「態度教育」とは哲学者の森信三先生の立腰教育、しつけの三原則に食育を加えた5項目を総称して表した言葉です。幼児期から大人の教育までを含めておりますので言葉の響きとして少し硬い印象もありますが、5つの基本は同じです。どのような内容かと申しますと、① 挨拶をする ② 返事をする ③ はきものをそろえる ④ 姿勢を正す ⑤ 食事のマナーを身につける(食育を含む)というものです。どうでしょうか、あたりまえのことですね。しかし、これらのことは小学校の高学年になると改めて身につけることは相当難しいことです。しつけは「ツ」のつく間までがポイントです。「ツ」のつく間というのは、一つ、二つと数えられる年齢です。九つ(小学4年)までに基本的なしつけはお子さまに身につけさせてあげたいですね。
さて、態度教育(しつけ)の具体的なポイントを説明します。「子は親の背中を見て育つ」という言葉があります。シンプルな習慣で伸びる子の基本が身につきます。これらをヒントに何かひとつでもご家庭で取り組めることを探してみてください。
①挨拶
挨拶は「信頼関係の第一歩」です。心を相手に向けることに意味があります。自分の存在が認められ、愛される実感があることで、基本的信頼感や自己肯定感が生まれます。ポイントは「語先後礼」で言葉が先で礼が後、体を相手に正対し足をそろえて丁寧に行うことが大切です。
② 返事
返事は「尊敬の第一歩」です。相手を大切にする心、人の話を聴く心の準備です。漢字にすると返事の「ハイ」は拝啓の「拝」、人を敬う気持ちが大切で す。「ハイ」という返事は心のコップを上に向かせます。「素直」の元が「ハイ」の返事です。親がお手本を示しましょう。
③ はきものをそろえる
物事にははじまりと終わりがあります。はきものをそろえるということは、物と心のけじめです。「けじめの第一歩」です。このことをはきもの指導から身につけていきます。ポイントは心を込めて両手で行うことです。
④ 姿勢を正す(立腰)
姿勢を正すためには心と体をコントロールする必要があります。そのことが心を強くします。皆さんもご家庭で夕食の前に1秒でいいですから姿勢を正しくすることをお子さまに試してみてください。ポイントは毎日の継続です。姿勢を正すことは「人間の土台」をつくることです。
⑤ 食事のマナー(食育)
食は「健康の土台」「命への感謝」です。命をいただくことによって私たち人間は生かされていることを伝えます。しっかり手を合わせて「いただきます」「ごちそうさまでした」の挨拶をします。食事のマナーはお箸、お茶碗の持ち方から食後の歯磨きまでです。食事の手抜きは子育ての手抜きに直結します。食への感謝とともにまずは大人が食に関心を持ちましょう。
私は27年間、幼児教育に携わってきまして、その経験を通じてわかったことは、子育てで大切なことは「愛される実感」と「しつけ」ということです。特に幼児期には「愛される実感」が必要です。
今の日本は家庭教育をはじめ学校教育、社会人教育の中で人格を育てる教育が崩壊しています。豊かで便利なこの時代では親も子も「我慢」をすることもなく、自分を律する力(コントロールする力)がなくなっています。私はこのことの重要性を以前より強く感じており、自園で「社会に貢献できる自律した人間を育てる」ことを教育目標とし、この「愛される実感」と「しつけ」を大切にした子どもたちの教育を行ってきました。
その教育を実践するためには、まず先生が子ども、保護者のお手本となるきちんとした挨拶や返事、立ち居振る舞い、姿勢、マナーができなければならないと思い、研修や毎日の朝礼を通じて先生の教育から取り組みました。今までにその職員の朝礼に全国から1000名もの方が見学に来られています。また、NPO法人としても活動主旨に賛同された全国の幼稚園、保育園と協力して職員研修会や保護者講演会も多数、実施しております。
松井 直輝 先生
大阪生まれ。佛教大学社会学部を卒業後、学校法人泉新学園に勤務。97年、国際TA協会公認の交流分析士(教育)の資格を取得。99年には国際TA協会公認の准教授メンバー(教育)の資格を日本人で初めて取得する。2001年、学校法人泉新学園の学園長に就任。晴美台幼稚園(大阪府堺市)、城山台幼稚 園、 三石台幼稚園(和歌山県橋本市)以上3園の園長を兼任する。現在、教育システム研究所の所長ほか、大阪府倫理法人会監査、子育てと教育支援のNPO法人エンジェルサポートアソシエーションの理事長など多岐にわたって活動中。
【お知らせ】
平成24年7月28日(土)橋本市教育文化会館にて、松井 直輝先生の子育て講演会『子育てで大切なこと~0歳からはじめるプラス5のしつけ~』が開催されました。
講演の様子は後日報告いたしますので、お待ちください。
Copyright © 2011 Mikihouse child & family research and marketing institute inc. All rights reserved.