ママのためのぷち心理学
誰でも時には、嫌なことや悲しいことに直面して、気持ちが沈むことがあります。落ち込んでいる時、「そういえば前にも似たような辛いことがあったな」と、不快な記憶が次々に蘇ってきて、「なんでこんなに嫌なことばかり起こるんだろう」とますます落ち込んだ経験はありませんか?
実は、私たちの記憶は気分に大きく左右されるのです。悲しい気分の時には悲しい記憶が、腹立たしい時には腹の立つ記憶が、そして、楽しい時には楽しかった記憶が呼び起こされやすいのです。言わば私たちの気分が、過去の記憶の中から同じ気分の記憶を選び出して思い出させているのです。心理学者のバウアーは、こうした現象を「気分一致効果」と呼びました。
辛い時には無意識のうちに辛い出来事ばかりを思い出してしまうものだという原理を知っていれば、必要以上に落ち込まずにすむのではないでしょうか。そして、意識的に楽しいことを思い浮かべることで、連鎖的に楽しい記憶を蘇らせることも可能になります。
このことは、人間関係にも当てはまります。身近な人との関係がギクシャクした時、「そういえば、以前にもこの人のことで嫌な思いをした」などと思い出しやすいのです。そんな時は、気分一致効果のせいだということに気づいて、意識的に気分を切り替えてみるといいかもしれません。
また、この気分一致効果は、初めて出会う人に対する私たちの判断をも左右してしまいます。つまり、不快な気分の時に出会った人の印象は悪くなり、楽しい気分の時に出会った人の印象は好ましいものになりがちです。自分でも気づかないうちに判断が影響されてしまうのが、怖いところです。
親が子どもを叱る際にも、1つのことを叱っているうちに次々と腹立たしいことを思い出し、過去の出来事を何度も蒸し返して叱ってしまうことがありますが、これも、まさにこの気分一致効果によるものです。子どもの困った行動をいくつも思い出し、「本当にこの子ときたら…!」と腹立ちがエスカレートするわけです。その結果、「蒸し返す叱り方」をして子どもをうんざりさせてしまいかねません。
このように、さまざまな状況で私たちの心が気分一致効果に支配されないよう、気をつけたいものですね。
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