文/Happy-Note For マタニティ 出産準備家電 家電ジャーナリスト 近藤克己
(更新日:2019.09.10)
前回は離乳食づくりのために役に立つ家電を紹介しました。今回は、離乳食の保存にも役立つ冷蔵庫を解説します。食材を新鮮かつ安全にストックするだけでなく、作り置きした料理も美味しく保存できる最新冷蔵庫は、まとめて作った離乳食の保存にピッタリです。
家電ジャーナリストなんて肩書を名乗っていると、オススメ家電を訊かれることが多々あります。特に多いのが炊飯器と冷蔵庫。炊飯器の場合、個人個人で味の好みが異なるので一概にオススメを言うことは難しいのですが、冷蔵庫も「どれが良いの?」という漠然とした問いには答えづらい製品です。というのも、家族構成、生活スタイル、生活ステージ、食生活、食文化などによって買うべきモデルが異なるからです。冷蔵庫は購入したら10年は使う家電です。今の生活スタイルだけでなく、これからの10年間の生活を想像し、夫婦でじっくり吟味してから購入しましょう。
冷蔵庫選びでもっとも重要なのがサイズ選びです。今は夫婦2人なので容量330Lモデルで十分でも、子供ができるとそれでは足りなくなります。産休・育休が明けて仕事に復帰するようになると、週末やネットスーパー、宅配などでのまとめ買いが増えたり、週末にお惣菜やおかずをまとめて作ったりして冷蔵室・冷凍室がすぐにいっぱいになります。お弁当が必要な学校に通うようになったり、スポーツ系の習い事に行くようになるとお弁当のために冷凍食品が増え、冷凍庫がパンパンに。子供が成長するにつれて冷蔵庫の中身が変わり、それに伴って必要な機能も変わってくるのです。
「容量が大きくなれば電気代も高くなるのでは?」と疑問を持つ人も多いと思いますが、実はそうでもないのです。モデルによっては大容量のほうが電気代が安くなる場合があります。例えば三菱電機の場合、330Lモデルの年間消費電力量は330kWhですが、470Lモデルは245kWh、600Lモデルは270kWh、700Lモデルでも310kWhと、いずれも330Lより低くなっています。大容量モデルにはインバーター制御や真空断熱材などの最新の省エネ技術が投入されており、逆に少容量モデルはコストを抑えるため高性能な最新技術が省かれているがゆえです。また、少容量の冷蔵室にギュウギュウに食材を詰め込むと冷気の通り道がなくって冷蔵効率が落ち、冷蔵庫はもっと冷やそうとして常にフルパワーとなり、かえって電気代がかさみます。大容量モデルに余裕をもって保存したほうが、少ないパワーで食材を冷やすことができて電気代が安くすむのです。
最新の冷蔵庫は真空断熱技術の進歩により壁面を薄く作れるようになったので、一昔前に比べると本体がスリムになりました。また三菱の例を出すと、450Lと330Lモデルの横幅は同じ60cmです。さらに、放熱技術の進歩により冷蔵庫の両脇・背面の隙間も1cm空けるだけで済みます。設置面積が小さくなったことも大容量モデルの購入の後押しとなるでしょう。なお、最近の冷蔵庫は天面からも放熱するので、鍋などの物を置くのはやめましょう。ホコリ防止のためにラップを被せるのなんて論外。故障の原因になるので絶対にやってはいけませんよ。
それでは次に、メーカーごとに特徴を見ていきましょう。冷蔵庫はメーカーによって大きく特徴が分かれ、それが選び方に直結します。自分が何を重視するのか、今後どのような生活を望んでいるのかを考え、わが家にぴったりの冷蔵庫を選びましょう。
まとめ買いしたお肉は冷凍保存しているけど、冷凍する前に小分けするのは面倒だし、いちいち解凍するのも大変、野菜はそもそも生のまま冷凍できないから1週間程度で使い切らなければいけないし…そんな悩みを解決してくれるのが、三菱電機の「切れちゃう瞬冷凍A.I.」です。一般的な冷凍室の温度が−20℃から−18℃なのに対し、切れちゃう瞬冷凍は約−7℃で凍らせます。これにより、凍ったままなのに挽き肉は包丁で切れ、バラ肉や魚の切り身は一枚一枚を剥がすことができます。凍ったまま使う分だけ取り分けられるのは便利。また、取り分けたお肉は解凍せずにそのまま調理できるので、解凍によるドリップで旨味が損なわれずにすむのです。
ホワイトソースやグラタン、カレー、シチューなどを瞬冷凍すれば、食べる分だけスプーンですくって温めればOK。離乳食も週末にまとめて作って瞬冷凍しておけば、食べる分だけちょっとずづすくって、温めてから食べさせることができます。今年の最新モデルからは生野菜も瞬冷凍できるようになりました。これまで野菜は一度調理してからしか冷凍できませんでしたが、生のままで瞬冷凍でき、さらに冷凍なのにパラパラと手でほぐせるので、まとめて買ったカット野菜やもやしなども無駄にせずにすみます。お惣菜を瞬冷凍して、凍ったままお弁当箱に入れればお昼には自然解凍して食べごろになります。お弁当が必要になる時期にも瞬冷凍は大活躍! なお、切れちゃう瞬冷凍による保存期間は肉・魚は約2~3週間、生野菜は約2週間です。(三菱電機 MXシリーズ)
トランスフォームという表現はいささか大げさではありますが、冷蔵庫各室の温度設定を自由に変更できる、これまでにない画期的な製品を日立は開発しました。それが「ぴったりセレクト」です。一般的な冷蔵庫は上半分が冷蔵室、その下に製氷室・冷凍小室、野菜室、冷凍室という順番でレイアウトされていますが、KXシリーズはこのレイアウトをユーザーが自由に変更できるのです。
まず、下の2段を3つの温度帯で自由に組み合わせることが可能。例えば、夫婦共働きで子供はお弁当が必要だったり、冷凍食品のまとめ買いや週末まとめて調理して冷凍することが多い家庭は、冷凍室/冷凍室と2段ともに冷凍室に。野菜は買ったらすぐに食べるから野菜室は不要だったり、お酒をよく飲む夫婦は冷凍室とお酒用に冷蔵室、という組み合わせ。野菜を多く食べる家庭には野菜室/冷凍室と、取り出しやすい真ん中に野菜室をレイアウト。普段は一般的なレイアウトだけど、年末年始に家族が帰省して大人数になる場合は2段ともに冷蔵室に。このように、家族構成、家族の成長、ライフスタイル変化、季節要因などで自由に使い方を変えられるのです。
上の最も大きい冷蔵室全体をチルドルームに変えることもできます。一般的な冷蔵室の温度が3-6℃なのに対して、チルドルームは0-2℃。ハムや生肉、刺し身、賞味期限の近い食品などすぐに食べる食材の保存に重宝する機能です。しかし、これまでチルドルームは冷蔵室の最下段に設置されていてスペースが少なく、生肉や生魚を入れるとすぐにいっぱいになるのが悩みのタネでした。そこで日立では、冷蔵室全体をチルドルームにしてしまったのです。これにより、より多くの食材の鮮度が長持ちできるようになりました。約−1℃の特選氷温ルームも搭載しているので、刺し身などは乾燥を抑えながらより新鮮に保存できます。(日立 KXシリーズ)
一般的な550L前後の冷蔵庫の冷凍スペース(製氷室含む)は150L程度ですが、シャープのメガフリーザーは189Lもあります。しかも、最も大きい下段冷凍室は3段に分かれており、1段目の引き出しには前後左右自在に動く4仕切りがあるので、たくさんの食材も見やすく分けて収納できます。お取り寄せが多い、ネットスーパーでまとめ買いが多い、お父さん・お母さん・成長した子どものお弁当が必要、作り置きの多い、といった家庭にはぴったりの冷蔵庫です。また、通常よりさらに低温で冷凍し、霜取り運転前やドア開閉後に急冷して温度上昇を防ぐ「新鮮冷凍」機能により霜付きが抑えられるので、食品の鮮度が長持ちします。たっぷり入って鮮度を守る。冷凍派におすすめです。
近年は真ん中から観音開きになるフレンチドアが人気ですが、意外に便利なのがシャープ独自の「どっちもドア」。料理中はキッチン側から食材を取り出し、子どもやお父さんが帰ってきたらお母さんの邪魔にならないように反対のリビング側から開けることができるといった、用途やシチュエーションによって扉を開け方を変えられるのです。ジュースはどっちのドアだっけ?と結局は両方のドアを開けてしまうフレンチドアあるある。1枚ドアのどっちもドアならドアポケット・冷蔵室内をすべて見渡せるので、かえって素早く取り出すことができます。(シャープ WAシリーズ)
最近の冷蔵庫の傾向として、野菜室の機能アップがあります。野菜が乾きにくいようにしたり、保存している間に栄養素がアップしたりと、各社さまざまな工夫を凝らしています。その中でも特徴的なのが東芝。東芝はその先駆者的な存在であり、冷蔵庫に「VEGETA(ベジータ)」のブランド名をつけてしまったほど野菜の鮮度にこだわっています。
「もっと潤う 摘みたて野菜室」はその名のとおり、冷蔵庫中を循環する冷気から水分だけを取り出し、野菜室に集中的に注入することで約95%以上の湿度を保持する潤い機能搭載。さらに、プラチナ触媒の搭載により、野菜の劣化を促すエチレンガスを強力に分解します。これらにより、約7日間保存してもしおれにくく、みずみずしく、シャキシャキとした野菜を味わえるのです。
チルドルームにも特徴があります。酸化ジルコニウムを追加した光触媒ルネキャットとLEDにより、食品の表面についた腐敗の原因になる菌の繁殖を抑制します。これにより、肉なら約7日間、刺し身なら約3日も鮮度を保持し、旨味成分もアップします。二段に分かれたチルドルームは食材がたっぷり入り、まとめ買いも対応します。(東芝 FZシリーズ)
調理済みの唐揚げやコロッケを冷凍して解凍したら中身はパサパサ、衣はしっとりで美味しくない…。そんな悩みを解決するのがパナソニックの「クーリングアシストルーム」です。アルミ製冷却プレートと上からの集中シャワー冷却を行う「はやうま冷凍機能」は、業務用レベルの急速冷凍を行うことで食品の細胞の破壊を抑えます。これにより、解凍しても衣はサクサク、うま味も逃げることなく美味しく食べられます。生肉ほか、下味つけした食材、作り置きしたおかず、茹でた野菜もまとめて急速冷凍すれば、日々の夕食づくりやお弁当づくりが楽チンです。
大容量の冷蔵庫は欲しいけど、食材が迷子になって無駄になりそう、と思っている人も多いでしょう。パナソニックの冷蔵庫は野菜室も冷凍室も、100%全開するワンダフルオープン機構。奥までしっかり見渡せるから、欲しい物がすぐに見つかり、食材が迷子になって無駄にすることもありません。
チルドより低温の約−3℃の「微凍結パーシャル」は、食品を凍らせずに約1週間長持ちさせます。微凍結なので包丁で切り分けられ、薄切り肉はお箸で剥がしてそのまま調理できます。解凍不要なので細胞を傷めず、お肉のドリップが少なくすみ、うま味を逃しません。パナソニックの冷蔵庫は、料理を時短したい、でも子供のために美味しいものをちゃんと作りたい、という夫婦がフルタイムで働く世帯にピッタリです。(パナソニック WPXシリーズ)