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「失敗」とのつきあい方 その1/2012年9月

人生は失敗の連続?

子どもは成長していく中で、さまざまな失敗を経験します。その失敗も、だんだん複雑になってきます。

最初は、ボタンを自分でとめたいけどうまくできない、とかトイレに行くのに間に合わなかった、なんて大人のフォローで徐々に上手くなることがらばかり。

それが次第に、みんなの前で台詞をうまく言えなかった、係の仕事が進まない、図書館の本を失くしてしまった、友だちを怒らせてしまった、学校の物を壊してしまった、試験にパスしなかった…。などなど、大人が経験するような出来事に近くなっていきます。
人生次から次へと新しい課題がやってきますが、大人だってうまくいくときもあればいかないときもありますね。それを、どんなふうにとらえて、どう乗り越えるか。
今回は、「失敗とのつきあい方」を学ぶことについて、お伝えします。
あなたは早く忘れる派?とことん反省派?

さあ、まずは自分について考えてみましょう。

失敗した時のあなたは、どんなふうに対処していますか?
さっと気持ちを切り替える人、とことん反省する人。
これからの対処に集中する人、原因追求がどうしても気になる人、責任追及が大事な人、気持ちの落ち込みでしばらく真っ白(真っ暗)になる人、早く忘れようとする人、などいろいろ。
それから、パパはどうでしょう?
大人でも、失敗に対する対処法はずいぶん違いますよね。
ではお子さんに目線を移して「この子が大人になった時にどんなふうに失敗に対処する人になってほしいかな?」と考えてみてください。
大切にしたい価値観を、夫婦でも話しあえるとベターです。もちろん夫婦で違っていてもいいのです。二人の価値観と、子どもの個性をみながら、その子なりの失敗に対応する力を育んでいけるといいですね。
失敗した原因より「気持ち」を想像してみる

では小さな例で考えてみましょう。

食事中、ちょっと台所にものを取りにいったら、4歳の子が麦茶のポットをひっくり返していた…!

とっさに拭いて、現場の応急処置をした後で、何をしますか?
もしもあなたが原因が気になるとしても、ちょっと待って。
まずは、子どもの「気持ち」を聴いてみましょう。
よくやりがちな「何やってるの!」から始まる、怒りながらの原因追及。これって、実はママの混乱や興奮の発散だったりするんです。
子どもにとっては原因ばかり訊かれると、自分が悪い、ということがクローズアップされてしまい、責められてるように受け取りやすいのです。大好きなママに責められたら落ち込むか、反発するか、とにかく前向きな気持ちにはなりにくいですよね。
「もういい、もういらない!」
「だってママが悪いんだもん!」
「弟が急に押したから…」
こんな言葉は、自分は悪くないよ、怒らないで!責めないで!わかって、ママ!という気持ちから出てきます。
こんなサインが見えたら、深呼吸して、子どもの「気持ち」にフォーカスしてみましょう。
わかって欲しいのですから、わかろうとする気持ちで、想像してみます。この子の目線で、この子の器用さで、それをやろうとしたときの最初の気持ちは?挑戦なのかな?それともお手伝い?ただ、のどがかわいていたから?で、うまくいかなかったんだよね、くやしいよね、この手の大きさにこの麦茶ポットは持ちづらいんだよね…。
プロセスを再現ビデオで観るように状況を描き、気持ちを補足して想像します。
想像した気持ちや状況を尋ねながら、整理する

子どもの気持ちが想像できたら、言葉でも尋ねてみます。

「自分でお茶を注ぎたかったんだね。挑戦したかったのかな。ママが忙しそうだから、自分でやろう、ってお手伝いの気持ちもあったのかな?」
決めつけずに、こういうことかしら?と差し出してくださいね。
頷くようならば続けます。
「そうか、ありがとうね。でも失敗して、びっくりしちゃったね。うわ~!お手伝いしようとしたのに、全部こぼれちゃった!ってしまった!と思うよね。できるつもりだったのにできなくて、悔しい気持ちもあったかな。」
頷いたり、否定したり、お子さんの言葉が何か出てくるようならじっと聴きます。オウム返しで、その言葉を繰り返して味わってみてください。
「手がすべったんだもん」
「そうか、手がすべったんだね。」
「うん、つるって」
「つるって、すべったんだね。このポット重たいもんね。●ちゃんには長いしね。ママでもお茶が満タンだと重いから、●ちゃんの小さな手にはすご~く重くて持ちにくかったね。つるってなって、ひっくり返っちゃったんだね。」
子どもの言葉に補足して、絵本の文章のように、理解がしやすいように繰り返しながら状況と、理由と、気持ちをまとめていきます。
すると、子どもが本当にしたかった意図や、こちらからは見えなかった事情も教えてくれたりします。
そうだったの…!と意外な理由に驚くこともしばしばです。
子ども自身も、今自分の身に何が起きたのかをあらためて整理できて、それをママと共有できたことで落ち着いてきます。
この繰り返しで、ママのいない時の出来事も、自分の気持ちも、わかるように話せるようになってきますよ。
決めつけで「指導」すると

ただ原因&結果をぱっとみて、すぐに決めつけた言葉をかけるとこうなります。

「このポットは重すぎるからやめようね」
「お茶欲しいときはママに言ってね。こぼしちゃうでしょ」
これは穏やかなほう。でも、違う事情があった時には、子どもはその気持ちを飲み込んでしまうかもしれません。
もっと私がテンパっている時にはこんな風に言ってました。
「またよそ見してたんでしょ!」
「あんたは余計なことしなくていいの!」
…書いているとドキドキしてしまうのですが、実際に私が、自分の子どもたちにしてしまっていた対応です。
気持ちを聴く、なんて当時は思いついてもいませんでした。こぼれたものの処理、これからは気をつけなさいとかこれは持っちゃダメとかの指示と禁止。
きつく言うことが育児・しつけだとすら思っていました。
この対応から子どもたちが学んだことは、なんだったのでしょう。
「怒られないように、このポットにはもうさわらない」
「自分ってダメな子だなあ」
「自分にはできないことがたくさんある」
「ママは私のこと嫌いなんだ」
「食事は楽しくない、ママがすぐ怒るから」
「怒られないように、このポットは隠れて使おう」(!?)
想像すると、子どもによって性格で違っていることもありそうです。
ともあれ、どの学びも親には嬉しくないですね。伝えたくない、不本意なメッセージです。
「失敗に対応する力」なんてとてもサポートできてなかったな、というのが今の実感です。
いつからでも、今からでも

コミュニケーションを研究しだしてから、子どもの気持ちを聴くようにしてみると、じつに彼らがいろいろ感じ、考えていることがわかりました。私とは違う思考をする別人なんだなあとあらためて気づかされます。

私がこんなふうにしようと思い至ったのは幼児期を過ぎ、下の子が小学校に入ってからでした。それでも、彼女はメキメキと、意図と状況などを説明できるようになっていきました。3年生くらいからは反抗期も手伝って、嘘もつくし意地もはるし、かんしゃくも起こしますが、あとから落ち着いて話すことで、和解できる信頼感はお互いにとってとても心強いです。

未熟な母である私は、理想とは程遠い対応を、いまだにしてしまうことが多々あります。それでもまた「気持ちをわかろうとする」ことに立ち返ろう、と思えます。
気持ちがわかりあえた、いま通じ合ったね、という時の娘とのあいだのあたたかいものがあまりに素晴らしいからです。私の子どもの頃の記憶には、わかってもらえなかった体験がたくさん積み重なっています。行き場がなくて押し込まれて固くなった気持ちが、少しずつ温かく溶けていくのが、子どもとのコミュニケーションで感じられるのです。
どうぞ多くの親子のあいだに、この温かいつながりが感じられますように。
いつからでも、今からでも、「気持ちを聴くこと」を試してみてください。

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高橋 ライチ

高橋 ライチ 【コミュニケーション・カウンセラー】

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