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名画の模写料理 "モネ 積みわら、夕陽(積みわら、日没)"/2012年11月

料理で名画を再現する方法

すっかり秋の気配から冬めいてきて、太陽の日差しも柔らかく、木々の日陰も薄らいできましたね。
今年も残りもうわずか。クリスマスや年末に向けて皆様はどんな準備を進めていらっしゃるのでしょうか。
 
前回までは、“たった3つのポイントで食卓が絵画に変身!”をテーマに、
主に食材そのものの色彩や食器の雰囲気がもたらす視覚的効果を利用して、
食卓を華やかに、そして普段と違った雰囲気に変えるポイントをご説明してきました。
 
今回からは、今までご説明したポイントをおさえて料理で名画を再現していきたいと思います。
11月の今回は、この季節を描いたモネの“積みわら、夕陽(積みわら、日没)”(ボストン美術館蔵)を題材に、模写料理を作ってみたいと思います。
 
モネ 積みわら、夕陽(積みわら、日没).jpg
画家 モネについて

絵画作品を紹介する前に、簡単にモネという画家についてご説明しておきたいと思います。
 
<Claude Monet (1840-1926)>
1840年にパリで生まれ、19歳で画家を目指してから約70年もの間に、500点を越える素描、
2000点余りの絵画を残し、絵画界に大偉業を成し遂げた一人です。
 
少年の頃は風刺画を描いており、これは彼の細部に対する鋭い視点が素質としてあったといえます。
この少年の画家としての才能が同じくフランス生まれの画家ウジェーヌ・ブーダンの目に留まり、
やがてその才能を開花させていきます。
その後パリに出てルノワールやピサロ、シスレー、マネらと出会い、古典的でアカデミックな従来の美術教育に反発することで団結し、交流を深めていきます。
そうして1874年、後に第1回印象派展と呼ばれる展覧会がパリで開催されました。
これはモネが出品した『印象・日の出』から名付けられたのですが、
当時は批評家たちから酷評の的となり、『印象などとばかげた主題だ!作品も未完成ではないか!』と散々だったそうです。
 
モネ 印象日の出.jpg
 
『印象・日の出』(1872年 パリ マルモッタン美術館蔵) 
 
生活も貧窮を極め続け、15年近く連れ添った妻カミーユを病で失うなどの辛い経験を通して、やがて1880年モネ40歳の頃から画風に変化が表れます。
『時間の経過と光の変化』に興味が注がれ、積み藁やポプラ並木、ルーアン大聖堂などを題材にした連作に挑戦していくのです。
 
モネ 積みわら、雪の朝.jpg  
『積みわら、雪の朝』(ボストン美術館蔵)
 
モネ ポプラ並木.jpg
『エプト川のポプラ並木、白と黄色の効果』(1891年フィラデルフィア美術館蔵)
 
モネ ルーアン大聖堂.jpg
『ルーアン大聖堂・昼』(1892-93 オルセー美術館蔵)
 
 
しだいに個展も成功するようになり、経済的にも安定した生活を送れるようになったモネは、フランスのジヴェルニーという土地に移り住み、この地で最期まで庭造りとその庭を描くことを続けました。
彼の晩年の名作、『睡蓮』もここで生まれたのです。
 
モネ 睡蓮、日本の橋.jpg
『睡蓮 緑のハーモニー』(オルセー美術館蔵)
 
1926年、ジヴェルニーの自宅で86歳の生涯を終えることになります。
今回のテーマ絵画『積みわら、夕陽(積みわら、日没)』について

モネ 積みわら、夕陽(積みわら、日没).jpg

先述の連作を手がけ始めた頃の”積みわら”を題材にした、

 

一連の作品群の中の一枚。
モネが最期までテーマとした、異なった光や気象条件の下で同一のモチーフからどれだけ豊かな変化を表現できるかを追い求めた代表例の一つといえます。
 
変化とは、主に3つをテーマにしていたと言われています。
対象物が刻々と変化してゆく状態の≪状態性≫、風景を描いた時間帯≪瞬間性≫、対象物の周囲を包む光の効果≪大気性≫、この3つをキャンバス上に表現しようとしました。
つまり、夕日の中の積みわらの(光の効果による)おぼろげで風景と溶け合うかのような描き方や、積みわらを包む大気と光が流動的に描かれているのは、そうした3つの変化を同時に表現したからなのです。
(引用元:モネ展1994年 カタログ、Salvastyle.com )

料理で模写してみましょう

この絵の特徴を、構図と色味の観点でご説明してみたいと思います。
 
まず構図の特徴としては、メインの主人公(積みわら)を手前に大きく配置し、主人公と背景のジャンプ率*が高めな構図といえます。
*ジャンプ率:大きさの比率
 
このジャンプ率を高めると、主人公がドラマティックに強調され、その分背景が遠景に小さく描かれるため開放的な印象となるのです。
(参考文献:「モネから学ぶ絵画テクニック」 深澤孝哉 グラフィック社)
 
色味の特徴としては、明暗のコントラストが少なく、同系色の多くの光の色を繊細に散りばめることで、全体には統一感のある色味となっています。
こうした複数の色を重ねることで色彩的にも重厚さを増し、全体に柔らかな表情となっています。
 
この特徴を踏まえて料理で模写してみました。
 
つみほアップ修正.jpg
 
様々な野菜の上にソテーした茄子と牛肉を井桁に積み、これを主役の積みわらに見たてて、手前に大きく盛りつけています。
 
秋茄子の美味しい季節、きのこのソテーなど旬のお野菜も摂れて季節感を盛り上げましょう。
積みわらの重厚感は、オイスターソースをベースにしたドレッシングとトマトをたっぷりとかけてボリューム感を出しています。
 
背景には、夕陽が映える畑の色の変化を見たてて緑、紫、オレンジ、茶色、そして黄色の素材を。
サラダ感覚で様々な野菜もたくさん召し上がっていただけます。
ドレッシングとして、卵黄、にんにくとオリーブオイルで仕上げたソースを添えました。
 
付け合わせとしては、畑の収穫にイメージを合わせて、“麦の穂”という意味のエピを添えてみましたが、いかがでしょうか(やや無理がありますかしら?)
 
ベーコンエピ.jpg
 
摘みわら全体.jpg
 
芸術の秋。
忙しくてなかなか美術館に行けない時でもこんな名画プレートで気分転換にお役に立てたら嬉しいです。
 
次回は、この“モネ 積みわら模写”の料理レシピをご紹介させていただきます。

Mama's profile/プロフィール

柏木 直子

柏木 直子 【パン&家庭料理教室主宰】

記事テーマ

たった3つのポイントで食卓が絵画に変身!

毎日の生活の中で家族が顔を合わせ、同じものを共有する唯一の時間が食事。だからこそ家族にワクワクした気持ちで食卓に座って欲しいし、何よりママ自身が楽しんで作れることが1番。家族の喜ぶ顔、それは美しい絵画に出会った時のはっとした嬉しい驚きと同じ。3つのポイントをおさえて献立を考えれば、いつもと少し違った家族の表情が見られるかもしれませんよ!

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