小児科なんでも 子どもの病気 子育て応援隊のズバリ!アドバイス
風邪で小児科に行ったときに鉄分の数値がかなり低いと言われました。
私も貧血ぎみなのですが、遺伝でしょうか?
まず、親子で貧血になりやすい傾向はあるかと思いますが、遺伝性の疾患ではないので、遺伝的な問題と考える必要はありません。第一に、栄養学的な問題と考えるべきです。
鉄欠乏性貧血は、体内の鉄が不足して生じる病気です。貧血の種類の中でもっともよく見られる貧血の種類です。体内の鉄量が減少すると,血中の酸素を運ぶヘモグロビンが少ししか作られないために、貧血になります。
大人では生理出血が多い女性によく見られますが、中には胃や腸からの出血が原因となるケースもあります。一度は医師に相談し、原因を調べてもらいましょう。小児は成長期のために、鉄分が不足がちです。
【症状】
身体を動かしているときに、体全体が酸素不足になるため,疲れやすくなったり,息切れなどの症状がでます。通常、徐々に貧血がおこるために、かなり進まないと症状が出ないこともあります。
【診断】
鉄欠乏性貧血は血液検査によって簡単に診断がつきます。
1)貧血の度合い(ヘマトクリット、ヘモグロビン濃度、赤血球の大きさ)
2)鉄分の量(フェリチン=貯蔵鉄、血清鉄)鉄欠乏性貧血を来す原因は様々ですが、簡単にいえば、赤血球を作るのに必要な鉄分が足りないためにおこります。
A)鉄分の需要が増大成長期の鉄分需要の増大、生理出血が多い(単なる生理過多、子宮筋腫や子宮内膜症による生理過多)、男性では痔からの出血,高齢者では大腸癌や胃癌からの出血など。激しい運動、生理出血があるというだけで、とくに病気がなくとも貧血になることはよくあります。
B)鉄分の摂取不足偏食などは原因となりますが、日本人はおおむね不足がちです。特に成長期は、かなりの子供さんが不足しています。むしろ、とくに病気がなく、鉄欠乏性貧血になることが多い。
A)+B)成長期の鉄欠乏性貧血の原因のほとんどは、これといってよいでしょう。子供と大人ともに男性より女性に多い。
【治療法】
鉄欠乏性貧血は,鉄分の多い食事を取るだけではなかなか治りません。
大人なら、食事より鉄剤の服用を勧めます。
子供でも、食事で十分な鉄剤が摂取できなければ、鉄剤を使っても良いと思いますが、程度問題なので、小児科の先生に相談下さい。鉄分を強化した牛乳(正確には乳飲料)もあります。治療には力不足ですが、貧血予防には役立つでしょう。
緑茶のタンニンは食事中の鉄分の吸収を邪魔します。食事の時に、濃い緑茶をしょっちゅうのんでいると貧血の一因になります。
なお、最近の鉄剤は緑茶で飲んでも吸収率は下がりません。鉄剤を服用すると胃がむかつくなどの副作用が出る場合もよくあります。なお、鉄剤服薬中は便の色が黒くなりますが心配ありません。
【注意すべきポイント】
服薬を始めて1-2ヵ月すると貧血そのものは正常化します。体調も良くなります。
しかし、身体の中の鉄分の倉庫が十分に満たされるまで、鉄分の蓄え(フェリチンの値がその指標)を持たないとまた貧血が再発します。貧血改善から、最低でもさらに3ヶ月は飲み続ける必要があります。その後も、鉄分を多くとることを心掛けます。しかし、鉄分の多い食事は、なかなか続けられるものではないことも現実としてあります。
【実際の治療、再発予防】
私は、子宮筋腫や胃癌、大腸癌などの疾患がないことを前提にして、鉄剤を栄養補助食品的に、時々飲むことを大人の患者さん(とくに女性)には勧めています。
なお、市販の鉄剤サプリメントは、医療用の鉄剤に比べて、極めて少量の鉄分しか含んでいませんので、すでに貧血がある人には不十分です。
鉄分の補充を考えるときには、鉄分の量に注意下さい。ちなみに、一日の食事中の鉄分は、およそ10mgで、その1/10が吸収されると言われています。鉄剤は1錠50mgから100mgの鉄を吸収されやすい形態で含んでいます。顆粒にしたものもあります。
貧血が改善したら、毎日内服する必要はありませんが、十分な貯蔵鉄が蓄えられるように、補充が必要です。補充だけなら、週に2回内服でも十分なことがあります。医師から長期投与していただくと良いと思います。
当院では、毎日内服した場合の1ヶ月分を処方し、実際は3ヶ月ほどで飲んでもらうことも少なくありません。
医師:前田
2004年7月20日
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