入学許可を申請することも可能のようです。
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実際にアメリカで予防接種を受けてみましたが、ドクター(私の場合は日本人の女医さんです)が同時接種にも本当に慣れていて、しかも自信を持って丁寧に説明してくださるので、全く不安は感じませんでした。それに、知識もしっかりと持たれていて納得して接種することができました。
予防接種先進国で感じたいろいろな意味での安心感。日本でも同じように感じることができる日が来ることを強く望んでやみません。
日本小児科学会「日本小児科学会の予防接種の同時接種に対する考え方」(2011年4月28日)
関嶋 梢 【フリーキャスター】
記事テーマ
それは、パパが待つサンフランシスコへ、一歳児を連れて二人だけの飛行機の旅から始まりました。初めての子育て、初めての飛行機、初めての海外生活…初めてづくしの生活はまさに波乱万丈!子供と過ごす海外生活や海外での“育児”と“育自”についてリポートします!