話せるようになった子どもは、まあよく話すこと。「ママ、ママ、きいてきいて!」
こちらに余裕があれば可愛いなあと受け止められるのですが、忙しい時、考えがまとまらない時、ついつい「ちょっと待って」と言ってしまいますよね。あるいは「はいはい」といい加減に聞いてしまったり、思わず「うるさい!」と言ってしまって後で落ち込む、なんてことも、私にはあります。理想は、全部を丁寧に聴いてあげられることなんですが、私たちだって、自分の思考や用事のペースがあります。いつでも子どもを最優先にはできないし、人が一緒に生活する中で、そんなことも経験だと考えています。
とはいえ、なるべく子どもの気持ちも受け止めつつ、こちらもストレスなく聞けるように、工夫できるといいですね。今回は、子どもの話を聞くときのコツを3つ、お伝えしたいと思います。
1つめのコツは、内容よりも「どんな気持ちなのかな?」というところに関心を持つことです。内容を聞き取ろうとすると、わかりにくかったり不条理だったりで大人の脳にはストレスに感じることがあるからです。
そんな時、オウム返しはとっても使えます。この連載の初回「イヤイヤ期のコミュニケーション」の項でもお伝えしました。子どもが、言った言葉を繰り返すだけ。ただその時に、子どもの気持ちも感じ取って、一緒に返してみてください。
「ママ、ちょうちょ!」と発見の喜びを表していたら
「ほんと!ちょうちょだね!」こちらも声の調子や表情に喜びを表現します。
すると子どもは、発見も喜びもわかちあえて、もっと嬉しくなります。
さらに大きい子の場合だと、もっと長くしゃべるのでどこを返せばいいのかわからなかったりします。
「ママ、きいて、あのね、Aくんがね、せんせいにね…」
こんな時は、リズムをあわせます。どんな気持ちかに気を向けると、子どもは言いたいことがあって気が急いている状態。「うん、うん、うん、」とあいづちをリズミカルに入れていって、途切れたところで、オウム返しです。「せんせいに?」
そうすると子どもは、そこからまた息を吸って「せんせいにね、おこられてね、泣いちゃったんだよ」とその先を話しやすくなります。文の終わりに「そう、泣いちゃったのね~」と結論(?)を繰り返すと、もっと話したければ続きますし、伝わった!と満足すれば「うん!」と話が終わります。
返事をしようと思うと頭を使いますが、気持ちを合わせてオウム返しをする、というやり方は、慣れるととっても気楽なんです。餅つきの、餅をひっくり返す役をイメージしてください。杵が上がった瞬間に合いの手をいれる、あの要領です。
子どもは多くの場合、ママの答を聞きたいんじゃなくて、「自分の話を聞いて欲しい」のです。こちらは「気持ちを感じとって、うまく話せるようにサポートする」役だと思ってみてください。
泣いちゃったAくんのことや、怒った先生のことは、気になるかもしれませんが、子ども本人が伝えたいことと違っていれば、あえて話題にしなくてもよいのです。
「Aくんは怒られるようなことしたの?」とか「B先生っていつも怒ってるの?」とか「あなたは怒られる時あるの?」とかの質問は、子どもの話したいことからそれて、ママが欲しい情報を訊いているんですね。
「私はいつも子どもの話をちゃんと聞いてる」と思っていても、意外に本人の話したいことは受け止められてなくて、こちらの欲しい情報を訊くだけの時間になっていたりするかもしれません。
「この子は今、どんな気持ちなのかな?何をわかって欲しいのかな?」という視点で聴くことを、ぜひ試してみてください。
2つ目のコツは、断り方です。こちらに余裕のない時には、いくら聴いてあげようとしても無理があります。半端に聞いて「ねえママってば!」と怒られたり、対応しきれなくて「うるさい!」と一喝してしまったり…。お互いのために、いさぎよく断ってみましょう。
断る時は、
・今できない理由
・聴きたい気持ちがあること
・いつならできるか
の3つを伝えることがポイントです。
「ごめんね、今お仕事してるから、あと5分待ってもらえる?そのあとで聴かせて!」
「学校のこと、話したいんだね。ママもゆっくり聴きたいから、ご飯の時でもいい?今は急いで夕飯を作ってしまいたいの。静かなほうがはかどるから、できあがったらご飯食べながらお話ししよう。」
子どもって、言葉だけでなく「言い方」もすぐに覚えるんです。我が家の小学生の娘は、お手伝いを頼むと「今テレビが面白いから、コマーシャルの時でもいい?」なんて言葉が返ってきます。こちらとしては理由もわかって、やる気もあるなら、と穏やかに答えられます。「うん、寝る前までに必ずやってね、ありがとう、助かるよ」と私が言えたらパーフェクトです。(そう、お礼を言い忘れたり、期限を提示せずに失敗することも多々あります…)
いつもいつも完璧でなくとも、理想的な聴き方・伝え方を少しづつ取り入れていって、「うまくいった気持ちよい経験」を増やしていくことが大人にも子どもにも、大切なのではないでしょうか。
もちろん、後で聴くという約束は、ちゃんと守ってくださいね!「ママが忘れてたら言ってね」と付け加えておけば大丈夫。
子どもの話を聴く、3つ目のコツは、否定しないことです。
これも本当に、修行というか、練習が必要です。教育的に「正したい」と思ってしまったり、自分の価値観からずれていることに対して、反射的に否定してしまうことがあります。
「そんなのダメでしょ」
「あ~あ、なんでそんなことしたの」
「それはあなたが悪い」
「意味わかんない」
どれも、自分が言われたとしたらとても傷つく言葉ですね。子どもの話の内容に、驚くことはあっていいのですが、これらの否定語が出かかったら、ちょっと待って。一呼吸。1つ目のコツに戻ってください。
「この子は今、どんな気持ちなのかな?何をわかって欲しいのかな?」
それを受け止めてから、「ママね、いまのお話で気になってることがあるんだけど聞いてくれる?」とこちらの話を聞いてもらうのです。ママはここが気になっている、こうしてほしいと思っている、こうなるんじゃないかと心配している…、そんな風に話してみてください。
自分が言ったことを否定されるのと、言ったことについてのママの考えを聞くことは、大きく違います。大人だったら、こんなシーンに例えられるでしょう。職場で上司に何かを報告した時、いきなり否定されたり、怒られたらどうですか?怖いし傷つくし、次から何かを伝えるのに構えてしまいますよね。また怒られるかも?あの上司、私のやり方がいつも気に入らないんだわ。今回も何か外してたらどうしよう…。
一方、こんな上司ならどうでしょう。報告を最後まで聞いてくれて、こちらの気持ちに寄り添って、意図を理解してくれた後で、上司の考えや「もっとこうして欲しかった」などの希望を伝えてもらえたら。お互いに気持ち良く仕事ができますね。何かあったら相談しながら仕事していける信頼関係も築けます。
子どもの話で一番聴いてあげたいことは、悲しかったり、悔しかったり、困っていたりすることではないでしょうか。そんな時に誰にも相談できない子どもたちがいることは、なんとつらいことでしょう。深刻化するいじめや、子どもの自殺のニュースを目にするにつけ自問するのは、「何かあったら相談できる人として、私は自分の子どもたちに認めてもらえているかな?」ということです。
ちょっと不安にさせるような話になってしまいましたが、これを読んだ方は大丈夫(!?)。人間関係は、積み重ねです。赤ちゃんの頃から、幼児の頃から、「親子の関係をよりよくしていきたい」「子どもたちに幸せになってほしい」そんな意識を持って接していることが、その心が伝わっていることこそが、ノウハウよりも大切なことですよね。
コミュニケーションをお伝えしている私自身、うまくいったりいかなかったりの日常です。子どもたちと一緒に成長しながら、失敗しながら、「よりよくしたい」と意識しなおす毎日です。
●気持ちを聴く
●聴けない時には断る(余裕を作ってから聴く)
●否定せずに聴く
3つのコツが多くの家庭で生かされて、あたたかいコミュニケーションが広がっていくことを願っています。
コツがわかってもなんだか聞けない、という時には、あなたの中に「聴いてほしいこと」がたまっているのかもしれません。否定せずに気持ちをわかちあってもらえる場は、大人にも必要なんですよね!
ココロの声を聴く、聴き方。
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合言葉は、人生をおいしく・楽しく・美しく♪
高橋 ライチ 【コミュニケーション・カウンセラー】
記事テーマ
子どもたちには、幸せになって欲しい!ママたちの共通の願いですね。豊かなココロを育て、人とつながる「コミュニケーション力」を育み、社会へ送り出しましょう。ブライト・コミュニケーションを実践していくと、ママの人間関係もぐっとラクに楽しくなりますよ。