小児科なんでも 子どもの病気 子育て応援隊のズバリ!アドバイス
息子が2ヶ月の時から住んでいる所が少し田舎という事もあり大きな病院に行く時や、どこか大きなスーパーやデパートに買い物に行く際、2時間以上車で移動をします。行きはチャイルドシートに乗せて、しかし帰りはぐずるので、危ないと分かりながらも抱っこをしていることもあります。そのときに車の振動が子供の脳へどの程度影響を与えるのかを知りたいのです。「揺さぶられっこ症候群」になってしまう事もあるのでしょうか?
結論から言って、車の振動などで起きることではありません。そもそも、チャイルドシートは振動を少なくするわけではありません。事故の際の身体の飛び出しなどを防ぐシートベルトと同じ役割です。
この症候群は、1972年に米国で虐待児症候群の1つとして報告[shakenbabysyndrome(SBS)]され知られるようになりました。2003年「小児科」3月号に掲載された、日本ではじめて報告した先生自身が書いた論文では、「わが国では筆者が1991年に1例学会報告し、1997年には小児科学会でSBSの3例を日本語で「揺さぶられつ子症候群」として報告したところ、マスコミにとりあげられ注目された」とあります。
つまり6年前には日本で3例、それも1人の医師が報告しただけで、まぁ、きわめて稀な事態ですが、その命名がいかにもわかりやすく、マスコミが飛びついてしまったわけです。そして、過大な不安を与え、育児方法にすら影響を与えているのです。その弊害の方が大きいし、それを心配され、検査を希望し、無用な検査を受けた赤ちゃんも多いでしょう。
もうすでに、マスコミもあまり言わなくなりましたが、少数ながら、こうした病態が存在することは事実で、育児書などには小さくでも触れざるを得ません。
さて、あらためて本症候群は、乳幼児(特に6ヶ月以下)を揺さぶることによって頭頸部が強く動揺し、その結果、頭蓋骨内で脳が動揺することによって頭蓋内出血と眼底出血が引き起こされるもので、結果、死亡、精神遅滞、視力障害を引き起こすといわれ、乳幼児突然死症候群(SIDS)のなかにも本症が含まれる可能性も指摘されています。
虐待や暴力的意図はなくても、あまりに泣き止まないので苛立ちのような感情から激しく揺すってしまう事、夫など男性があやす場合などは母親の場合と違って力が強いので、大人からすれば普通な事でも赤ちゃんにすればすごく負担になる事があるのではないか、まさにそのとおりかもしれませんが、つまり、虐待と全く関係のない日常の育児のなかでも、乱暴な取り扱いが結果的に本症を引き起こす可能性は否定できませんが、やや乱暴なあやし方や遊びは、大昔から親子が自然におこなってきたことです。そして、なにしろ今のところ頻度的に、きわめて稀です。
医学界ではよくあることですが、結果的に発表されたご本人が意図されたように扱われていません。著者ご自身も、その論文の最後に「過剰報道は問題である」と書かれていることもつけ加えておきましょう。
医師 小児科:桑折 紀昭
2008年8月18日
1983年より愛媛県宇和島市で小児科クリニックを開業、99年から病院ヘ行くほどではないけれど心配なこと、病院で聞きにくいこと、聞けなかったこと、聞いたけれどよくわからなかったこと、などの質問に答えるHPを開設、2001年からは病児保育施設にも力を注いでいる。
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