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子どもがほんとうに言いたかったことは?/2012年11月

望んでいることはなあに?

「この人、ほんとうに言いたいことは別にあるんじゃない?」

日々のコミュニケーションでそう思うことはありませんか?
ブライト・リスニング講座では、話している人の言葉だけでなく、その向こうにある「ほんとうに言いたいこと=望んでいることの本質」を聴くことを練習していきます。
子どもとのコミュニケーションでは特に、未整理だったり、思いつきでそれていったりする話から「言いたいこと=望んでいることの本質」を引き出すのには、コツと、時には根気が必要です。
今回は、講座に参加された方の息子さんとの体験談がすてきだったので、ご本人の許可を得て、シェアさせていただきます。みなさんのヒントになれば!
「保育園におもちゃを持っていきたい!」

ある日、A子さんの息子Bくん(5歳)が「ぼくの電車の本を保育園に持って行きたい」と言い出しました。

A子さんは「個人のおもちゃを保育園に持ち込んでもいいのかしら?」と思いました。なくなったり壊れたりしないように、持っていってはいけないルールがあるかもしれない。最近転園したばかりだから先生に確認しなくちゃ。
A子さんはBくんがなぜそんなことを言い出したのか訊いてみました。Bくんの話を総合すると、ひとりのお友だちがおうちから持ってきた何かを、クラスのみんなで見たとか遊んだとかの出来事があったらしいのです。
「だからぼくも持っていく。この電車の本がいい。みんなでこれを見るの」
A子さんは、電車の本はクラス全員にシェアするような共通のテーマではないように思えるし、お気に入りのものを他の子たちに貸してあげられるのかという心配などがあり、どうも彼の思い付きにあまり賛同できませんでした。
提案から、聴く体制にチェンジ!

A子さんは、Bくんに別の提案をしてみます。

「保育園では保育園のおもちゃで遊んで、おうちではおうちのおもちゃで、がいいんじゃない?」
「お友だちとこの本を見たいなら、おうちに何人かお友だちを呼ぼうか?」
「持ってっていいか、まず先生に訊いてみないとわからないよ」
Bくんは、首を横に振りつづけます。説得に疲れたA子さんは、Bくんの話を聴くことにしました。
「クラスのみ~んなで、ぼくの本を見るの」
「そうか、何人かじゃなくてみ~んなで、がいいんだね」
聴いていくうちに
「ぼくがひとりで見るの」と話が変わってきました。
「え?みんなでじゃないの?」
よ~くよ~く聴いていくとBくんの口から出てきたのは
「おうちの絵本があると安心するの」という気持ちだったのです!
深く理解し、共感をすると

「そうか、保育園でも、安心したかったんだね・・・」

A子さんは、説得しなきゃと力んでいた身体の力がふっと抜けるのを感じました。突然、Bくんの気持ちがリアルに想像できたのです。
転園してからずっと、違う環境の中でなんとか自分の居場所をつくってきたんだよね。緊張したり違和感を感じたりしながら、適応してきたんだよね。すでにできているつながりの中へ、うまく入れる日も入れない日もあるよね。お友だちのひとりが、何か自分のものを持ってきてその子を中心にクラスが盛り上がった時、自分もその輪の中心になりたいって思ったんだね・・・。
A子さんには、Bくんが直接語っていない、Bくんの心の動きを感じ取ることができたのです。すると、説得しなきゃという気持ちもどこかにいってしまいました。ただただBくんを抱きしめたいような、いとおしい、そばにいたい、そんなあたたかい気持ち。相手を深く理解し、共感をすると、相手を変えようという力から解き放たれて、ほっとします。対立が消え、穏やかな状態がやってきます。
方法はいくらでもある

結局、Bくんが本を持って行ったかどうかその後の話は聞いていないのですが、とにかくその夜は、我が子の現在を理解したA子さんと、わかってもらえたBくんは安らかな眠りについたことでしょう。A子さん母子にとって、Bくんが新しい環境で頑張っていることが実感をともなって理解できたことは大きなギフトです。

Bくんが「保育園を自分の居場所として、安心してのびのびと過ごせるようになること」を求めているんだということが、A子さんにわかったのですから、そのためにできる方法は電車の本を持っていくこと、に限りません。早めに登園して遊びやすくすることかもしれないし、安心のおまじないをすることかもしれないし、仲のいい子を増やしていくために土日に遊ぶ約束をするのかもしれない。見守る、勇気づける、を意識してやることを選んでもいいし、先生にこのできごとを話して、Bくんがクラスで注目される瞬間をつくってもらうようにしたり、こまめに声掛けしてもらったり・・・方法はいくらでもありそうです。
「言うことをきかせる」より「ほんとに言いたいことを聴いてみる」

A子さんの体験談を聞いて、母が子どもの話をこんな風に聴いてあげることは、どれだけ親子関係を、確かなものにするだろうかと私は心から嬉しくなりました。

「こうしたい」と子どもが言い出せること。言葉や方法にとらわれずに、望んでいることの本質を、大人が聴けること。すべての子どもたちに、そんな場が保障されることを願っています。親に限らず、関わる大人の誰かしらに、聴いてもらえるように。
はじめA子さんからの提案が全然受け入れられなかったのは、Bくんの中にいっぱい想いがつまっていたからなんです。丁寧に寄り添って聴いていくと、ほんとうに話したいことはあとから出てきます。どうぞその宝物にたどりつくまで、聴いてみてくださいね!
こちらから伝えたいことがあっても、相手がいっぱいいっぱいの時には、スペースを作ってあげる必要があります。聴いてもらうことで、気持ちが出せて、本当に言いたかったことが伝わった時、心にスペースができます。そしてようやく、どうしたらいいかを考えたり、こちらの意図を伝えたりができる状態になります。
「言うことをきかせようとする」のでなく、まず相手の「言いたいことを聴いてみる」。心掛けてみてください。
もし、聴くことができない自分に気づいたら・・・その時は、私たち自身が誰かに話を聴いてもらったほうがいいですね! 大人だって、心にスペースを作らないと理解も共感もする余裕がないですから。

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Mama's profile/プロフィール

高橋 ライチ

高橋 ライチ 【コミュニケーション・カウンセラー】

記事テーマ

「ココロを育てる 聴き方・伝え方♪」

子どもたちには、幸せになって欲しい!ママたちの共通の願いですね。豊かなココロを育て、人とつながる「コミュニケーション力」を育み、社会へ送り出しましょう。ブライト・コミュニケーションを実践していくと、ママの人間関係もぐっとラクに楽しくなりますよ。

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