不登校児にかかわっているスクールカウンセラーの人は、不登校になる子どもの共通点として「感情の表現ができない」ということをあげています。自分の感情と、その感情を表す語彙が一致しないというのです。
中学校の保健室に登校する子どもたちは、自分の感情の認識ができません。保健室には「今の気持ちをチェックしましょう」という、感情が書いてあるシート(□イライラ □怒り □悲しい等)があり、これに✔を入れないと自分の感情の確認ができない子どもが多いそうです。そのカウンセラーの先生は幼児期に親や先生が感情を表す言葉を数多く知り、そしてその言葉を使うことを勧められていました。
皆さん感情を表す言葉を使っていますか。子どもに「辛かったな」「焦るよね」「悲しいね」「腹立つな」という言葉を使って、子どもの気持ちを代弁してあげていますか。
これを「共感」といいます。共感されると子どもは自分を理解してくれたと感じ、自分にそして親にOKを出せるのです。「It’s OK to be here !」です。愛される実感を持ち、居場所を確認できるのです。
さらに私は大切なことがあると思います。それは幼児期に「存分に感情を表現すること」です。
お子さんは思いっきり笑っていますか。あそびに夢中になっていますか。悲しむ経験や悔しい経験をしていますか。人間の基本感情は「喜び、恐れ、悲しみ、怒り」です。これらの感情は生まれながらに持っている基本感情です。これらを存分に発揮する経験が少なくはありませんか。
例えば、怒りという感情を100感じているとします。100表現できる子は将来怒りを感じたとき、100までコントロールすることができます。
「今は怒りを60感じている。これ以上僕にいやなことを続けるならば、僕は100の怒りのパワーを使い反撃するぞ。」と調整できるのです。
しかし100の怒りがあるにもかかわらず、40しか表現したことのない人は、「これ以上怒りを出したらどうなるだろう。きっとひどいことになるに違いない。だから怒りの感情は抑えておこう」と閉じこもるか、コントロールできず切れてしまうかです。
車の運転と同じですね。100キロで走ったことのある人は100キロまでコントロールできます。しかし40キロしか出したことのない人は高速道路を走ることに恐怖を感じます。
テーマパークに家族で行ったときの話です。夜にパレードがありました。子どもは大はしゃぎです。きらきらと光り輝くライトの中で夢のようです。
しかし突然娘が泣き出しました。「パパ、あれ怖い」と。見ると黒い服を着た恐ろしい怪物みたいなものが近づいてくるではありませんか。娘はそれを見て恐怖のあまり泣き出したのです。そのときは「何で楽しい夢の世界にこんな恐ろしい出し物があるのか」と私は怒りを感じました。
しかし今は意味がわかります。恐怖の感情の発揮も大切なのです。そしてそのとき親が保護してあげるかかわりが大切なのです。
「大丈夫。パパがいるから」と言うと私に抱っこされ、その怪物が過ぎ去るのを娘はじっと見ていました。そのとたん、いつもの娘に戻っていました。
恐怖の体験はあまり多く経験することは必要ではありませんが、恐れを知らない子は暴走してしまいます。そして恐怖からは守られないといけません。そんな経験が子どもには必要です。
これらの感情を存分に発揮するためには「あそび」がいいですね。
夢中になることが大切です。夢中になるから喜びがあります。夢中になって造った砂場の山を妹に壊されると真剣に怒りますね。夢中になるからこそ悲しみも出てきます。
子どもに夢中になる時間を保証してあげましょう。存分にあそばせてあげましょう。あそぶことにより存分に感情を表現できます。
そして共感してあげましょう。共感する感情の言葉を多く使いましょう。そのことによりストレスを溜め込むのではなく、感情を上手にコントロールできる子どもになります。多くの実体験が子どもの成長には欠かせませんね。
松井 直輝 先生
大阪生まれ。佛教大学社会学部を卒業後、学校法人泉新学園に勤務。97年、国際TA協会公認の交流分析士(教育)の資格を取得。99年には国際TA協会公認の准教授メンバー(教育)の資格を日本人で初めて取得する。2001年、学校法人泉新学園の学園長に就任。晴美台幼稚園(大阪府堺市)、城山台幼稚園、三石台幼稚園(和歌山県橋本市)以上3園の園長を兼任する。現在、教育システム研究所の所長ほか、大阪府松原市教育委員、子育てと教育支援のNPO法人エンジェルサポートアソシエーションの理事長など多岐にわたって活動中。
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